[9月29日15:40.天候:晴 静岡県富士市 JR新富士駅]
〔「ご乗車ありがとうございました。まもなく終点、新富士駅前、新富士駅前です。お降りの際、車内にお忘れ物の無いよう、ご注意ください」〕
稲生達を乗せた下山バスが新富士駅の富士山口に到着する。
マリアとエレーナを除けば、全員が日蓮正宗の信徒であろう。
バス自体は地元の路線バス会社が運行している臨時便である為、別に信徒でなくても乗車することはできる。
稲生:「着いたー」
前扉と中扉両方のドアが開いて、乗客達がぞろぞろと降り始めた。
既に運賃は支払っている為、降りる時はフリーである。
エレーナ:「新幹線に乗るのも久しぶりだぜ」
鈴木:「今度は“のぞみ”や“はやぶさ”に乗せてあげるよ」
マリア:「ルーシーなら喜んだかもな……」
駅構内に入る。
稲生:「キップは1人ずつ持とう」
鈴木:「指定席ですか?」
稲生:「一応ね。12号車」
マリア:「1番前か後ろに乗りたがる勇太にしては珍しい……」
稲生:「16号車がポツンと指定席ですけど、そこが団体に押さえられていたんですよ」
元々16号車や13号車から15号車の自由席は、団体客の予約があると埋めてしまう車両だ。
だからそれらが指定席に変更されていて、しかも全席満席になっていたりするとそのパターンだ。
マリア:「なるほど」
改札口に入って、ホームに上がった。
まだ列車はいないはずだが、早くも通過列車が轟音を立てて本線を通過していった。
新富士駅の前後は線形が良いので、通過列車は最高速度の285キロで通過して行く。
エレーナ:「向こうで外人共がはしゃいでいるぜ。観光客丸出しだな」
稲生:「いや、キミも外国人だからね?」
マリア:「ルーシーもはしゃいでいたなぁ……」
稲生:「“のぞみ”より速い“はやぶさ”でしたっけ。今度、“はやぶさ”に乗せてあげたいな」
マリア:「きっと喜ぶと思うよ」
エレーナ:「おおっ?稲生氏、ついにマリアンナに飽きてルーシーに?これが本当の乗り換えだぜ」
鈴木:「このリア充!功徳が止まらなーい!」
マリア:「オマエらコロす!」
稲生:「ちちち、違いますよ、マリアさん!もちろん、マリアさんも一緒で!」
エレーナ:「お?両手に花じゃねーか。私も参加すればハーレムだぜ」
稲生:「は、ハーレム!?」
マリア:「エレーナ、オマエ少し黙ってろ」
エレーナ:「いいじゃんか。どうせ稲生氏、“色欲の悪魔”と契約するんだろ?上手いこと行ったら、ダンテ一門の魔女達、食い漁ることができるぜ?」
マリア:「エレーナ、マジで黙れ」
鈴木:「いいなぁ。俺も入門したいなぁ……」
エレーナ:「何度も言うように、鈴木は素質からっきしゼロだから諦めるんだぜ。ま、『協力者』としてなら、今後も付き合ってやるから安心してくれだぜ」
鈴木:「ちぇっ……」
そんなバカ話に花を咲かせていると……。
〔ピン♪ポン♪パン♪ポーン♪ 新幹線をご利用頂きまして、ありがとうございます。まもなく1番線に、“こだま”660号、東京行きが到着致します。安全柵の内側まで、お下がりください。この電車は、各駅に止まります。グリーン車は8号車、9号車、10号車。自由席は1号車から7号車と、13号車、14号車、15号車です。この電車は、全車両禁煙です。お煙草を吸われるお客様は、喫煙ルームをご利用ください。……〕
接近放送が流れて来た。
稲生:「あー、来た来た」
名古屋方向からN700系が接近してきた。
それまで通過した列車と同じ形式である。
ポイントを渡って副線の上にあるホームに入ってきた。
〔新富士、新富士です。新富士、新富士です。ご乗車ありがとうございました。……〕
元々空いている“こだま”号で、尚且つ名古屋始発ということもあって、尚更空いている。
先頭車となる16号車には学生の集団が乗っていて、その車両だけ『修学旅行』という表示がしてあった。
因みにそこの所だけ英訳が無い。
エレーナ:「マリアンナと似た服着てる奴らが乗ってたな」
マリア:「これは勇太の卒業したハイスクールのユニフォームがモチーフなんだ。だからしょうがない」
そう言いながら12号車に乗り込む。
車両の真ん中辺りの2人席が前後して確保されていた。
稲生:「ここだな。これはシートピッチが広いから、向かい合わせにするかい?」
エレーナ:「それもオツだな」
