報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“戦う社長の物語” 「黒いロボット達の行動」

2018-02-07 19:27:46 | アンドロイドマスターシリーズ
[1月4日18:00.天候:晴 東京都墨田区 錦糸町の風俗街]

 バージョン4.0:「サァ〜、イラッシャイマセ、イラッシャイマセ。当店ニハ可愛いセクサロイドが沢山イマスヨ〜」

 かつてはテロロボットとして人類の脅威となり、多くの個体がマルチタイプ達に破壊されたが、残った個体は『心を入れ替え』させられ、一部の個体は人間に引き取られて働いている。
 もちろん、搭載していた銃火器は全て取り外されていた。
 ずんぐりむっくりした体型はある意味愛嬌的で、テロさえしなければ親しみがあるとさえされた。

 バージョン4.0:「エッ?錦糸町デでポン引きヤッテモイイノカッテ?人間ガヤルカラ問題ナノデス。ロボットがヤル分ニハ合法デス。トイウワケデソコノお兄サン、寄ッテッテ〜ナァ?可愛いセクサロイドがドンナプレイでもヤリマッセ〜。ソコノイケテル黒イオ兄サン、オ1ツイカガ〜?」
 黒いロボット:「ザビ?」
 バージョン4.0:「オオッ、オ仲間デシタカ〜。初メテ見ル機種デスナ。新型サンデスカ〜?」
 黒いロボット:「ザビィ!」

 黒いロボット、バージョン4.0の頭部を引きちぎった。

 その頃、錦糸町駅に向かう都営バスの車内に井辺が乗っていた。
 井辺は錦糸町のマンションに住んでおり、豊洲まで都営バスで通っている。

 萌:「今日も井辺さんと一緒に過ごせて幸せです〜」
 井辺:「いいですか?あなたは科学館さん専属なのです。科学館さんがオープンする日には、そちらに戻るんですよ」
 萌:「はーい」

 萌は唯一の妖精型ロイドで、東北地方にあったKR団の秘密研究所を井辺と脱出したことからある種の親近感が芽生え、井辺を1番慕っている。

 井辺:「今日は早く帰れたので、お惣菜でも買って帰りますか」
 萌:「そうしましょ〜」

 ガンッ!(バスのフロントガラスに何かが当たった)
 ギギィィッ!!(バスが急ブレーキ!)

 井辺:「うわっ!な、何だ?」

 フロントガラスには蜘蛛の巣状のヒビが入っている。

 萌:「駅前が何か騒がしいよ!?」
 井辺:「何かあったんですかね?」
 萌:「ボク、見てくる!」

 萌はバスの小さな窓から外に出ると、まずはバスにぶつかった何かを探した。

 萌:「こ、これは!?」

 それはバージョン4.0の頭だった。

 萌:「井辺さん、バージョン4.0の頭がバスにぶつかったみたいだよ!?」
 井辺:「何ですって!?……一瞬またバージョン達がテロ活動を始めたのかと思いましたが、だったらそいつが頭だけで飛んで来るはずがないですね」
 萌:「そ、そうだよね」
 井辺:「と、とにかく社長に連絡です。社長も帰宅中のはずですから」

 井辺は自分のスマホを出した。

[同日同時刻 天候:晴 JR東京駅]

 敷島は井辺から電話を受けた。

 敷島:「えっ、バージョン4.0が?……分かった。萌の調査を待とう」

 新幹線のデッキで電話していた敷島。

 敷島:「バージョン4.0の頭部を胴体から引き離すことのできるヤツ……って言ったら、マルチタイプしかいないよなぁ……?」

 敷島は首を傾げて座席に戻った。

 シンディ:「どうかしましたか?」
 敷島:「井辺君からだ。錦糸町で今、大変なことが起きてるらしい」
 シンディ:「大変なこと?」
 敷島:「井辺君の乗ったバスに、バージョンがぶつかってきたらしい」
 シンディ:「!」
 敷島:「頭だけ」
 シンディ:「頭だけ!?それはどういう意味ですか?」
 敷島:「俺もよくは分からんのだが、自爆したってことは考えられないかな?」
 シンディ:「今のあいつらには、火薬は詰まれていないはずですけど?」
 敷島:「だよなぁ……」

