報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“戦う社長の物語” 「敷島エージェンシーの仕事始め」 4

2018-02-04 21:40:10 | アンドロイドマスターシリーズ
[1月4日11:00.天候:晴 東京都江東区豊洲 敷島エージェンシー]

 シンディ:「失礼致します。車寄せにお車が到着しました」

 シンディが社長室に入って来る。

 敷島:「おっ、了解。すっかり話し込んじゃったね」
 勝又:「確かに。それじゃ、クールトウキョウのプロジェクトはよろしくお願いしますよ」
 敷島:「承知。勝山先生のお手並みを拝見と行きますよ。シンディ、車寄せまで送ってあげて」
 シンディ:「かしこまりました」

 敷島はエレベーターホールまで見送った。
 シンディは一緒にエレベーターに乗る。

 勝又:「敷島社長の御協力には頭が下がります」
 シンディ:「社長には東京都に貸しがあるので、都議の先生には頭が上がらないのです」

 その割にはフレンドリーなのは、大学の同級生だからか。

 勝又:「貸し?」
 シンディ:「『東京決戦』の時に都営バスを無断拝借して、敵ロボット達の集団に突っ込んだことです。それでそのバス、全損させてしまったので」
 秘書:「乗員乗客が全員避難した後、無人となっていたバスですよ、先生」
 勝又:「ああ、そうだったのか。別に非常時だったわけだし、それでその事件を解決する糸口になったわけだし、何年か後、その全損させたバスを新車で弁償したんだろ?だったらいいんじゃないか」
 秘書:「特に交通局から訴訟などの話はありません」
 勝又:「というわけだから、もう時効だよ。ま、それで協力してくれるのはありがたいけど」

 エレベーターがB2F車寄せに到着する。

 シンディ:「タクシーで宜しかったのですか?ハイヤーの手配なども……」
 勝又:「いえいえ、これでいいんです」
 秘書:「『庶民の味方』たる無所属の若手議員がハイヤーなどに乗っていては、都民から顰蹙を買います。先生がハイヤーにお乗りになるのは、国選に選出されてから」
 シンディ:「うちの社長も似たようなこと言って、ハイヤーに乗りたがらないのです。本社からは乗るように指示されているのですが……」
 勝又:「それは指示に従うべきだと思いますよ。民間企業の経営者と、テロと戦う正義の味方の二足の草鞋を履いているんですから、別に顰蹙を買うことは無いと思いますね」
 シンディ:「ありがとうございます」

 車寄せに止まっているのは、黒塗りのタクシーである。
 敷島エージェンシーが呼んだこともあって、タクシー会社は敷島が出勤の時に乗った所とは違う。

 勝又:「その右手に仕込まれた光線銃が、正義の為に使われることを望みますよ」

 タクシーに乗り込んで、窓を開けた勝山がそう言った。
 だが、シンディは笑みを浮かべてこう答えた。

 シンディ:「敷島社長の望みは違います」
 勝又:「違う?」
 シンディ:「1度も使わずに、この右手が廃棄処分になることを望んでいるのです」
 勝又:「こりゃ負けた」

 タクシーが発進する。
 シンディは深々とお辞儀をしてそのタクシーを見送った後、再び18Fに戻った。

 敷島:「お帰り。ちゃんとお見送りできた?」
 シンディ:「はい。やはり社長は、ハイヤーに乗られるべきだと勝又先生も仰ってました」
 敷島:「俺が議員さんよりいい車に乗っちゃダメだよ」
 シンディ:「勝又先生も本来なら、ハイヤーで移動しても良い御方だと思いますよ。でも、庶民の顰蹙を買わない為にあえて乗らないのだそうです」
 敷島:「でもタクシーだろ?庶民なら、電車かバスで移動しろってんだ」
 シンディ:「まあまあ。その庶民の乗り物を武器に使用した社長は、それ以上口出ししない方がよろしいかと思います」
 敷島:「ブッ!」

 敷島、シンディの思わぬツッコミにお茶を噴き出した。

 敷島:「今度はリムジンで特攻してやらぁ……」
 シンディ:「エアポートリムジンですか?」
 敷島:「そっちじゃない!……とにかく、クールトウキョウの成功の為に、あいにくと武力を持ったロボット達も稼働させないと行けないかもしれないってことだ」
 シンディ:「KR団や、それの派生組織から全て崩壊したはずですけど?」
 敷島:「俺が引いた御神籤が本当だとしたら、今年中に第2、第3のKR団が現れるってよ」
 シンディ:「はあ……。大吉を引いた私が全面的に協力しますよ。姉さんは何を引いたんですか?」
 敷島:「大凶だよ」
 シンディ:「は?」
 敷島:「俺も初めて見た大凶。凶を引いたヤツの手助けをしたら何とかなるみたいなことが書いてあった」
 シンディ:「それはつまり、姉さんは社長を助けろと……」
 敷島:「お前達、ロボットやロイドの創造主は人間だ。だが、その人間が崇める神ってのは、どうやらギャンブル狂みたいだぞ」
 シンディ:「それで社長、時折パチンコやスロットで稼がれるのですね」
 敷島:「そいつはちょっと違うな」

