報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「仙台へ」

2020-09-21 16:05:27 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[8月27日14:30.天候:晴 宮城県大崎市 JR古川駅→JRバス東北・東北高速古川線車内]

 私達は車をレンタカーショップに返した後、まずは仙台駅に戻ることにした。
 予算の都合で高速バスにしたのだが……。

 愛原:「ちょっと待て」
 高橋:「何ですか?」
 愛原:「俺達、仕事が終わったのに、どうして仙台に向かうんだ?」
 高橋:「そりゃあ、あのクソガキと合流して……」

 だが、リサはそんな高橋の腕を引っ張る。

 リサ:「サイトーのこと、そんな風に言わないで」
 高橋:「ンだと、コラ」
 愛原:「まあまあ。確かに、斉藤さんと合流する為だったよな。ところが実際はどうだ?斉藤さんはどこにいる?」
 高橋:「長距離トラック追って、とっくに町の外じゃないスか」
 愛原:「それだよ!リサの話じゃ、斉藤さんは俺達に仕事を持って来てくれるはずだったそうじゃないか!それをお前が余計なことしたから!」
 高橋:「いや~……」
 愛原:「いや~、じゃない!」
 高橋:「でもォ~……」
 愛原:「でも、じゃない!」
 高橋:「だって~……」
 愛原:「だって、じゃない!」
 高橋:「あいつが持ってくる仕事、あいつのお守りっスよ。探偵の仕事じゃないスよね?」
 愛原:「だけど報酬は高額だ。うちみたいな弱小事務所は、仕事を選んではいかん!」
 リサ:「バス来たよ」
 愛原:「とにかく、当初の予定通り、仙台には向かう。後で斉藤社長に謝らなきゃいけないってことにならないといいがな!」
 高橋:「さ、サーセン……」

 バスがバスプール内の乗り場にやってくる。
 既に数人の乗客が乗っているのは、ここ始発ではなく、1つ手前の営業所始発だからだろう。
 それでもコロナ禍の影響からか、乗客がそんなに多いわけではなかった。
 また、高速バスとしては短距離路線ということもあってか、Suicaも使えるようになっている。
 当然ながら、その割引もあった。
 バスに乗り込むと、1番後ろの席に3人並んで座った。
 この位置は長距離用だとトイレがある位置だが、このバスには無いということだ。
 時刻表の上では1時間で仙台に着いてしまうのだから、まあ必要無いと言えば無いか。

〔「14時30発、電力ビル前経由、仙台駅前行き、発車致します」〕

 バスは折り戸式の乗降扉を閉めて発車した。

 リサ:「GPSで私の位置情報が分かると思うけど……」
 愛原:「斉藤さんがどこまで行ったか分からない以上、スマホを回収できたら、それで追って来て欲しいものだな」
 高橋:「マジでまたあいつのお守りやるんスか?」
 愛原:「嫌ならオマエだけ帰っていいんだぞ」
 高橋:「そ、それは……」
 リサ:「サイトーが高額報酬をお父さんに口添えしてくれるって」
 愛原:「そうかそうか。それは頼もしいな」

〔ピン♪ポン♪パーン♪ 本日もJRバス東北、古川~仙台線をご利用頂きまして、ありがとうございます。バスはこれより先、古川台町、古川十日町、古川警察署前、上古川、水道事業所前、石名坂、電力ビル前、終点仙台駅前の順に止まります。……〕

 愛原:「何しろ高野君の機嫌があまり良くないみたいだから、ここで1つ高額報酬の1つでも受けて帰れば、言い訳もできるってもんだ。そうだろ?」
 高橋:「確かに……」

 リサはバスの窓の外を見ていた。

 リサ:「来た道を戻ってるみたい」
 愛原:「だろうな。東北自動車道の古川インターから高速に乗るみたいだから、その途中までのバス停に止まって行くんだろう」
 高橋:「お、先生。このバス、Wi-Fi飛んでるみたいですよ」
 愛原:「そうか。最近の高速バスは、そういうのも充実してきたな」

 リサはバッグの中からポッキーを取り出すと、それをポリポリ齧り始めた。

 リサ:「先生、ポッキーゲームやる?」
 愛原:「お前、意味分かってて言ってるのか?」
 リサ:「うん」
 高橋:「先生!俺とも是非、ポッキーゲームを!」
 愛原:「キモいから却下!」
 高橋:「ええ~!」

[同日15:30.天候:晴 宮城県仙台市青葉区中央 JR仙台駅]

 大崎市内の各バス停で乗客をピックアップしたバス。
 乗客数はそこそこに増えた。
 短距離線なので、旅行客よりも通勤・通学客の方が多いのかもしれない。
 それならコロナ禍の影響は受けにくい。
 仙台市内に入ると、さすがに交通量は多くなったが、同じ高速バスの姿は見かけても、同じ車種を使用した観光バスの姿は見かけなかった。
 観光業は大打撃である。

〔♪♪(車内チャイム)♪♪。長い間のご乗車、大変お疲れさまでした。まもなく終点、仙台駅前、仙台駅前に到着致します。【中略】本日もJRバス東北、古川~仙台線をご利用頂きまして、ありがとうございました〕

 バスは仙台駅西口の広大なバスプールに進入する。
 バース数ならバスタ新宿を凌ぐ。
 その中でもトップナンバーである1番乗り場に向かった。
 その乗り場はJRバス東北が旧国鉄バス時代から使用している乗り場で、つまりそれだけ立場が強かったということだろう。

 リサ:「……あ」
 愛原:「ん?」

 リサが反応したのは、正にその1番乗り場には既に斉藤さんがいて、こちらに向かって手を振っているからだった。

 愛原:「やっぱり新幹線で追い越されたか。お金持ちの御嬢様は違うなぁ……」
 高橋:「ちょっと運ちゃんに頼んで、通過してもらいましょうか。ええ、もっと遠くのバス停へ……」

 高橋、バッグに隠したマグナムを取り出して、運転席に向かおうとしている。

 愛原:「バスジャックはやめなさい!」

 私は全力でそれを阻止した。
 そして、バスが1番乗り場に停車してドアが開いた。

 高橋:「はぁ~。あのビアンガキのお守りか……」
 愛原:「ゲイだと思ってたらバイだったでござる、のオマエのお守りよりマシだよ」
 高橋:「センセ!ヒドい!」( ;∀;)
 愛原:「いいから降りるぞ!」

 バスを降りると……。

 斉藤:「リサさーん!会えて良かったー!」

 斉藤さんがリサに思いっ切りハグをした。

 リサ:「あ、うん……そだね」

 さすがのリサも少しヒく。

 愛原:「預かってる荷物あるだろ。早く受け取れ」
 リサ:「はーい」

 私達は荷物室に預けてある荷物を運転手から受け取った。

 愛原:「それで、私達に仕事の依頼とは?」
 斉藤:「これです!……私から見ても変わったお仕事だと思いますけど、どうかお願いします」

 斉藤さんが仕事の依頼書を私に差し出した。
 もちろん作成者は、斉藤秀樹社長である。
 で、内容は予想通り、娘である斉藤絵恋さんのお守りだった。
 だが、確かにその詳細というのが……。

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