報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「上越新幹線最終列車」

2022-09-17 21:11:21 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[6月26日20:35.天候:雨 新潟県新潟市中央区 JR白新線676M列車先頭車内→JR新潟駅]

 電車が複線区間に入る頃、雨が降り出して来た。
 ボックスシートに向かい合って座っている私達だったが、さすがに雨が入って来たのでは、換気の為とはいえ、開けていた窓を閉めざるを得ない。
 案外、強い雨だったのだ。

〔まもなく終点、新潟、新潟。お出口は、左側です。新幹線、信越線、越後線はお乗り換えです。今日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございました〕
〔「ご乗車お疲れさまでした。まもなく終点、新潟です。到着ホームは1番線、お出口は左側です。新潟からのお乗り換えをご案内致します。上越新幹線上り、“とき”350号、東京行きは13番線から、21時36分の発車です。本日、東京行きの最終列車です。ご利用のお客様は、お乗り遅れの無いよう、ご注意ください。【中略】今日もJR東日本、白新線をご利用頂きまして、ありがとうございました」〕

 乗り換えまで1時間ある。
 1時間もあるなら、その前の列車に乗れないかと思う人もいるだろう。
 だが、上越新幹線は新幹線の中でもローカル線。
 大幹線の東海道新幹線と違って、本数は大幅に少ない。
 コロナ前と比べても、明らかにスッカスカのダイヤになってしまった。
 人口の多い東海道と比べても、乗客は少ないのだ。
 本当に12両編成もいるのだろうか。

 リサ:「お腹空いた……」
 愛原:「新潟駅なら、この時間でも営業している売店はあるだろうから、そこで何か見繕おう」
 高橋:「立ち食いソバとか無いんスか?」
 愛原:「どうも今、新潟駅には無いみたいだな」
 リサ:「えー……」
 愛原:「まあ、駅弁屋とかNEWDAYSなら開いてるだろう」

 電車は在来線ホーム、1番線に到着した。

〔「ご乗車ありがとうございました。終点、新潟、終点、新潟です。お忘れ物の無いよう、お降りください。1番線に到着の電車は、折り返し、20時50分発、普通列車の新発田行きとなります」〕

 私達は電車を降りた。
 新幹線に乗り換えるには、5番線に行って、そこから新幹線ホーム11番線に移り、そこから13番線に移るというルートもあるにはある。
 しかし、私はあえてコンコースを経由した乗り換えルートを選んだ。
 その方が売店を利用できると思ったのだ。
 そして、案の定……。

 愛原:「あった!駅弁!」
 リサ:「おー!」

 やっぱりコンコース内で駅弁を売っていた。

 リサ:「肉!肉系統の、ある!?」
 愛原:「……あるな」

 リサは駅弁屋のショーケースを物色する。

 高橋:「ゾンビじゃねぇんだから、もっと落ち着いて探せ」
 リサ:「だーってぇ……。これにする。いい?」
 愛原:「いいよ」

 リサは“村上牛しぐれ弁当”を選んだ。

 高橋:「先生は何にするんスか?」
 愛原:「“新潟コシヒカリ弁当”だろう」

 要は幕の内弁当の1つだ。

 愛原:「オマエは何にするんだ?何でもいいぞ」
 高橋:「“たれかつ重”でオナシャス」
 愛原:「あいよ」

 私達は駅弁を購入した。
 飲み物は後で自販機で購入することにする。

 愛原:「あとは何か欲しいものはあるか?」
 リサ:「それじゃあ、ちょっとおやつを……」

 リサはまだ営業中のNEWDAYSを指さした。

 愛原:「分かったよ。リサも頑張って戦ったからな」
 リサ:「わぁい」

 今度はNEWDAYSに立ち寄る。

 高橋:「そういえば先生、酒とかはいいんスか?」
 愛原:「帰るまでが仕事だからな。取りあえず、今日はお茶でいい」
 高橋:「そうっスか」

 リサが買ったのは甘い物だけではなかった。

 リサ:「夕食までの小腹満たし」

 と、称して、ビーフジャーキーを所望した。
 しかも、ハードタイプのものだ。

 リサ:「お腹空いた……」

 リサはマスクをズラして、牙を覗かせた。

 リサ:「先生の血肉、食べたくなっちゃうかも……」
 愛原:「分かった分かった!買ってやるから!」
 リサ;「わぁい」
 愛原:「リサのおねだりの上手いこと上手いことw」
 高橋:「先生が甘いだけです!」

[同日20:21.天候:雨 JR新潟駅新幹線ホーム→上越新幹線350C列車1号車内]

〔ピン♪ポン♪パン♪ポン♪ 13番線に、21時36分発、“とき”350号、東京行きが12両編成で参ります。この電車は、燕三条、長岡、浦佐、越後湯沢、上毛高原、高崎、大宮、上野、終点東京の順に止まります。グランクラスは12号車、グリーン車は11号車、自由席は1号車から6号車です。尚、全車両禁煙です。……〕

 先頭車の来る1号車で列車を待つ。
 高橋はこの時も、喫煙所にタバコを吸いに行っていた。
 蒸し暑い中、列車を待っていて、15分前に接近放送が鳴った。

〔「13番線、ご注意ください。21時36分当駅始発、“とき”350号、東京行きが参ります。黄色い点字ブロックの内側まで、お下がりください。本日、東京行きの最終列車です。お乗り遅れの無いよう、ご注意ください」〕

 新潟駅の更に下り方向から、回送列車がやってきた。
 つまり、下り列車の折り返しではなく、車両基地で既に整備を受けた列車がやってきたわけである。

〔お待たせ致しました。13番線に到着の電車は、21時36分発、“とき”350号、東京行きです。この電車は……〕

 高橋:「お待たせしましたー!」

 高橋が戻って来た。

 愛原:「おっ、もういいのか?」
 高橋:「大丈夫っス」

〔「13番線、ドアが開きます。乗車口まで、お進みください。……」〕

 ドアが開いて、私達は車内に入った。

 愛原:「おー、涼しい!」

 雨が降っていても、外は蒸し暑い。
 もう夏だな。
 私達は3人席に横並びに座った。

 愛原:「飲み物買ってこよう」
 高橋:「あ、俺、ダッシュで行ってきます。何にしますか?」
 愛原:「俺は冷たいお茶で」
 リサ:「私はジュース」
 高橋:「行ってきます!」

 高橋はまた列車を降りると、ホームの自販機に急いだ。
 まだ、発車まで時間があるのに、せわしないヤツだ。

〔「ご案内致します。この列車は21時36分発、上越新幹線“とき”350号、東京行きです。停車駅は高崎までの各駅と、大宮、上野、終点東京の順に止まります。本庄早稲田、熊谷には停車しませんので、ご注意ください。……」〕

 愛原:「っと、俺も電話だ」
 リサ:「誰から?」
 愛原:「善場主任」

 私はそう言って、スマホ片手にデッキに向かった。

 愛原:「はい、愛原です」
 善場:「愛原所長、お疲れさまです。警察からは釈放されましたか?」
 愛原:「お、おかげさまで……。今、新潟駅です。どうにか最終の新幹線に間に合いまして、これから帰京するところです」
 善場:「リサは明日学校ですからね。サボるわけにはいきませんので」
 愛原:「お、仰る通りです」
 善場:「今回の件に関して詳しい話を伺いたいので、明日、事務所まで来て頂いてもよろしいですか?」
 愛原:「もちろんです。お伺いさせて頂きます」

 報告書の作成もあるので、明日の午後イチに報告に行くことになった。
コメント
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