 次の連絡があるまでに、帰宅の途に就いている敷島達を乗せた“なすの”265号は東京駅を発車した。

[同日19:00.天候:曇 埼玉県さいたま市大宮区 敷島家]

 敷島:「ただいまァ」
 アリス:「お帰り。東京じゃ大変みたいだったわね」
 敷島:「大変?」
 アリス:「黒いロボットのことよ。北海道にいた奴らでしょ?」
 敷島:「あっ、そうだったな」
 エミリー:「お帰りなさいませ」
 敷島:「おっ、エミリー。オーバーホールは無事に終わったみたいだな」
 エミリー:「おかげさまで。今、とても快調です」
 敷島:「それは良かった」
 エミリー:「御夕食の準備が整っておりますので」
 敷島:「うん、分かった」

 敷島が着替えてからダイニングに行くと、アリス達がテレビに釘付けになっていた。

 敷島:「どうした?」
 アリス:「これ、北海道にいたヤツと同じ種類!?」
 敷島:「ええっ?」

 テレビでは錦糸町で起きた事件について報道していた。
 防犯カメラに映っていたという黒いロボットの凶行について公開されていた。
 ポン引きしていたバージョン4.0の頭部を引きちぎり、それを遠くに向かってポーンと投げた黒いロボット。
 どうやらそれが井辺の乗った路線バスに当たったようである。
 すると、どこからともなく黒いロボットが5機ほど現れて、セクサロイドの風俗店に突入していった。
 そして、店で働いていたセクサロイドを抱えて連れ出していた。
 サービス中であってもお構いなく連れ出したのか、真っ裸のロイドや客の人間も一緒に連れ出されていた。
 この黒いロボット、そんな真っ裸の人間を外に放り出すと、わざわざ指さして嘲笑するような素振りをするほどの緻密な動きをしていた。

 敷島:「ほ、北海道にいた凶暴なヤツと違う!」
 アリス:「こいつら、何がしたかったんだろう?」
 エミリー:「やってることは盗賊団と変わりませんね」
 シンディ:「でも、また画面の外に消えたわ」

〔「不思議なことにこの黒いロボット集団、いつの間にか消えてしまいました。警察では……」〕

 シンディ:「高度なステルス機能を搭載しているんだと思います」
 敷島:「あれは一体誰の……何の命令で動いてるんだろう?」

 セクサロイドはメイドロイドの亜種で、人間に対して性的奉仕目的で製造されたガイノイドのことである。
 その為、概してガイノイド(女性型アンドロイド)がとても多い。
 ロイドなら人間ではない為に何の規制の対象にもなっておらず、それこそロリ専用の個体もあるという。

 敷島:「あのセクサロイドのGPSを使って捜索できないか?」
 アリス:「それは無理よ。メイドロイドでさえ、GPSはオプションなんだから。ましてや裏産業で稼働するセクサロイドに、わざわざそんなオプション付けるとは思わないね」
 敷島:「うーむ、そうか……」

 対策会議のメンバーで襲われていないのは敷島だけ。
 鷲田と村中を始め、職務上、警視庁の庁内にいた者も無事だった。
 車で移動していた者だけが襲われたのだ。
 この時ばかりは、地下鉄移動を選んだ敷島の英断と言えよう。
コメント (4)
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“戦う社長の物語” 「黒いロボット、再び」

2018-02-07 10:25:05 | アンドロイドマスターシリーズ
[1月4日13:23.天候:晴 東京都江東区豊洲 東京メトロ豊洲駅]

 敷島は警視庁で行われるロボットテロ対策会議に出席する為、シンディと会社を出た。

 シンディ:「タクシーかハイヤーで向かうという手がありますよ?」
 敷島:「いいよいいよ。地下鉄ならお前みたいなヤツが狙撃してくることも無いだろうし、日本の地下鉄なら安全だ」
 シンディ:「確かに、私みたいなヤツは地下で狙撃はしませんけどねぇ……」

