報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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“私立探偵 愛原学” 「JR仙台駅」

2020-09-29 16:11:11 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[8月28日14:30.天候:晴 宮城県仙台市青葉区中央 JR仙台駅]

 昼食を終えた私達は、善場主任達の車で仙台駅まで送ってもらった。
 あのトンネルの穴、今度は電車側から見てみたかったような気がしたが、せっかくの御厚意なので甘えることにした。

 善場:「それでは今日はありがとうございました」
 愛原:「いえ、こちらこそありがとうございました」
 善場:「川口での捜査状況、気になるでしょうが、何ぶん捜査機密が多分に含まれておりますので、詳細はお伝えできないかもしれません」
 愛原:「しょうがないですよ。私はあくまで、委託を受けた一私立探偵に過ぎませんから」

 もう既に善場主任達が表向きのNPO法人ではなく、直接政府機関職員として動く状況では、私達の出る幕は無いだろう。
 あくまでも私達の仕事は、善場主任達に情報を提供するのみ。
 あとは国家権力を発動できる機関に任せる他は無い。
 後で報酬は十分に受け取れる。

 愛原:「リサの出生の秘密、分かるといいですね」
 善場:「そうですね。人間に戻す前に、それくらいは判明させたいものです」

 結局、仙台のトレヴァー家の出身でもない可能性が出て来た。
 最悪、クローン技術で勝手に造られた人間かもしれない。
 旧アンブレラなら、そういうことは平気で行うだろう。
 それにしても、クローンの元となった人間が別にいるはずなんだ。

 善場:「それでは諸経費につきましては、後ほどお送りください。もう金曜日ですので、恐らく振り込みは来週になるかと思いますが」
 愛原:「報酬もその時一緒なんですね?」
 善場:「そういうことになります」
 愛原:「分かりました」

 善場主任達はもう少し現場に残って、屋敷跡を調べるという。
 埼玉県川口市内にあるという五十嵐親子の家については、強制捜査に入るのも時間の問題だろう。
 これもまた来週行われるものと思われる。
 私達は善場主任と別れると、駅構内に入った。

 愛原:「まずはキップを買おう」

 8月末の現在、コロナ禍ではなかったら、まず指定席は取れないくらい混んでいるだろう。
 しかし今は、状況が違う。
 秋になれば、少しは状況も改善されるのだろうか。

 愛原:「15時24分発、“やまびこ”60号、東京行き。これは空いてるな」

 盛岡始発だが、指定席券売機で座席表を見ると、スカスカだった。
 これでE6系“こまち”車両も併結した長大編成なのだから、勿体ない気もした。
 いや、だから空いているのかもしれないが。
 E6系に乗ってみたい気がしたが、あいにくそちらはグリーン車以外全車両自由席だった。
 多分、席は空いてると思うんだけどね。
 私が迷っていると、横から斉藤絵恋さんが口を挟んだ。

 斉藤絵恋:「あの、もし良かったら、後で父にグリーン料金を出してもらいますけど……」
 愛原:「い、いや、それには及ばない」

 私は打ち消して、さっさとE5系“はやぶさ”車両にのみ設定されている普通車指定席をまとめ買いした。
 4人なので2人席を前後して確保する形になる。
 買ってからで何だが、私は1つ気になったことがある。

 愛原:「絵恋さん、今日は金曜日だけど、埼玉の実家に帰らなくていいのかい?」
 絵恋:「今日は東京のマンションに泊まります。パールも寂しがっているでしょうし」

 すると、高橋が一瞬反応した。
 私はすぐにそれに気づいた。

 愛原:「そうかそうか。それじゃ、霧崎さんに東京駅まで迎えに来てもらったらどうだい?」
 絵恋:「いえ、私は1人で帰れます。まあ、タクシーには乗りますけど……」
 愛原:「まあまあ、そう言わずに」

 私はこっそり高橋を指さした。
 だが、逆に絵恋さんはプイッとそっぽを向いた。

 絵恋:「先生から私に対する『口のきき方』に対して、御指導して頂ければ考えなくもないですわ」
 愛原:「あ、ああ……」

 高橋は絵恋さんを『(レズ)ビアン(のクソ)ガキ』と呼んでいるので、それを気にしているだろう。

 愛原:「分かった。俺から強く言っておくよ」

 高橋は貧しい家庭環境で、ロクに親からの愛情も受けずに育ったので、斉藤絵恋さんのような『御嬢様には反吐が出る』とか言ってたな。
 ましてや高橋もLGBTのG(自称。実際はB)。
 しかし、G(自称)なのにLは『気持ち悪い』と思うらしい。
 ノーマルの私に言わせれば、いずれも【お察しください】。

 絵恋:「そういうことでしたら、よろしいですわ」

 絵恋さんはスッと自分のスマホを出した。

 愛原:「ありがとう。良かったな、高橋。東京駅で霧崎さんに会えるぞ」
 高橋:「あー……そうですか」
 愛原:「何だ?せっかく好きな人に会えるんだから、もっと喜べよ」
 高橋:「いや、もちろん、俺的には『キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!』って感じですけど、先生的には地雷かと」
 愛原:「何で?」
 高橋:「多分あいつ、婚姻届持って来ますよ。俺と先生にサインを求めてくるかもです。俺はサインしますけど、先生は保証人の所にサインしてくれますか?」
 愛原:「いや、多分その反省無さげな態度にキレてしまうかもしれん。ここ最近、健康診断で高血圧って出るようになったんだからさ、カンベンしてくれよ……」
 高橋:「ですよね」

 そんなことを話していると、絵恋さんが私の所にやってきた。

 絵恋:「連絡取れました。パールと新庄が迎えに来てくれるみたいです。車で」
 愛原:「すると、ヴェルファイアに乗ることになるな」

 新庄さんは斉藤家の専属お抱え運転手。
 6人乗り込むことになるので、いつもの光岡ガリューでは乗り切れない。
 そういう時はヴェルファイアで迎えに来る。

 愛原:「あっ、キップは1人ずつ持とう。落とさないように」
 高橋:「あざっす。俺は先生のお隣で」
 愛原:「はいよ」

 新幹線特急券と乗車券が1枚になったタイプである。
 もちろん自動改札機を通れる。
 因みに、領収証の発行も忘れない。
 今は全部券売機でできるのだから便利だ。

 絵恋:「私はリサさんの隣でお願いします」
 愛原:「ハイハイ」
 高橋:「で、どうするんスか?もう改札ん中、入っちゃいます?」
 愛原:「そうだな。ラチ内にも土産物屋はあるしな。……忘れたか?高野君やボスに買って行ってあげないと」
 高橋:「それもそうっスね」

 ボスに関しては宅配便で送ることになる。
 高野君はスイーツが好きだから、“萩の月”でも買って行ってあげるか。

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