 敷島は苦笑した。
 その時、社長室のドアが開けられた。

 鏡音リン:「シンディ、ヘアメイク手伝って〜」
 シンディ:「こぉら!何度も言ってるでしょ!?社長室に勝手に入るなって!お客様がいたらどうするの!!」
 敷島:「まあまあ。リンもクールトウキョウの協力者だ。少なくとも、勝っちゃんは文句言わんよ」
 リン:「ごめんなさい……」
 敷島:「リンも午後から仕事だったな」
 リン:「うん。ドラマの撮影の打ち合わせ」
 敷島:「打ち合わせだけなら、特にメイクは要らないと思うが……」
 リン:「メイキング映像を撮るんだって。打ち合わせをしている所も少し撮るんだよ」
 敷島:「製作側も大変だな。まあいいや。シンディ。手伝ってやれ」
 シンディ:「分かりました。ほら、おいで」
 リン:「わぁい」

 シンディとリンが社長室から出るのと入れ違いに、井辺が入って来た。

 井辺:「失礼します。クールトウキョウの打ち合わせの資料、DCJさんにはどうしましょうか?」
 敷島:「そうだな……。今さっき勝っちゃん……勝山先生と打ち合わせをした。その時の話も込みで資料を作り直すから、その時まで待って」
 井辺:「分かりました。ボーカロイドの数も増えてきましたし、うちの事務所も油断できなくなったと思います」
 敷島:「油断はしない方がいいと思うが、あまり心配する必要も無いと思う」
 井辺:「そうですか?」
 敷島:「確かに最近のボカロも量産体制には入ったけど、量産機見た?いかにも量産型って感じで、あんまり個性が見受けられない。アイドルってのは個性を全面的に磨き、それを前面に押し出して売るのがベタな法則だ」
 井辺:「私もそう思います」
 敷島:「だけど最近の量産機は何だか迷走しているような気がしてね」
 井辺:「恐らく、色々な方面にオールマイティに売り出せるようにしたからだと思いますね」
 敷島:「それじやダメだ。汎用機にロクな性能は無い。やっぱり専用機にしないと」
 井辺:「メーカーとしては、量産して売り出さないと売り上げにならないのでしょうね」
 敷島:「だからこそ、うちは少数精鋭で行くつもりだよ」
 井辺:「はい」

 それでも、各ボカロにマネージャーが付くほどまでには売れるようになった。
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“戦う社長の物語” 「敷島エージェンシーの仕事始め」 3

2018-02-04 10:14:15 | アンドロイドマスターシリーズ
[1月4日09:00.天候:晴 東京都江東区豊洲 敷島エージェンシー]

 敷島:「えー、皆さん、明けましておめでとうございます」

 始業時刻になり、朝礼が始まる。

 敷島:「それぞれ年末年始を過ごしたかと思いますが、今日の仕事始めからまた頑張りましょう」

 尚、アリスが研究主任を務めるアメリカ資本のデイライト・コーポレーションでは朝礼はやらないそうだ。
 但し、完全に日本式の運営を行っている科学館にあっては朝礼をしているとのこと。
 科学館は日本法人デイライト・コーポレーション・ジャパンの直営で、アメリカ本社は直に関わっていないため。

 篠里:「じゃあ、ミク。そろそろテレビ局に行くぞ」
 初音ミク:「はい。たかお社長、行ってきます」
 敷島:「ああ、気をつけて」
 MEIKO:「ジャーマネ!私の予備バッテリーどこへやったのよ!?」
 徳森:「え……ええと、確か向こうの棚にぃ……」
 MEIKO:「無いからどこって言ってんのよっ!」

 売れっ子アイドル、マネージャーに当たるの図。

 敷島:「騒がしいぞ、MEIKO。予備バッテリーなら、今装着してるだろ」
 MEIKO:「あら、ほんと」
 敷島:「今朝来たら、お前だけケーブル外れててメインバッテリーがゼロに成りかかってさ。お前の仕事は午後からだから、急いで充電すれば大丈夫だろうと思ったんだが、一応念の為、やっぱり予備バッテリーに交換しておいた」
 MEIKO:「ジャーマネ!ケーブル外れてたって、どういうこと!?」
 徳森:「ぼ、ほぼ、僕はちゃんと取り付けたよぉ……」
 敷島:「徳森君、確認はしっかりと行うように。いいね?ロイドにとって、バッテリーは心臓のようなものだ。どんなに人工知能が優秀でも、原動力が無かったらただのお人形さんだ」
 MEIKO:「そうよ。危うくドールになる所だったじゃないの!」
 徳森:「ご、ごご、ごめんなさい……」
 MEIKO:「分かったら、さっさと予備バッテリーからメインバッテリーに交換してちょうだい!」
 徳森:「ぼ、ぼぼ、僕が?」
 MEIKO:「ほら、早くぅ……」