稲生はペタルを踏んで、座席を向かい合わせにした。
そんなことしているうちに、後続の列車が追い抜いていく。
その度に風圧で軽く車両が揺れた。
エレーナ:「富士山はどっちだ?」
稲生:「あっち」
エレーナ:「向こうか」
稲生は大石寺境内の売店で買った土産物を荷棚の上に置いた。
稲生:「イリーナ先生へのお土産、これでいいかな」
マリア:「もう一品欲しい所だな」
エレーナ:「だったら、酒でも買って行ったら?」
マリア:「やっぱそうなるよな。ポーリン先生も酒好きなの?」
エレーナ:「それもあるんだけど、ここ最近は日本の酒を薬の材料に使われることが多いから……」
マリア:「なるほど」
稲生:「どういう用法の薬作りに使うのか、聞きたいような聞きたくないような……」
[同日16:09.天候:晴 JR東海道新幹線660A列車12号車内]
発車の時刻が迫り、ホームに発車ベルが鳴り響く。
〔1番線、“こだま”660号、東京行きが発車致します。ドアが閉まります。ご注意ください。お見送りのお客様は、安全柵の内側までお下がりください〕
発車ベルの後で甲高い客終合図が鳴ると、それでドアが閉まる。
その後で列車が走り出した。
稲生:「1番いいのはイオンで買うことだな。あそこなら何でも揃ってる」
マリア:「行くヒマある?」
稲生:「どうだろう……。多分うちの両親のことだから、夕食は外で食べるとか言い出すよ」
エレーナ:「その時に途中寄って買えばいいだろ」
稲生:「それしか無いか……」
鈴木:「先輩、今のうちに親に連絡して、どこで夕食にするか聞くんですよ。その後で、お土産を買いたいという相談でもすれば……」
稲生:「それもそうだな」
稲生はスマホを取り出して、宗一郎にメールを送った。
〔「ご乗車ありがとうございました。まもなく終点、新富士駅前、新富士駅前です。お降りの際、車内にお忘れ物の無いよう、ご注意ください」〕
稲生達を乗せた下山バスが新富士駅の富士山口に到着する。
マリアとエレーナを除けば、全員が日蓮正宗の信徒であろう。
バス自体は地元の路線バス会社が運行している臨時便である為、別に信徒でなくても乗車することはできる。
稲生:「着いたー」
前扉と中扉両方のドアが開いて、乗客達がぞろぞろと降り始めた。
既に運賃は支払っている為、降りる時はフリーである。
エレーナ:「新幹線に乗るのも久しぶりだぜ」
鈴木:「今度は“のぞみ”や“はやぶさ”に乗せてあげるよ」
マリア:「ルーシーなら喜んだかもな……」
駅構内に入る。
稲生:「キップは1人ずつ持とう」
鈴木:「指定席ですか?」
稲生:「一応ね。12号車」
マリア:「1番前か後ろに乗りたがる勇太にしては珍しい……」
稲生:「16号車がポツンと指定席ですけど、そこが団体に押さえられていたんですよ」
元々16号車や13号車から15号車の自由席は、団体客の予約があると埋めてしまう車両だ。
だからそれらが指定席に変更されていて、しかも全席満席になっていたりするとそのパターンだ。
マリア:「なるほど」
改札口に入って、ホームに上がった。
まだ列車はいないはずだが、早くも通過列車が轟音を立てて本線を通過していった。
新富士駅の前後は線形が良いので、通過列車は最高速度の285キロで通過して行く。
エレーナ:「向こうで外人共がはしゃいでいるぜ。観光客丸出しだな」
稲生:「いや、キミも外国人だからね?」
マリア:「ルーシーもはしゃいでいたなぁ……」
稲生:「“のぞみ”より速い“はやぶさ”でしたっけ。今度、“はやぶさ”に乗せてあげたいな」
マリア:「きっと喜ぶと思うよ」
エレーナ:「おおっ?稲生氏、ついにマリアンナに飽きてルーシーに?これが本当の乗り換えだぜ」
鈴木:「このリア充!功徳が止まらなーい!」
マリア:「オマエらコロす!」
稲生:「ちちち、違いますよ、マリアさん!もちろん、マリアさんも一緒で!」
エレーナ:「お?両手に花じゃねーか。私も参加すればハーレムだぜ」
稲生:「は、ハーレム!?」
マリア:「エレーナ、オマエ少し黙ってろ」
エレーナ:「いいじゃんか。どうせ稲生氏、“色欲の悪魔”と契約するんだろ?上手いこと行ったら、ダンテ一門の魔女達、食い漁ることができるぜ?」
マリア:「エレーナ、マジで黙れ」
鈴木:「いいなぁ。俺も入門したいなぁ……」
