報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“戦う社長の物語” 「大雪特別警報」

2018-02-15 19:32:57 | アンドロイドマスターシリーズ
[1月6日20:00.天候:大雪 宮城県仙台市青葉区国分町]

 ほろ酔い加減で宴会の終わった敷島達。

 ロイ:「博士、タクシーが来ました」
 村上:「おうっ、そうかね!それじゃ、そろそろワシらはこれで帰るからな。おっととと!」
 ロイ:「博士!飲み過ぎですよ!」
 村上:「何の何の。これでまだ腹8分目じゃぞーい」

 カプセルホテルやサウナも併設されている居酒屋。
 その外に出ると……。

 敷島:「うわ、凄い雪だ!」

 既に東北一の繁華街は雪景色だった。
 村上を迎えに来たタクシーも、チェーンを巻いている。

 敷島:「大雪だから気をつけてくださいよ?」
 村上:「うむうむ。それではな」
 有泉:「失礼致します」

 村上と助手の有泉はリアシートに座り、執事ロイドのロイは助手席に座った。
 ロイは井辺に負けず劣らずの長身、大柄な体なので後ろに3人は狭いだろう。
 3人を乗せたタクシーは雪道を出発した。

 敷島:「平賀先生は……ああっ!?」

 そこで敷島、ある重大なことに気づく。
 ここには平賀の車で来たことを。

 敷島:「平賀先生、飲んじゃったじゃないですか!」
 平賀:「ウィ〜。もちろんここに泊まりますよ〜」
 敷島:「ええっ?」

 平賀、サウナとカプセルホテルのフロントの方へ行く。
 そして……。

 平賀:「敷島さんと同じ、デラックスタイプを取りましたよ〜」
 敷島:「奈津子先生に、今日は帰れないことを伝えませんと?」
 平賀:「もう既にLINEしてまーす」
 敷島:(研究者達は酔っ払うとハイになる人達が多いんだろうか……?)

 敷島達は取りあえず、カプセルに行くことにした。

 敷島:「3連休の初日で良かったですね。これが平日なら、雪による帰宅困難者が出るところです」
 平賀:「全くですね。……あ、お隣みたいなんで、よろしくです〜」
 敷島:「どうもどうも」

 通常のカプセルとは違い、上段と下段が互い違いになっており、それぞれにデスクスペースも用意されている。
 カプセルの出入口にカーテンがあるのはもちろん、デスクスペースの前にもカーテンがあった。

 平賀:「敷島さん、着替えたら風呂行きましょ、風呂」
 敷島:「そうですね」

 尚、男性専用施設である為、女性の姿はスタッフ以外に無い。
 館内着の作務衣に着替えると、それで最上階の5階へ向かった。

 敷島:「エミリーのヤツ、大丈夫かなぁ……?」
 平賀:「記念館は見た目はボロですが、あれでもかなり頑丈な造りですよ」
 敷島:「結局今日は、黒いロボットは現れませんでしたね」
 平賀:「ですねぇ……」

 大浴場にサウナ、露天風呂まであるのだが、さすがに天然温泉ではない。
 人工ラジウム温泉らしい。

 敷島:「どーれ、露天風呂は……」

 もちろん、体を流してからだ。

 敷島:「うわ……」

 屋根の無い所は牡丹雪(ボタ雪とも)が直撃していた。

 平賀:「さーさー、行きましょう」
 敷島:「ちょっと、平賀先生!酔っ払ってますよ!」

 敷島は平賀に背中を押されて、ボタ雪の直撃を受けながら湯に入った。

 平賀:「頭が冷たく、体は熱いですねぇ……」
 敷島:「もうちょっと屋根のある所に行きましょうよ」
 平賀:「! 今の自分の発言……」
 敷島:「何ですか?」
 平賀:「それで思い出したんですけど、1つクイズを出したいと思います」
 敷島:「あんまり難しいのは勘弁してくださいよ?」
 平賀:「簡単ですよ。『上は大水、下は大火事、なーんだ?』」
 敷島:「何だ、そんなことですか。据え膳を食う直前の男の上半身と下半身
 平賀:「ピンポーン♪」

 ……18歳未満の方は、素直に『お風呂』と答えましょう。
 アラフォーオヤジ共のスケベなぞなぞでした。

 露天風呂から上がると敷島は洗い場で体を洗いに行き、平賀はサウナに入った。

 敷島:(平賀先生、また飲む気か?あの様子じゃ……)

 敷島は呆れながら体を洗うと、今度は内湯に入った。
 内湯にはジャグジーがある。

 利用者A:「何だか凄い雪だべな?」
 利用者B:「明日、帰れっぺかね?」
 利用者A:「いンや〜、無理でねぇの、これ?除雪ば追い付かねべっちゃ」
 利用者C:「駅の方ば、大変なことになってるってよ?JR全部止まったってや」
 利用者A:「マジで!?」
 利用者B:「こりゃヨンパチ(※)も通行止めだべな」

