報恩坊の怪しい偽作家!

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“私立探偵 愛原学” 「雪の降る街を」

2021-03-14 15:52:08 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[3月6日14:08.天候:曇 福島県南会津郡南会津町 会津鉄道会津田島駅]

〔♪♪♪♪。「長らくの御乗車お疲れさまでした。まもなく終点、会津田島、会津田島に到着致します。2番線に入ります。お出口は、右側です。お降りの際、お忘れ物の無いよう、よくお確かめください。会津田島からのお乗り換えを御案内致します。会津線下り、湯野上温泉、芦ノ牧温泉、西若松方面、快速“リレー”117号、会津若松行きは3番線から14時19分の発車です。……」〕

 列車が北上する度に、車窓には雪景色が広がった。
 もう3月だというのに、凄い雪だ。
 でも、当たり前だろう。
 今はコロナ禍で運休しているが、東武線唯一の夜行列車にしてスキーツアー列車の“スノーパル”は3月下旬まで運転されるのだから。
 夜行列車そのものは運休しても、代わりに早朝出発の特急“リバティ会津”を売り出しているらしい。
 早朝に出発しても、スキー場に着くのは昼頃になるだろう。
 そこで夕方くらいまで滑り、再びバスと列車で帰るという行程のようだ。
 コロナ禍でJRでは“サンライズエクスプレス”以外の夜行列車が全て廃止されてしまったが、もしかして、この“スノーパル”も?なんて思ってしまう。

 善場:「そろそろ着きますので、降りる準備をしてください」
 愛原:「はい」

 車窓は時々、吹雪で外が見えなくなることがあるが、恐らくそれは列車が走行中に舞い上げた雪煙だろう。
 JR北海道は雪に悩まされ、その除雪費用は会社の経営を圧迫するほどらしいが、首都圏なら間違いなく運休するであろう大雪の中を、雪煙を濛々と上げ、ドラゴンの咆哮のような警笛を鳴らして突き進んでいく様は旅情を掻き立てられるのだそうだ(作者の経験)。
 席を立って荷棚から荷物を下ろしていると、列車は最後の踏切を通過した。
 場内信号の先にある踏切なので、ここを過ぎると、もう駅構内である。

〔「ご乗車ありがとうございました。会津田島、会津田島、終点です。車内にお忘れ物の無いよう、ご注意ください。会津田島から先、会津若松方面にお乗り換えのお客様は、3番線に停車中の快速“リレー”117号をご利用ください。……」〕

 3両編成の先頭車から降りた私達は、首都圏とは明らかに違う寒気の歓迎を受けた。
 ここはもう東北地方なのだということを思い知らされる。
 跨線橋や構内踏切を挟んで、反対側にあるホームでは、2両編成の気動車がディーゼルエンジンのアイドリング音を立てて停車していた。
 あれがこの特急列車に接続するリレー快速であろう。
 電化区間はこの駅まで。
 ここから先は、非電化区間となる。
 地方の三セクで、路線が1つしか無いのに、電化区間と非電化区間両方持っている鉄道会社はなかなか珍しいのではないかと思う。
 因みに会津鉄道の電化区間の乗務を受け持つのは、電車の運転免許を持つ野岩鉄道の社員で、会津鉄道から南の区間に乗り入れる気動車は、その運転免許を持つ会津鉄道の社員が担当するのだそうだ。
 こうすることで、人件費を圧縮しているのだろう。

 駅員:「ありがとうございました」

 乗客の半分くらいは3番線に向かって行ったが、私達を含むもう半分は改札口に向かう。
 1番線と2番線からなら、直に改札口に出入りできる。
 改札口は自動化されていないので、ブースの中に駅員が立っていて、キップは駅員に渡すシステムである。
 ブースには、そこに立つ駅員を囲むようにアクリル製の囲いがしてあるが、コロナ対策ではなく、寒さ対策であろう。
 寒さ対策に設置したパーテーションが、結果的にコロナ対策にも繋がったというわけだ。

 愛原:「主任、今日の宿泊先は……?」
 善場:「初めてこの町に来た時に泊まったホテルです。あの……さっきの踏切を渡った所にある……」
 愛原:「ああ。あの新しいホテルですか。そりゃあ良かった。ということは、夕食はあのラーメン屋かな?」
 善場:「私は構いませんけど、皆さんは?」
 高橋:「俺は先生の御意向に従います」
 リサ:「激しく同意、略して禿同」
 栗原:「やっぱり寒い時期にはラーメンですかね」
 善場:「分かりました。では、そうしましょう。途中にコンビニもありますしね。でも、その前に……」

 善場主任は駅舎の外には出ず、駅舎2階のレストランに向かった。

 善場:「ホテルのチェック・インは15時からですので、休憩も兼ねて、ここで時間潰しさせて頂きます」
 愛原:「あ、なるほど。そうだったのか」
 善場:「ついでに、今後の予定について話させて頂こうかと」
 愛原:「分かりました」

 レストランに入ると、お昼時を過ぎているからか、店内は空いていた。
 テーブル席に座り、私達がコーヒーやら紅茶やらをチョイスする中、リサは……。

 リサ:「ハンバーグ定食」
 愛原:「をい」
 リサ:「じゃあ、カツカレー」
 愛原:「コラ」
 リサ:「じゃあ、ソースカツ丼」
 愛原:「食い過ぎだっつの」
 栗原:「本気で言ってるの?」
 リサ:「うん。ガチ」
 栗原:「……その食欲、人に向けなければいいけどね」
 善場:「愛原所長がいる限り、それは大丈夫でしょう。リサ、食事は夕食まで我慢しなさい。スイーツは頼んでいいから」
 リサ:「……はぁーい」

 リサはケーキセットを注文した。
 因みにケーキはモンブランである。
 そういえば昔、同じ読みのAV女優がいてだなぁ……。

 善場:「それでは今後の予定について、お話しさせて頂きます」

 注文した物が来てから、善場主任が口を開いた。
 因みにケーキを頼んだのは、リサだけではなく、栗原さんもだった。
 鬼斬りと鬼の形をしたBOWの間柄とはいえ、実は気が合うんじゃないのかと思う。
 ま、栗原さんが頼んだのはレーズンケーキだったが。

 善場:「今日のところは、これからホテルにチェックインして、体の疲れを癒やしてください。夕食は愛原所長の御意向と皆様の同意により、この前行ったラーメン店にします。翌日は朝7時半に出発します」
 愛原:「おおっ、早いですな」
 善場:「なるべく午前中には霧生市に入りたいと思っていますので。ホテルの朝食時間は朝6時半からということですので、朝食を食べてから出発ということになるかと思います」
 愛原:「分かりました。やはり霧生市には車で?」
 善場:「はい。明日、私の部下が迎えに来ますので」
 愛原:「なるほど。BSAAにも連絡済みですね?」
 善場:「もちろんです。しかし、BSAAが来るのは最低限の人数です」
 愛原:「えっ?」
 善場:「大々的に出動すると、『1番』にまた逃亡される恐れがあります」
 リサ:「されると思うね。『1番』、卑怯だし、臆病だからすぐに逃げると思う」
 善場:「そういうことです。今回は、栗原さんに花を持たせたいと思っているのです。兄弟を食い殺され、御自身は左足を食い千切られた過去を持ちますから」
 栗原:「必ず、あの首を刎ねてやる」
 リサ:「私も手伝う。……手伝います」
 栗原:「うん」

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