報恩坊の怪しい偽作家!

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 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「埼玉の斉藤家へ」 2

2020-12-27 19:50:54 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[12月12日14:00.天候:晴 東京都台東区上野 JR上野駅(低いホーム)→宇都宮線543M列車5号車2階席]

 

〔本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。15番線に停車中の列車は、14時8分発、普通、小金井行きです。……〕

 上野駅始発の宇都宮線、高崎線電車は、基本的に低いホーム13番線から15番線のいずれかから出発する。
 低いホームは頭端式ホームになっており、上野東京ラインを走る電車はここには来ない。
 私達が乗る電車は既に入線していた。
 グリーン車は4号車と5号車にある。

 リサ:「売店閉まってる」
 愛原:「そうだな」

 ホームにあるNEWDAYSは閉店していた。
 どうやら平日のみのオープンらしい。

 リサ:「おやつ買おうと思ってたのに……」
 愛原:「おいおい。まだ食べる気かよ」
 絵恋:「リサさん、家に着いたらお菓子出るわよ?」
 リサ:「それまでの腹持たせ」
 高橋:「どんだけ食うつもりだ」

 しかし2階建てグリーン車のある場所まで来ると、リサの目が獲物を見つけたかのように光る。
 元々飲み物の自動販売機くらいなら、そこかしこにあった。
 リサが見つけたのは、お菓子の自動販売機だった。
 アルフォートを2つ買っている。

 リサ:「はい、サイトー」
 絵恋:「えっ?私にくれるの?」
 リサ:「ん」
 絵恋:「も、萌えぇぇぇぇっ!い、一生大事にしますっ!!」
 リサ:「いや、一緒に食べようよ」

 かつてはリサの方が天然ボケで、絵恋さんがツッコミ役だったようだが、今では絵恋さんの百合ぶりが加速したこともあり、リサの方がツッコミ役になっている。
 リサ自身も、研究所の外の世界について随分慣れたというのもあるだろう。

 リサ:「ついでにジュース」
 絵恋:「チョコレートには紅茶が合うわよ」
 リサ:「よし。午後の紅茶ミルクティーにしよう」
 高橋:「ジュースじゃねーじゃん。先生は何か飲みますか?」
 愛原:「いや、いいよ。別に喉乾いてないし。それより早く乗ろう」
 リサ:「2階席~、2階席~」
 愛原:「言うと思った。行こうか」

 私達は5号車に乗り込むと、2階席への階段を登った。
 休日の上野始発で中途半端な時間ということもあり、車内は空いていた。

〔この電車は宇都宮線、普通電車、小金井行きです。4号車と5号車はグリーン車です。車内でグリーン券をお買い求めの場合、駅での発売額と異なりますので、ご了承ください〕

 座席は向かい合わせにはしなかった。
 どうせ明日は普通車に乗るし、そこのボックスシートなんて、元々向かい合わせになっているわけだしな。
 私と高橋が進行方向左側に座り、その後ろにリサと絵恋さんが乗った。
 2人はテーブルを出して、その上にアルフォートとペットボトルを置いている。

〔「14時8分発、宇都宮線、普通列車の小金井行き、まもなく発車致します」〕

 ホームの外から発車ベルが聞こえてくる。
 前は発車メロディだったような気がするが、ベルに戻されたようだ。
 まあ、ベルの方が旅情はあるような気がする。

〔15番線、ドアが閉まります。ご注意ください。次の列車を、ご利用ください〕

 ドアが閉まる音がする。
 通勤電車タイプと同じ形式ながら、こちらは何故かドアの閉まる音が大きい。
 前者は『バン』と閉まるのに対し、後者は『ガチャン』と、まるで連結するかのような音だ。
 そして、列車は定刻通りに発車した。
 これとて通勤電車のようにスーッと走り出すわけではなく、まるで機関車が客車をけん引する時のような出し方だ。
 もっともそれは上野駅のような始発駅だけで、途中駅でもそのような出し方をするわけではない。

〔JR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。この電車は宇都宮線、普通電車、小金井行きです。【中略】次は、尾久です〕

 高橋:「明日もこの電車で?」
 愛原:「ああ。宇都宮線には、朝一本だけ大宮始発の電車がある。それで栃木を目指そう」
 絵恋:「愛原先生、父に頼めば新幹線代くらい出しますよ?何でしたら、私から父に言っても……」
 愛原:「いや、いいんだ。何の確証も無く行くんだから、そんな贅沢はできない」

 私はそう固辞した。

 グリーンアテンダント:「失礼します。グリーン券はお持ちでないでしょうか?」

 そこへグリーンアテンダントの女性がやってきた。
 紙のグリーン券で乗車すると、座席上の端末と連動させることができないので、グリーンアテンダントが確認に来るのである。

 愛原:「あ、はい。あります。大宮まで」
 グリーンアテンダント:「ありがとうございます」

 これまた美人で爽やかなアテンダントだ。

 愛原:「車内販売もあるの?」
 グリーンアテンダント:「はい、ございます」
 愛原:「缶コーヒーとフィナンシェにしようかな」
 グリーンアテンダント:「ありがとうございます。お支払いは如何なさいますか?」
 愛原:「ボクはニコニコ現金払いで」😉
 グリーンアテンダント:「ありがとうございます」

 私が鼻の下を伸ばしていると……。

 高橋:「先生、後ろに注意してください」
 愛原:「ん?」
 リサ:👹
 斉藤:「ふ、不潔だわ。エロオヤジだわ」
 愛原:「ハッ!ち、違うんだ、リサ!これは……!」
 リサ:「サイトー、今からこの電車に私のウィルスばら撒いていい?」
 絵恋:「り、リサさん、それはダメ!」
 リサ:「『1番』にできることは、私にもできるんだからね?」
 愛原:「そ、そうだ!リサ、おやつのお代わりはどうだ!?何でも買ってやるぞ!」
 リサ:「! それじゃあ、私はバームクーヘンと……」

 危ない危ない!
 ようやくリサの機嫌を修正することができた!
 危うくこの電車が惨劇に見舞われるところだった。

 斉藤:「せめて明日はこのグリーン車でと思いましたけど、この分じゃ、やめた方がいいですね」

 絵恋さんは呆れた様子で言った。

 高橋:「先生、明日は各駅停車の普通車で行きましょう。その方が安全です」
 愛原:「す、すまん……」

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