 ※ヨンパチ:国道48号線のこと。仙台市と山形県天童市を結ぶ為、山越えルートがある。

 敷島:(今日泊まる計画にして良かったなぁ……)

 敷島は地元の利用者達の会話を聞き、まったりしながらそう思った。

 敷島:(この分だと、明日も帰れなかったりして?ま、その時はその時で)

 それからしばらくして、風呂を出た。
 階段を1つ降りると、休憩コーナーがある。
 テレビ付きのリクライニングチェアが並んでいるが、座敷もある。
 そこに座り……。

 平賀:「風呂上がりの一杯」
 敷島:「来ると思った。まあ、瓶ビール一本にグラス2つでいいですね。おつまみは……」
 平賀:「枝豆」
 敷島:「枝豆ね。あと、私はフライドポテトでも頼むか」

 ピンポーンと呼び出しボタンを押してスタッフを呼ぶ。
 そして、今のを注文した。

 平賀:「ここは静かだから、あんまり大きな声では話せないですね」
 敷島:「ま、そんなもんですよ」

 先にビールが運ばれてくる。

 敷島:「明日がどうなっているか……」
 平賀:「明日は明日の風が吹くものですよ」
 敷島:「いや、全く」

 あとは枝豆とフライドポテトをつまみにしたのだった。

[同日22:00.天候:豪雪 キュア国分町3F]

 敷島:(うーん……関東はまだそれほど酷い雪ってわけでもないのか……)

 平賀はさっさと自分のカプセルに入って眠ってしまった。
 敷島はデラックスタイプ利用者だけの特権として、各自与えられているデスクスペースにノートPCを置いて作業をしていた。
 といっても、殆どの場合、敷島に届いたメールの確認である。
 どうでもいいようなものはスルーするし、迷惑メールは削除するし、これはというものは返信する。
 幸いWi-Fiが利用できるので、それでメールもネットもできる。
 仕事関係のメールと言えば、超強力な南岸低気圧のせいでイベントが中止になる恐れが出て来たという、いかにも芸能事務所ならではの内容なのだった。

 敷島:(ま、いいや。俺もそろそろ寝よう)

 敷島はPC閉じると、歯磨きをしに洗面台へ向かった。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

“戦う社長の物語” 「エミリーのピアノ」

2018-02-15 10:13:25 | アンドロイドマスターシリーズ
[1月6日16:00.天候:雪 宮城県仙台市青葉区 東北工科大学・南里志郎記念館]

 大学構内でトップを争う古さを誇る建物。
 南里志郎記念館。
 元々は研究棟として建設され、使用されていたものの、老朽化に伴って廃墟と化していたものであった。
 それが前期型のエミリーのボディを常設展示するに伴い、大改築されてオープンしたものがこの記念館である。
 エミリーの生みの親で、平賀の師匠でもあり、東北工科大学の教授でもあった南里志郎の軌跡を称えるのが目的となっている。
 展示物は何もエミリーの前のボディだけではなく、ロボットテロの恐ろしさを世間に認知させる為に、捕獲したバージョンシリーズなども展示されている。
 後期型のエミリーがここに来ると、警備用として稼働しているバージョン4.0達から歓迎を受ける。
 まるで視察に来た某元帥様を出迎える某人民の人々みたいだ。

 バージョン4.0-4:「ピアノの整備ハ万全デス」

 バージョン4.0-4(以下、B4-4)は揉み手をしながら言った。
 尚、元テロ用途であったバージョンシリーズのバージョンをアルファベットで書くと、『Version』ではなく、『Barsion』と書く為。

 エミリー:「そうか……」

 2階吹き抜けエントランスホールには、1台の古いグランドピアノが置かれている。
 エミリー自身がここに常設展示されていた頃は、毎日17時、このピアノを弾いていたものだ。
 交換用の後期型ボディの製作が遅れた為、耐用年数の過ぎた前期型ボディを休ませる為にここに常設展示されていた。
 毎日17時に弾くという習慣は、南里志郎研究所時代から変わらない。

 エミリー:「…………」

 エミリーはピアノの前に座った。
 そこで弾くのはショパン作曲の幻想即興曲。

 B4-286:「アリッサー!」
 B4-457:「違ウ違ウ。ソレ別のゲーム」
 B4-108:「多分、読者ニハ286ノ台詞ノ意味ハ分カッテナイゾ?」
 B4-6:「“クロックタワー3”のステージ1ノBGMナ?」
 B4-4:「オ前ラナァ……」
 B4-286:「“大魔道師の弟子”ノヒロイン、マリアンナ・ベルフェゴール・スカーレットがアリッサ・ハミルトンに似テイル件ニツイテ」
 B4-457:「似テナイ似テナイ」
 B4-108:「金髪ショートカットと服装ダケダロ?」

 バァンとピアノの鍵盤を叩いて演奏を止めるエミリー。

 エミリー:「お前達うるさい!!」
 バージョン4.0一同:「モ、申し訳ゴザイマセン!」

 ババッと全力土下座をするバージョン達だった。

 エミリー:「……っ!17時には前の通り、またここで弾く。今度は静かにしてろ」
 B一同:「ハハーッ!!」

 エミリーは席を立つと、奥の部屋に引っ込んだ。
 そこは元館長室だった部屋があり、今はバージョン達が製作した玉座がある。
 どうやらエミリーの席らしい。
 だが、たまにシンディも座っていたりする。
 バージョン達としてはエミリー専用席として作ったのでシンディに座られるのは困るのだが、同型の姉妹機に対して排除行為などできるわけもなく、1機は足蹴にされるという別の意味での女王様ぶりを発揮されるのであった。

 エミリー:(テロ用途を止めたら止めたでウザい連中になりやがった……)

 エミリーは不機嫌そうに座ると充電ケーブルを引っ張って来て、しばしの間、自分のバッテリーを充電することにした。

[同日17:00.天候:雪 南里志郎記念館エントランスホール]

 エントランスホール内にエミリーのピアノが響き渡る。
 それが建物の外にも響いてきて、土曜日でも大学に来ている関係者達の耳を癒す。

 曲目リストは『ショパン作、幻想即興曲』『ベートーヴェン作、月光』の他、東方Projectより『人形裁判 〜人の心弄びし少女〜』(エミリーの前期型ボディ使用時のテーマ)、『パンデモニックプラネット』(エミリーの現在のテーマ)、『千年幻想郷 〜History of the Moon』(前期型シンディのテーマ)、『故郷の星が映る海』『ピュアヒューリーズ 〜心の在処』(後期型シンディのテーマ)、『九月のパンプキン』(妖精型ロイド萌のテーマ)、『竹取飛翔 〜Lunatic Princess』(8号機のアルエットのテーマ)、『上海紅茶館 〜Chinese tea』(7号機のレイチェルのテーマ)、最後は『鉄腕アトム』で完結。

[同日18:00.天候:雪 仙台市青葉区国分町 キュア国分町“八波亭”]

 会議が終わった後は東北一の繁華街、国分町で宴会をするロボット会議のメンバー。

 敷島:「もうそろそろエミリーのピアノは終わったかな」
 平賀:「あ、そうか。エミリー、ピアノ弾くんでしたね。すっかり忘れてましたよ」
 村上:「今や自動演奏ピアノなど珍しくも無いだろうに、あえてロイドが弾くってのも面白い試みじゃな」
 敷島:「南里志郎研究所や財団があった頃は、よくエミリーやシンディで演奏会をやらせていたものです。シンディはフルートが吹けます」
 村上:「なるほど。それなら今度、ロイにもヴァイオリンを弾かせてみよう。調整期間は1ヶ月くらいでいいじゃろう」
 有泉:「先生。楽器でしたら、この前あいつトランペット吹いてましたよ?あとサックスも」
 村上:「何ぃ?何故それを早く言わんのじゃ!?」
 敷島:「ロイドの進化は凄いな。いずれは人間に取って変わったりして」
 村上:「そういうSF映画とかもあるみたいじゃな。じゃが、現段階ではまだ大丈夫。人間も一緒に進化している間なら」
 敷島:「なるほど」
 平賀:「敷島さんが現役の間は大丈夫だという安心感がありますね」
 敷島:「そうですか?」
 平賀:「シンディのヤツ、後期型として稼働している間も、どこか人間に対して叛心があるような気がして……」
 敷島:「気のせいだと思いますがねぇ……」

 と、そこへ有泉の電話が鳴った。

 有泉:「ちょっと失礼します」
 敷島:「はいはい」

 有泉が電話に出る為に席を外す。

 敷島:「優秀そうな助手さんですね」
 村上:「まあ、大学院での成績は優秀なのじゃが……」
 敷島:「平賀先生も助手は取らないんですか?」
 平賀:「自分は今、どちらかというとDCJの仕事の方が忙しいので……」
 敷島:「DCJの非常勤役員ですが、ついに本格的に常勤へと?」
 平賀:「話はあるんですけどねぇ……」

 すぐに有泉が戻って来た。

 有泉:「ロイからです。仙台市内に大雪特別警報が発令されたそうです。雪で身動きが取れなくなる前に、お早くお戻りくださいということです」
 敷島:「なに?今そんなに雪強いの?」
 平賀:「例年に無い最強の南岸低気圧が迫っているという予報は見ましたが……。警報じゃなく、特別警報が出るほどですか」
 村上:「むぅ……致し方無い。本当は二次会のカラオケで“千本桜”歌いたかったところじゃが、今日はやめておこうかの」
 有泉:「その方がいいですよ、先生」
 敷島:(てかこの爺さん、うちのミクの持ち歌歌う気だったのかよ)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする