報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“戦う社長の物語” 「東京へ戻る」

2018-02-27 19:34:04 | アンドロイドマスターシリーズ
[1月8日15:30.天候:晴 JR総武快速線1380F電車5号車内→JR東京駅]

〔まもなく終点、東京、東京。お出口は、左側です。新幹線、東海道線、横須賀線、上野東京ライン、中央線、山手線、京浜東北線、京葉線と地下鉄丸ノ内線はお乗り換えです。電車とホームの間に広く空いている所がありますので、足元にご注意ください。今日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございました〕

 敷島達を乗せた快速電車は、錦糸町駅を出ると黄色い緩行線と別れ、地下トンネルへと入って行く。
 この界隈は東京メトロや都営地下鉄も路線を張り巡らしており、如何に地上に鉄道を敷設できる土地が無いのかが理解できる。

 敷島:「そういえば学生の頃、“青春18きっぷ”で早朝の総武線地下ホームから電車に乗ったんだよ」
 シンディ:「そうですか。それで?」
 敷島:「まあ、当時は113系っていう古い電車が走っていたんだがな、そいつとマッチするかのように、ある者がホームの上を駆け回っていたんだよ」
 シンディ:「ある者?」
 敷島:「よく、電車ん中に入って来なかったな。数匹はいたぞ」
 シンディ:「ゴキブリか何かですか?」
 敷島:「『じょうじ、じょうじ』って言いながら乗り込んで来たら面白かったんだがな……って、違う違う。むしろ、『ピカチュー』って鳴く方だ」
 シンディ:「ああ!」

 電車がホームに停車し、ドアが開く。

〔「ご乗車ありがとうございました。終点東京、終点東京です。横須賀線ご利用のお客様、向かい側1番線から発車致します、15時34分発の横須賀行きにお乗り換えください。……」〕

 シンディ:「こんなホームの真ん中にネズミがですか?」
 敷島:「いや、俺が見たのはホームの端っこさ。何しろその頃から鉄ヲタだったもんでな、乗った車両は15両編成の先頭車だよ。かなりデカくてさ、ちょっとした猫くらいの大きさだったぞ」
 シンディ:「そんなに!?」

 ※作者が約20年前に体験した実話です。あの頃はE217系よりも113系の方がまだ台数も多く、地下総武線ホームも今よりも薄暗く、薄汚い所でした。

 敷島とシンディは電車を降りた。
 今度は地上の改札口に向かう。

 敷島:「だからさ、平賀先生に提案してみたんだよ。『偵察用にネズミロボットなんて作ってみたらどうですか?』って」
 シンディ:「そしたら?」
 敷島:「『今の技術では、本物のネズミ並みに俊敏なロボットは造れません』だってさ」
 シンディ:「KR団最後の女性科学者、吉塚広美博士が萌を造ったくらいですから、可能のような気がしますけどね」

 南里の葬儀に参列しに来た時は一般人枠で来たものだから、敷島も平賀も単なる知り合いだと思っていた。
 何しろ、その時点で70代の年配者だったからだ。
 だが、しかして実はKR団の科学者だったのである。
 萌を開発した時の写真を見るに、30代の頃はアリスを日本人にしたような感じの女性だったらしい。

 敷島:「吉塚博士はファンシーキャラを造ってくれたからいいようなものの……」

 敷島はそこで萌が初登場した場所を思い出した。
 井辺がKR団の東北アジトに拉致された時のことだが……。

 敷島:「蜘蛛ロボットだのゴキブリロボットだの、害虫ロボばっかり造ってた所だぞ?」

 前者は不快害虫、後者は衛生害虫か。
 もっとも、KR団はちゃんと真面目に実用性を想定して造っていたらしいが……。
 蜘蛛ロボットは蜘蛛の巣に人間ごと引っ掛けて拉致に使ったり(北朝鮮に日本人拉致用として高く売りつけるつもりだったらしい)、網に高圧電流を流して拷問や処刑に使用したり(これも拷問が認められている国に売りつけるつもりだったらしい)、ゴキブリロボットは外国の諜報機関に売り付けるつもりだったらしい。