 但し、前期型の時は走行中の東西線電車に体当たりした経験を持つ。
 南里志郎存命中の時だ。
 地下鉄のトンネル内にある倉庫に南里を捕まえて監禁したものの、逃げられた。
 任務に失敗した怒りでほぼ八つ当たり的に、たまたまやってきた東西線電車に体当たりを食らわせて大破させたのだった。

 シンディ:「体当たりはしますよ」
 敷島:「滅多に無いって」

〔まもなく4番線に、和光市行きが10両編成で到着します。乗車位置で、お待ちください。ホームドアから手や顔を出したり、もたれ掛かったりするのは危険ですからおやめください〕

 ホームに接近放送が鳴り響く。
 風を巻き起こしながら、東京メトロの自社車両10000系が入線してきた。
 開業当時から運転されている旧型ではなく、新型の方である。
 HIDの白いライトが眩しい。

〔豊洲、豊洲です。4番線の電車は各駅停車、和光市行きです〕

 電車に乗り込む敷島とシンディ。
 敷島は空いているオレンジ色の座席に腰掛けた。
 シンディはその前に立つ。
 ホームから、発車メロディ(サイン音)が流れる。
 各曲ごとに曲名が付けられていて、豊洲駅4番線は“きらめくホーム”という。

〔ドアが閉まります。駆け込み乗車はおやめください〕

 敷島:「そういえばミク、電車移動の時は発車メロディに歌詞付けて歌ってたっけなぁ……」

 もちろん、適当にではない。
 曲名を知った後、そこからどうも『予想』して歌うようである。
 最初から原曲があって、歌詞もある場合は別だが。

 電車が東京都心に向かって走り出す。
 行き先の和光市駅とは、埼玉県和光市のことである。
 つまり東京都心を突き抜けて、反対側の埼玉県に抜けるということだ。

〔次は月島、月島です。乗り換えのご案内です。都営大江戸線は、お乗り換えください〕
〔The next station is Tukishima.Y-21.Please change here for the Toei-Oedo line.〕

 この10000系にはドアの上にモニタがある。
 最近の流行りであろうか。
 向かって左側はCMや天気予報やニュースを流し、右側は停車駅案内や運行情報などを流している。
 そのモニターでは、ニュースを流していた。

『晴海ふ頭で海上コンテナ“内側から”破壊される』『コンテナの中は空洞。荷物が“脱走”か?』

 敷島:「高田馬場駅で“鉄腕アトム”歌い出した時には、もうびっくりしたなぁ……」
 シンディ:「姉さんが人身事故を防ぐ為に、電車に体当たりしたんですよね」
 敷島:「体当たりじゃない。体を張って止めたんだ」

 モニタの方は全然見ていなかったので、ニュースには気がつかなかった。

[同日13:32.天候:晴 東京都千代田区 東京メトロ桜田門駅]