 MEIKO、赤い上着を脱いで白い背中を見せる。

 敷島:「徳森君、バッテリーの交換もボーカロイドマネージャーの業務だぞ?」
 徳森:「は、ははは、はいーっ!」

 徳森とMEIKOは奥の部屋に向かった。

 敷島:「MEIKOのヤツ、絶対遊んでるな」
 シンディ:「さすがはボーカロイドの最古参ですね。いいんですか?徳森さんみたいな人が、あんなボカロの大御所みたいなヤツのマネージャーで」
 敷島:「MEIKO自身、自分でスケジュール管理はできるし、徳森君もいい勉強になるだろう」
 シンディ:「四季エンタープライズから来た人ですよね。もう既に何人ものアイドルから嫌がられて、ついにここに流れて来たとありますわ」
 敷島:「人間のアイドルの方が、扱い難しいからね」

 敷島も何度か四季エンタープライズに行ったことがあり、そこで人間のアイドルと面談もしたことがある。
 そこで思ったのは、自分には人間のアイドルの扱いは無理だということである。

 シンディ:「それにしても、まさかボーカロイド達がここまで売れるとは思いもしませんでした。私がまだ前期型で活動していた頃は、ただのロボット研究の一環に過ぎなかったはずなのに……」
 敷島:「うちの親戚が芸能事務所やってて良かったよ。試しに見よう見まねでプロデュースしてみたら、案外上手くいった。それだけのことさ」

 シンディは敷島にコーヒーを入れた。

 シンディ:「社長の御予定は、10時から都議会議員の勝又先生がこちらに来られます。14時からは警視庁でロボットテロ対策会議です」
 敷島:「ま、仕事始めの俺の予定はこんなもんだ。勝っちゃんも若手議員だから、向こうから挨拶に来られる側ではなく、こちら側から行く方か……」

 敷島はズズズとコーヒーを啜った。

 敷島:「ロボットテロ対策会議にお前が出るとは、凄い皮肉だな。さすがは皮肉大好き鷲田警視だ」

 シンディの前期型はロボットテロを起こす方だった。
 後期型の今は鎮静化させる方であるが。

 シンディ:「これも贖罪の1つだと思えば、何てことありません」
 敷島:「そうか」

[同日10:00.天候:晴 豊洲アルカディアビルB2F車寄せ→18F敷島エージェンシー]

 勝又が到着したので、秘書のシンディが迎えに行く。
 若手議員くらいだとまだ専用車は無い為、タクシーで来たようだ。
 他のフロアに入居している企業の役員が出入りするのだろう。
 それらの高級車に挟まれるようにして、東京無線の緑のタクシーが止まっていた。

 勝山:「おはようございます!」
 秘書:「おはようございます」
 シンディ:「おはようございます。この度はお疲れさまです。すぐにご案内致します」

 エレベーターのドアが開く。
 これからどこかに出かけるのだろう。
 車寄せに高級車を待たせている役員達が降りて来た。
 敷島と比べれば全然年配だ。
 一緒に降りて来た女性秘書は、もちろん人間である。
 それは勝山が連れている男性秘書も同じだ。

 勝又:「敷島社長はお元気ですか?」

 エレベーターに乗り込んでから、勝山が話し掛けて来た。

 シンディ:「はい。相変わらずです」
 勝又:「今日は第二秘書のあなたが?」
 シンディ:「はい。第一秘書の姉は今日、オーバーホール中です。……ので、私めが本日務めております」
 勝又:「そうですか」

 勝又は敷島とは大学の同級生である。

 勝又:「元々はあなたが専属秘書だったんですよね」
 シンディ:「はい。姉が『覚醒』したので、私は代理に回ることになりました」
 勝又:「覚醒?」

 高層用エレベーターは低層用または貨物用エレベーターよりもスピードが速い。
 途中で止まらなければ、あっという間に着く。

 敷島:「よぉ〜、勝っちゃん」
 勝又:「敷島社長、明けましておめでとうございます!」
 敷島:「お、おめでとうございます!……いやいや、そんな堅苦しくしなくても……。ま、今年もよろしくお願いしたいのは、こっちも同じだからさ」
 勝又:「ぜひ!」
 敷島:「ままま、どうぞ掛けて」

 敷島達、ソファに座る。

 敷島:「外は寒かったでしょう。何か温かい物でも出そうね。コーヒーがいい?それとも紅茶?」
 勝又:「いえいえ、そんな、お構いなく」
 敷島:「『クールトウキョウ』についての話でしょ?ゆっくりしようよ。何だったら、『メイドロイド七海プロデュース、オリジナル紅ヒーブレンド』なんてのもあるよ?」
 勝又:「それ、嫌な客撃退用だろ?」

 尚、実際にそれにチャレンジした者がいたかどうかは【お察しください】。
 因みに七海がいたことのある東北工科大学または東京都心大学では、過去に被害が発生したもよう。
コメント (5)
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