 敷島:「……まあ、考えようによっては、害虫だからこそ上手く行くのかもな」

 もしも害虫を発見し、殺虫剤を使っているにも関わらず、全く効いていない場合、それは実はロボットかもしれない。
 害虫を見つけてホイホイ近づく人間は……まあ、あまりいないだろう。
 その盲点を突いた商売を、KR団の一部組織は考えたというわけだ。
 もっとも、今その組織は団体ごと壊滅、その構成員は逮捕されたり、死亡したり、他のテロ組織に拾われたりしている。

 敷島:「取りあえず、八重洲南口から都営バス……」
 シンディ:「社長なんだから、タクシー使ってください。被害状況の確認という業務で向かうんですから」
 敷島:「分かった分かった」

 敷島達は地上の改札口を出ると、八重洲中央口から外に出た。
 そしてそこからタクシーに乗り、会社へと向かった。

[同日16:00.天候:晴 東京都江東区豊洲 豊洲アルカディアビル]

 敷島とシンディを乗せたプリウスのタクシー。

 敷島:「そういえば平賀先生の車、あれ、電気系統とか大丈夫なのかな?雪に随分埋もれてたけど……」
 シンディ:「水が直接入り込まなければ大丈夫だと思いますが……」

 平賀の車もプリウス。
 それと同じ車種のタクシーに乗ったものだから、ついそれを思い出してしまったのである。

 敷島:「お前、雪からかき出しただろ?その時、どうだった?」
 シンディ:「大丈夫だったと思いますが……」
 敷島:「先生に返す前に、ちょっと試乗してみるんだったな。ややもすると、俺達が壊したみたいになりかねない」
 シンディ:「逆にそれは、ヘタにしない方がよろしいかと。むしろその方が、後になって調子が悪くなった時に責任を問われかねません」
 敷島:「そういうものかな。エミリーだったら、『返す前に乗った時は異常ありませんでしたので、こちらの責任ではありません』とか言いそうだ」
 シンディ:「まあ、姉さんならそう言うでしょうねぇ……」

 シンディは苦笑した。
 いかに覚醒したとはいえ、まだどことなく機械的な感じをさせるのがエミリー、人情的なのがシンディといった所だ。
 果たして、秘書としてはどちらが優秀なのか。
 一長一短であるが故、敷島は決めかねている。

 シンディ:「あっ、そうだ、社長。今日は祝日ですから、車寄せが閉まってますよ?」
 敷島:「おっ、そうだった」
 シンディ:「すみませんが、車は豊洲アルカディアビルの通用口に着けて頂けませんか?あの交差点を曲がった先です」
 運転手:「はい。次の交差点を左ですね」

 正面エントランスも土休日は終日閉鎖されているので、用のある関係者は防災センターの前を通らなくてはならない。
 敷島達は通用口(防災センター入口)と書かれた、地下へと下りる階段の前でタクシーを降りた。
 ビルそのものはオフィスビルなのだが、低層階には飲食店などのテナントが入居している為、そこだけは賑わっている。
 高層階のオフィスフロアにこのタイミングで行く場合は、防災センターで受付をしなければならない。

 敷島:「何だ。ちゃんとこのビルの周りも、除雪されてるじゃないか」
 シンディ:「井辺プロデューサーやボーカロイド達が頑張ったらしいですよ」
 敷島:「ふーん……」

 受付を済ませ、低層階はガン通過する高層用エレベーターで事務所まで向かった。

 シンディ:「ボカロ達も随分と社長を心配していましたし、被害状況確認だけでなく、あのコ達と少し話してあげてはどうでしょう?」
 敷島:「うん、それもそうだな」

 敷島とシンディ2人だけを乗せたエレベーターは、防災センターのある地下1階から18階へと一気に上昇した。
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする