報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“戦う社長の物語” 「黒いロボット対策会議」 1

2018-02-11 21:35:14 | アンドロイドマスターシリーズ
[1月6日10:00.天候:晴 JR大宮駅]

 大宮駅新幹線改札口を通った敷島とエミリー。

 エミリー:「“はやぶさ”69号は、16番線からです」
 敷島:「そうか。大宮始発の新幹線に乗るのは初めてだ」
 エミリー:「臨時列車のせいか、車内販売は無いようです。予め、飲み物とかはここで購入した方が良さそうです」
 敷島:「そうだな。コーヒーくらい買って行こう」

 エミリーがニューデイズでカップ入りのコーヒーを購入した。
 それを手に普段は列車の来ない臨時ホームに上がる。

〔16番線に停車中の電車は、10時10分発、“はやぶさ”69号、新青森行きです。この電車は途中、仙台、古川、一ノ関、北上、盛岡、八戸に止まります。……〕

 ホームに上がるとエメラルドグリーン(厳密には『常盤グリーン』)の塗装が目立つE5系“はやぶさ”が停車していた。

 エミリー:「9号車です」
 敷島:「分かった」

 車内販売が無いということは、グランクラスでもシートサービスが無いということだ。
 その分料金が安くなっているとは思うのだが、敷島とエミリーが乗ったのはグリーン車の方だ。

 エミリー:「社長でしたらグランクラスにも乗れましたのに……」
 敷島:「いや、いいんだ。グランクラスは、うちの会社が四季エンタープライズ並みに大きくなってからにしよう」

 敷島は進行方向左側の窓側席、エミリーはその隣の通路側席に座った。

〔「ご案内致します。この列車は10時10分発、東北新幹線下り“はやぶさ”69号、新青森行きでございます。全車両指定席で、自由席はありません。お手持ちの指定席特急券をご確認の上、指定の席にお掛けください。グランクラスは10号車、グリーン車は9号車です。この列車には、車内販売はございません。飲食物等ご希望のお客様は、予め駅での購入をお願い致します。……」〕

 敷島:「それにしても……」

 敷島は手持ちのタブレットを取り出した。

 敷島:「仙台にも黒いロボットが現れただなんて、ちょっと驚きだよ」
 エミリー:「同時多発的に発生しているようですね」
 敷島:「いつどこで、誰が製造したのやら……。本来なら昨日、科学館に現れたヤツのメモリーやデータを調べて判明するはずだったんだが……」
 エミリー:「妹が本当に申し訳ありません」
 敷島:「頭部をシンディが攻撃しやがったせいで、メモリーがブッ壊れてデータが飛んでいたという有り様だ」
 エミリー:「2度とご迷惑をお掛けしないよう、シンディはよく叩き聞かせておきましたので」
 敷島:「いや、言い聞かせてくれればいいんだけどな。ボディは手に入れられたし(シンディがブッ壊したんで、破片と部品の一部だけど)、あとはDCJさんで解析してもらうだけだ」
 エミリー:「仙台では現れても捕獲できなかったのですか」
 敷島:「向こうにはお前達のような無双ロイドがいないからな、どうしようも無い。まだ人間に被害が出ていないだけマシってなもんだ。つまり、お前の任務はその黒いロボットを捕獲することだ。シンディのように、すぐにブッ壊したりしたらダメだぞ?生け捕りだぞ?」
 エミリー:「分かっております。私は妹のようにはいきません」

 エミリーは大きく頷いた。
 そんなことを話しているうちに、ホームからは発車ベルが聞こえて来た。
 本線ホームと比べると、少し音色が低い。

〔16番線から、“はやぶさ”69号、新青森行きが発車致します。次は、仙台に止まります。黄色い線まで、お下がりください〕

 3連休初日の臨時列車は、ほぼ満席の状態で大宮駅を発車した。
 敷島も言う珍しい大宮始発の臨時列車が設定されたのは、偏に大宮〜東京間の線路容量の逼迫にある。
 北陸新幹線や北海道新幹線が開通したことで列車本数が増え、特に全路線が集中する大宮以南は過密ダイヤになっている。
 トリビアだが、実は上越新幹線は新宿駅始発という計画だったらしい。
 その為、計画通りに上越新幹線を新宿駅に逃がすか、或いは大宮〜東京間は北陸新幹線と併結させるかの計画が立てられたらしい。
 だが、どちらも頓挫している。

〔♪♪(車内チャイム)♪♪。本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。この電車は東北新幹線“はやぶさ”号、新青森行きです。次は、仙台に止まります。……〕

 敷島:「それにしても、お前達のスキャンにも掛からない連中なんてなぁ……」
 エミリー:「シンディの言う通り、高度なステルス機能を搭載していることは間違い無いようです」
 敷島:「うん。それについては、俺も同意見だ。まさかとは思うが、この列車に乗り込んでいるなんてことは無いよな?」
 エミリー:「それは多分、大丈夫だと思いますが……」
 敷島:「うん、それならいいんだ。どうせ現れてくれるのなら仙台だ。そこでエミリーが最低1機確保する」
 エミリー:「はい」

 新幹線の後を追うように大宮駅地上ホームを通過する宇都宮線の貨物列車。
 そのコンテナ車に積まれている赤紫色のコンテナ。
 どうも行き先は仙台貨物ターミナル駅(旧称、宮城野貨物駅)のようだが、そのコンテナの中に……。

 黒いロボットA:「ザビ?」
 黒いロボットB:「ザビ」
 黒いロボットC:「ザビィ!」

 シンディに破壊されたものとは別の黒いロボット3連星が何故か乗り込んでいた。
 本当に正規な手続きをして『荷物』として運搬されているのか、或いは無賃乗車なのかは分からない。
 ただ確実に言えることは、この列車は高速貨物列車で、これは旅客列車で言う特急に相当する。
 それに乗って、しかも仙台貨物ターミナル駅で降ろされるコンテナに乗っているということは……。

 黒いロボットA:「ザビ?」

 黒いロボットAは照明の無い暗いコンテナの中で、器用にメイドロイドのイラストを描いた。
 それにやんややんやと手を叩くBとC。

 黒いロボットB:「ザビィ!ザビィ!」

 更にAは、今度はエミリーのイラストを描く。

 黒いロボットC:「ザビィ!ザビィ!」

 再びやんややんやと手を叩き、Aの肩をバンバン叩いた。
 決してスペックが低いロボットではないようだが、一体彼らは何の目的で行動しているのだろうか。
 そしてもっと言えることは、機械の者として、本来はエミリーなどのロイドも貨物列車で運搬するのが正式であることだ。
 なまじ人間そっくりに造られているだけに、そこは誰もツッコまない。
 ツッコむのは、金属探知機のある航空だけだ。
コメント
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