 豊洲駅から10分ほどで電車は警視庁の最寄り駅に到着する。

〔まもなく桜田門、桜田門です。出口は、右側です。足元とホームドアにご注意ください〕

 無事に電車から降りる敷島達。

〔桜田門、桜田門です。2番線の電車は各駅停車、和光市行きです〕

 敷島:「ほら、何にも無かっただろ?」
 シンディ:「まあ、そうですねぇ……」

 警視庁への最寄りは4番出口である。
 そこへの階段を登ると……。

 敷島:「んっ!?」
 シンディ:「社長、危ない!」

 何故か車が宙を飛んでいて、それが4番出口に向かって来た。
 シンディが前に立ちはだかって、車を受け止める。
 その車は黒塗りの役員車のようだった。

 敷島:「何なんだ、一体!?」

 車に乗っていたのは……。

 敷島:「あれ!?確かあなた、公安委員会の……」

 これから敷島と一緒に会議の出席する公安委員が乗っていた。

 公安委員:「テロだ!テロロボットが現れた!!」
 敷島:「な、何ですって!?」
 シンディ:「社長、あれを!」

 シンディが指さしたのは、通りを我が物顔で歩く黒いロボットの集団だった。

 敷島:「あれは“黒いロボット”!?北海道で見たヤツだ!」
 公安委員:「あれが急に車を襲って来たんだ!会議の他の参加者もやられた!」
 敷島:「何ですって!シンディ、一網打尽にしろ!」
 シンディ:「かしこまりました!」
 黒いロボットA:「ザビィ?」
 黒いロボットB:「ザビィ」
 黒いロボットC:「ザビィ!ザビィ!」
 敷島:「何か会話してるぞ?!」
 シンディ:「解読不能です!」
 敷島:「なにぃっ!?それはどういうことだ!?」
 シンディ:「原始人が『ウホウホ』しか言わないのに、ちゃんと仲間同士で会話が成立しているようなものです」
 敷島:「じゃ、あれは『ウホウホ』と会話してるんかい!」

 その黒いロボット。
 北海道で現れた個体にあっては、バージョンシリーズのように銃火器を使用してくることはなく、持ち味たる怪力と耐久力を駆使して特にエミリーを苦しめた。

 シンディ:「だぁりゃーっ!」
 黒いロボットA:「ザビィ!?」

 シンディは黒いロボットAを掴み上げると、それをBにぶつけた。

 黒いロボットB:「ザビィーっ!」

 チュドーン!(AとB、大破して爆発する)

 黒いロボットC:「ザビィ!」

 Cは背中からドローンのようなプロペラを出して飛び上がった。

 敷島:「と、飛んだ!?」
 シンディ:「逃がすか!」

 シンディも足下からジェットエンジンを吹かしてCに……。

 シンディ:「速っ!?何アイツ!?」

 しかしC、今度はプロペラではなくジェットエンジンの気筒を出して一気に加速した。

 シンディ:「ちくしょう!ゴキブリみたいな奴らめ!!」

[同日14:00.天候:晴 警視庁庁舎内会議室]

 鷲田:「せっかくご足労頂いた所で申し訳無いが、会議は中止だ」
 敷島:「さっきの委員さん以外、全員病院送りですって!?」
 村中:「そうなんだ。例の黒いロボット達に襲われてね。幸い死者がいなかったからいいようなものの、これでは警察や公安の面目丸つぶれだ」
 鷲田:「奴ら、地面や物陰からいきなり現れて襲って来たらしい」
 敷島:「地面から!?」
 村中:「マンホールの中にじっと潜んでいたらしいよ。ますますゴキブリみたいな奴らだね」
 鷲田:「おい、シンディよ。オマエのセンサーか何かに引っ掛からなかったのか?」
 シンディ:「それが全然」
 敷島:「北海道の時もそうだったっけ、それ?」
 シンディ:「どうでしたかねぇ……。とにかく、今回にあっては全く反応しませんでした。恐らく、ステルス機能が搭載されているものと思われます」
 村中:「なるほど、そうか」
 敷島:「あの黒いロボット達は、いつどうやって東京に?」
 鷲田:「ニュースを見たか?晴海埠頭の海上コンテナが襲われたというものだ」
 敷島:「えーっと……」
 村中:「もしかしたら、あれに荷物として積まれていたのかもしれないね。何しろ、内側からこじ開けられてたんだから」
 敷島:「外国から来たんですか。北海道の時は、危うく北方領土を通してロシア領内に入り込む所でしたからね。もしかしたら、今度のテロ組織はロシアンマフィア辺りかな?」
 鷲田:「まだ捜査中だから、何とも言えんよ。とにかく、だ。そもそも、何機脱走したのか皆目分からん。もし途中で見つけたら生け捕りにしてくれ」
 敷島:「生け捕り!バラバラにしてやるより難しいですなぁ……。せめて、首と胴体を切り離した状態じゃダメですか?」
 村中:「なるべく、の話だよ。もちろん、自分の安全を優先にして協力してくれればいい。ですよね、部長?」
 鷲田:「私としては、相討ちを望んでいるがな」

 鷲田は侮蔑の目をシンディに向けた。
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