報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“アンドロイドマスターⅡ” 「台風19号通過後、更に経過」

2019-10-25 10:26:55 | アンドロイドマスターシリーズ
[10月13日06:30.天候:曇 東京都江東区豊洲 豊洲アルカディアビル18F・敷島エージェンシー]

 井辺が事務所のトイレで顔を洗っていると、敷島が入って来た。

 敷島:「グッモーニーン……」
 井辺:「あっ、社長。おはようございます」
 敷島:「停電、復旧したんだなー」
 井辺:「あ、社長は御存知だったんですね」
 敷島:「俺がトイレから出ようとしたら、バチッと切れやがったからさぁ……」
 井辺:「そうだったんですか。私は恥ずかしながら、爆睡してて気が付きませんでした」
 敷島:「いや、いいんだよ。その方がいい。知らぬが仏って言うからな」
 井辺:「はあ……」
 敷島:「チラッとさっきテレビを見たんだが、どうやら一夜明けても交通機関は復旧しないらしい。早くても、今日の昼頃だそうだ」
 井辺:「やはりですか……。下の被害はどうだったんでしょう?」
 敷島:「それはまだ分からん。だけど、まだしばらくこの事務所にいた方が良さそうだな」
 井辺:「はい」
 敷島:「ま、非常食も飲料水も備蓄してあるから心配すんな」
 井辺:「はい、それはもう……」
 敷島:「じゃ、取りあえず俺はエミリーの体洗って来てやるから。シャワー使う?」
 井辺:「いえ、私は昨夜使わせて頂いたので……」
 敷島:「あ、そう」
 井辺:「初音さんからぼんやり聞いたんですが、昨夜はエミリーさんとお楽しみだったそうで……」
 敷島:「ちっ、ミクにはバレてたか。エミリーのヤツ、凄いよ。タマが空になるまで搾り取られた……」
 井辺:「は、はあ……」
 敷島:「井辺君にも後で貸してあげるからね」
 井辺:「いえ、結構です。遠慮しておきます。レイチェルで懲りましたから」
 敷島:「あ〜、そうか。まあ、いいや。井辺君も昼くらいまで寝てていいよ」
 井辺:「いえ、取りあえず情報収集に当たります」

 井辺がそう言うと、敷島は頷いてエミリーをシャワー室に連れて行った。

 井辺:「あれだけマルチタイプを使いこなす人間は、やはり珍しいのかもしれない……」
 初音ミク:「わたしも、社長は凄い人だと思います」
 井辺:「ですね」
 ミク:「何せ兵器として開発されたわたしを、ボーカロイドとして再生してくれた人ですから」
 井辺:「最初にその機能を発見したのは、平賀教授だということですが……」
 ミク:「平賀博士はわたしの機能を発見して、社長に伝えただけです。博士も、わたしの機能を重視していませんでした」

 ミクの歌唱機能を最大限を発揮すると、人間の脳幹を停止させる大量虐殺兵器に変わる。
 そこを上手く調整したのが平賀と敷島のコンビだ。
 開発者の南里は危険過ぎると海洋投棄したのだが、弟子の平賀がそれを回収してしまった。
 結果的には平賀の判断は正しかったと言える。

 ミク:「エミリーはあの調子ですし、プロデューサーさんの朝ご飯はわたしが用意しますね」
 井辺:「ああ、初音さん。助かります」

 そして、シャワー室では……。

 エミリー:「気持ちいいです。社長、ありがとうございます」
 敷島:「大事な『お人形さん』をきれいにしてやるのも、持ち主の義務だからな」

 もちろんアンドロイドは自分で自分の体を洗うことができる。
 元はテロ用途として製造されたバージョン・シリーズでさえ、そうしようとするくらいだ。
 街角のガソリンスタンドの洗車機を無断使用したことが相次ぎ、大問題となったことがあるくらいだ。
 その度にエミリーとシンディが、どつき回したほどである。
 しょうがないので、洗車機を改造した洗浄機をアリスが開発し、それをバージョン達に使わせることで収束した。

 エミリー:「んっ……ん……!」

 エミリーが下半身に力を入れると、ゴボッと秘所から白濁したドロリとした液が出て来る。
 透かさずそれを洗い流してやる敷島。

 エミリー:「いっぱい出されましたね……。きっと、人間の女性なら妊娠してしまいます……」

 エミリーは恍惚とした顔で言った。
 敷島は後ろからエミリーを抱きしめた。

 敷島:「お前が人間だったらなぁ……。俺はお前と……」
 エミリー:「社長……」

 エミリーは恍惚とした顔で敷島の手を握った。
 が、その顔が一瞬、恍惚の表情からほくそ笑むものに変わった。
 それは人間に支配されるべきAIが、支配してやったという勝ち誇った顔のように見えた。

[同日07:00.天候:曇 敷島エージェンシー事務室・打合せコーナー]

 井辺はミクに用意された朝食を取っていた。
 といってもパック容器の白飯(つまり、サトーのごはん)を電子レンジで温め、おかずは缶詰や真空パックで保存されていたもの、味噌汁はフリーズドライのものを熱湯で戻しただけであった。

 井辺:「本当に非常食ですね。でもまあ、備蓄していて良かったですよ。いただきます」
 ミク:「どうぞどうぞ」

 打合せコーナーの椅子に座り、机の上に並べられた朝食に箸をつける。
 ラジオを点けてそれをBGMとするが、やはり流れて来るのは台風情報である。

〔「……首都圏の鉄道に関する情報です。まず、各新幹線ですが、東海道新幹線のみ始発から運転を再開しました。今後、概ね平常運行を行うとしています。……」〕

 井辺:(やはり在来線の運転再開は昼頃からか……。せめて首都高でも復旧してくれれば……)

 ラジオを聞いていると、それもどうやら昼頃のようである。

 敷島:「あ、井辺君。ここにいたのか」
 井辺:「社長。すいません、先に朝食頂いてました」
 敷島:「いや、いいよ。それで、交通機関の復旧はいつだって?」
 井辺:「やはり在来線も首都高も、昼頃になるようです」
 敷島:「そうか。やはりなぁ……。取りあえず、昼まではゆっくりしよう。復旧したらそれで帰ろう。今のところ、シンディからは何の連絡も無いが、何だか心配になってきた」
 井辺:「そうですね。私もそう思います」
 敷島:「井辺君の実家は岩槻だったか」
 井辺:「そうです。復旧したら車を出していいですか」
 敷島:「いいよ。それで一緒に帰ろう」
 井辺:「はい、分かりました」

 台風が通過した後とはいえ、まだ風の強い豊洲地区。
 ビルに目立った被害は無いようだが、とても今の状態では帰れそうになかった。

 エミリー:「いざとなったら、私がお2人を抱えて飛びますので」
 敷島:「それは頼もしい」
 井辺:「いずれ復旧しますから、それを御遠慮しますよ」

 敷島と井辺は、こうして台風を乗り切ったのである。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« “アンドロイドマスターⅡ” 「... | トップ | “大魔道師の弟子” 「魔女達... »

コメントを投稿

アンドロイドマスターシリーズ」カテゴリの最新記事