報恩坊の怪しい偽作家!

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 実際のものとは異なります。

“戦う社長の物語” 「エミリーのピアノ」

2018-02-15 10:13:25 | アンドロイドマスターシリーズ
[1月6日16:00.天候:雪 宮城県仙台市青葉区 東北工科大学・南里志郎記念館]

 大学構内でトップを争う古さを誇る建物。
 南里志郎記念館。
 元々は研究棟として建設され、使用されていたものの、老朽化に伴って廃墟と化していたものであった。
 それが前期型のエミリーのボディを常設展示するに伴い、大改築されてオープンしたものがこの記念館である。
 エミリーの生みの親で、平賀の師匠でもあり、東北工科大学の教授でもあった南里志郎の軌跡を称えるのが目的となっている。
 展示物は何もエミリーの前のボディだけではなく、ロボットテロの恐ろしさを世間に認知させる為に、捕獲したバージョンシリーズなども展示されている。
 後期型のエミリーがここに来ると、警備用として稼働しているバージョン4.0達から歓迎を受ける。
 まるで視察に来た某元帥様を出迎える某人民の人々みたいだ。

 バージョン4.0-4:「ピアノの整備ハ万全デス」

 バージョン4.0-4(以下、B4-4)は揉み手をしながら言った。
 尚、元テロ用途であったバージョンシリーズのバージョンをアルファベットで書くと、『Version』ではなく、『Barsion』と書く為。

 エミリー:「そうか……」

 2階吹き抜けエントランスホールには、1台の古いグランドピアノが置かれている。
 エミリー自身がここに常設展示されていた頃は、毎日17時、このピアノを弾いていたものだ。
 交換用の後期型ボディの製作が遅れた為、耐用年数の過ぎた前期型ボディを休ませる為にここに常設展示されていた。
 毎日17時に弾くという習慣は、南里志郎研究所時代から変わらない。

 エミリー:「…………」

 エミリーはピアノの前に座った。
 そこで弾くのはショパン作曲の幻想即興曲。

 B4-286:「アリッサー!」
 B4-457:「違ウ違ウ。ソレ別のゲーム」
 B4-108:「多分、読者ニハ286ノ台詞ノ意味ハ分カッテナイゾ?」
 B4-6:「“クロックタワー3”のステージ1ノBGMナ?」
 B4-4:「オ前ラナァ……」
 B4-286:「“大魔道師の弟子”ノヒロイン、マリアンナ・ベルフェゴール・スカーレットがアリッサ・ハミルトンに似テイル件ニツイテ」
 B4-457:「似テナイ似テナイ」
 B4-108:「金髪ショートカットと服装ダケダロ?」

 バァンとピアノの鍵盤を叩いて演奏を止めるエミリー。

 エミリー:「お前達うるさい!!」
 バージョン4.0一同:「モ、申し訳ゴザイマセン!」

 ババッと全力土下座をするバージョン達だった。

 エミリー:「……っ!17時には前の通り、またここで弾く。今度は静かにしてろ」
 B一同:「ハハーッ!!」

 エミリーは席を立つと、奥の部屋に引っ込んだ。
 そこは元館長室だった部屋があり、今はバージョン達が製作した玉座がある。
 どうやらエミリーの席らしい。
 だが、たまにシンディも座っていたりする。
 バージョン達としてはエミリー専用席として作ったのでシンディに座られるのは困るのだが、同型の姉妹機に対して排除行為などできるわけもなく、1機は足蹴にされるという別の意味での女王様ぶりを発揮されるのであった。

 エミリー:(テロ用途を止めたら止めたでウザい連中になりやがった……)

 エミリーは不機嫌そうに座ると充電ケーブルを引っ張って来て、しばしの間、自分のバッテリーを充電することにした。

[同日17:00.天候:雪 南里志郎記念館エントランスホール]

 エントランスホール内にエミリーのピアノが響き渡る。
 それが建物の外にも響いてきて、土曜日でも大学に来ている関係者達の耳を癒す。

 曲目リストは『ショパン作、幻想即興曲』『ベートーヴェン作、月光』の他、東方Projectより『人形裁判 〜人の心弄びし少女〜』(エミリーの前期型ボディ使用時のテーマ)、『パンデモニックプラネット』(エミリーの現在のテーマ)、『千年幻想郷 〜History of the Moon』(前期型シンディのテーマ)、『故郷の星が映る海』『ピュアヒューリーズ 〜心の在処』(後期型シンディのテーマ)、『九月のパンプキン』(妖精型ロイド萌のテーマ)、『竹取飛翔 〜Lunatic Princess』(8号機のアルエットのテーマ)、『上海紅茶館 〜Chinese tea』(7号機のレイチェルのテーマ)、最後は『鉄腕アトム』で完結。

[同日18:00.天候:雪 仙台市青葉区国分町 キュア国分町“八波亭”]

 会議が終わった後は東北一の繁華街、国分町で宴会をするロボット会議のメンバー。

 敷島:「もうそろそろエミリーのピアノは終わったかな」
 平賀:「あ、そうか。エミリー、ピアノ弾くんでしたね。すっかり忘れてましたよ」
 村上:「今や自動演奏ピアノなど珍しくも無いだろうに、あえてロイドが弾くってのも面白い試みじゃな」
 敷島:「南里志郎研究所や財団があった頃は、よくエミリーやシンディで演奏会をやらせていたものです。シンディはフルートが吹けます」
 村上:「なるほど。それなら今度、ロイにもヴァイオリンを弾かせてみよう。調整期間は1ヶ月くらいでいいじゃろう」
 有泉:「先生。楽器でしたら、この前あいつトランペット吹いてましたよ?あとサックスも」
 村上:「何ぃ?何故それを早く言わんのじゃ!?」
 敷島:「ロイドの進化は凄いな。いずれは人間に取って変わったりして」
 村上:「そういうSF映画とかもあるみたいじゃな。じゃが、現段階ではまだ大丈夫。人間も一緒に進化している間なら」
 敷島:「なるほど」
 平賀:「敷島さんが現役の間は大丈夫だという安心感がありますね」
 敷島:「そうですか?」
 平賀:「シンディのヤツ、後期型として稼働している間も、どこか人間に対して叛心があるような気がして……」
 敷島:「気のせいだと思いますがねぇ……」

 と、そこへ有泉の電話が鳴った。

 有泉:「ちょっと失礼します」
 敷島:「はいはい」

 有泉が電話に出る為に席を外す。

 敷島:「優秀そうな助手さんですね」
 村上:「まあ、大学院での成績は優秀なのじゃが……」
 敷島:「平賀先生も助手は取らないんですか?」
 平賀:「自分は今、どちらかというとDCJの仕事の方が忙しいので……」
 敷島:「DCJの非常勤役員ですが、ついに本格的に常勤へと?」
 平賀:「話はあるんですけどねぇ……」

 すぐに有泉が戻って来た。

 有泉:「ロイからです。仙台市内に大雪特別警報が発令されたそうです。雪で身動きが取れなくなる前に、お早くお戻りくださいということです」
 敷島:「なに?今そんなに雪強いの?」
 平賀:「例年に無い最強の南岸低気圧が迫っているという予報は見ましたが……。警報じゃなく、特別警報が出るほどですか」
 村上:「むぅ……致し方無い。本当は二次会のカラオケで“千本桜”歌いたかったところじゃが、今日はやめておこうかの」
 有泉:「その方がいいですよ、先生」
 敷島:(てかこの爺さん、うちのミクの持ち歌歌う気だったのかよ)

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