エレーナ:「何度も言うように、鈴木は素質からっきしゼロだから諦めるんだぜ。ま、『協力者』としてなら、今後も付き合ってやるから安心してくれだぜ」
鈴木:「ちぇっ……」
そんなバカ話に花を咲かせていると……。
〔ピン♪ポン♪パン♪ポーン♪ 新幹線をご利用頂きまして、ありがとうございます。まもなく1番線に、“こだま”660号、東京行きが到着致します。安全柵の内側まで、お下がりください。この電車は、各駅に止まります。グリーン車は8号車、9号車、10号車。自由席は1号車から7号車と、13号車、14号車、15号車です。この電車は、全車両禁煙です。お煙草を吸われるお客様は、喫煙ルームをご利用ください。……〕
接近放送が流れて来た。
稲生:「あー、来た来た」
名古屋方向からN700系が接近してきた。
それまで通過した列車と同じ形式である。
ポイントを渡って副線の上にあるホームに入ってきた。
〔新富士、新富士です。新富士、新富士です。ご乗車ありがとうございました。……〕
元々空いている“こだま”号で、尚且つ名古屋始発ということもあって、尚更空いている。
先頭車となる16号車には学生の集団が乗っていて、その車両だけ『修学旅行』という表示がしてあった。
因みにそこの所だけ英訳が無い。
エレーナ:「マリアンナと似た服着てる奴らが乗ってたな」
マリア:「これは勇太の卒業したハイスクールのユニフォームがモチーフなんだ。だからしょうがない」
そう言いながら12号車に乗り込む。
車両の真ん中辺りの2人席が前後して確保されていた。
稲生:「ここだな。これはシートピッチが広いから、向かい合わせにするかい?」
エレーナ:「それもオツだな」
稲生はペタルを踏んで、座席を向かい合わせにした。
そんなことしているうちに、後続の列車が追い抜いていく。
その度に風圧で軽く車両が揺れた。
エレーナ:「富士山はどっちだ?」
稲生:「あっち」
エレーナ:「向こうか」
稲生は大石寺境内の売店で買った土産物を荷棚の上に置いた。
稲生:「イリーナ先生へのお土産、これでいいかな」
マリア:「もう一品欲しい所だな」
エレーナ:「だったら、酒でも買って行ったら?」
マリア:「やっぱそうなるよな。ポーリン先生も酒好きなの?」
エレーナ:「それもあるんだけど、ここ最近は日本の酒を薬の材料に使われることが多いから……」
マリア:「なるほど」
稲生:「どういう用法の薬作りに使うのか、聞きたいような聞きたくないような……」
[同日16:09.天候:晴 JR東海道新幹線660A列車12号車内]
発車の時刻が迫り、ホームに発車ベルが鳴り響く。
〔1番線、“こだま”660号、東京行きが発車致します。ドアが閉まります。ご注意ください。お見送りのお客様は、安全柵の内側までお下がりください〕
発車ベルの後で甲高い客終合図が鳴ると、それでドアが閉まる。
その後で列車が走り出した。
稲生:「1番いいのはイオンで買うことだな。あそこなら何でも揃ってる」
マリア:「行くヒマある?」
稲生:「どうだろう……。多分うちの両親のことだから、夕食は外で食べるとか言い出すよ」
エレーナ:「その時に途中寄って買えばいいだろ」
稲生:「それしか無いか……」
鈴木:「先輩、今のうちに親に連絡して、どこで夕食にするか聞くんですよ。その後で、お土産を買いたいという相談でもすれば……」
稲生:「それもそうだな」
稲生はスマホを取り出して、宗一郎にメールを送った。
折しも13日は報恩坊の支部登山である。
既に御住職からはトチロ〜さん経由で注意喚起の知らせが来ている。
支部登山自体は予定通り行われるようだ。
もっとも、私の前日の予定は日勤早番。
本当は日勤遅番で21時上がりだったのだが、隊長が気を利かせてくれて早番にしてくれた。
これなら19時で上がれる。
但し、それでも先に電車が全面運休する恐れがある。
そうなると、もはやお手上げ。
幸い夜勤も恒常的にある職場で、仮眠もあるので、そこに泊まることができるが、翌朝何事も無く電車が動いているとは思えない。
つまり、私の判断材料は「帰れない」=「参加見送り」という判断ということである。
この場合……。
ガチ勢:影響の出ない明日から宿坊に泊まり込む。
エンジョイ勢:電車が動いているか、高速が通れるかを当日に判断する。
傍観勢:仕事の後で家に帰れるかどうかで判断する。