[1月4日11:00.天候:晴 東京都江東区豊洲 敷島エージェンシー]
シンディ:「失礼致します。車寄せにお車が到着しました」
シンディが社長室に入って来る。
敷島:「おっ、了解。すっかり話し込んじゃったね」
勝又:「確かに。それじゃ、クールトウキョウのプロジェクトはよろしくお願いしますよ」
敷島:「承知。勝山先生のお手並みを拝見と行きますよ。シンディ、車寄せまで送ってあげて」
シンディ:「かしこまりました」
敷島はエレベーターホールまで見送った。
シンディは一緒にエレベーターに乗る。
勝又:「敷島社長の御協力には頭が下がります」
シンディ:「社長には東京都に貸しがあるので、都議の先生には頭が上がらないのです」
その割にはフレンドリーなのは、大学の同級生だからか。
勝又:「貸し?」
シンディ:「『東京決戦』の時に都営バスを無断拝借して、敵ロボット達の集団に突っ込んだことです。それでそのバス、全損させてしまったので」
秘書:「乗員乗客が全員避難した後、無人となっていたバスですよ、先生」
勝又:「ああ、そうだったのか。別に非常時だったわけだし、それでその事件を解決する糸口になったわけだし、何年か後、その全損させたバスを新車で弁償したんだろ?だったらいいんじゃないか」
秘書:「特に交通局から訴訟などの話はありません」
勝又:「というわけだから、もう時効だよ。ま、それで協力してくれるのはありがたいけど」
エレベーターがB2F車寄せに到着する。
シンディ:「タクシーで宜しかったのですか?ハイヤーの手配なども……」
勝又:「いえいえ、これでいいんです」
秘書:「『庶民の味方』たる無所属の若手議員がハイヤーなどに乗っていては、都民から顰蹙を買います。先生がハイヤーにお乗りになるのは、国選に選出されてから」
シンディ:「うちの社長も似たようなこと言って、ハイヤーに乗りたがらないのです。本社からは乗るように指示されているのですが……」
勝又:「それは指示に従うべきだと思いますよ。民間企業の経営者と、テロと戦う正義の味方の二足の草鞋を履いているんですから、別に顰蹙を買うことは無いと思いますね」
シンディ:「ありがとうございます」
車寄せに止まっているのは、黒塗りのタクシーである。
敷島エージェンシーが呼んだこともあって、タクシー会社は敷島が出勤の時に乗った所とは違う。
勝又:「その右手に仕込まれた光線銃が、正義の為に使われることを望みますよ」
タクシーに乗り込んで、窓を開けた勝山がそう言った。
だが、シンディは笑みを浮かべてこう答えた。
シンディ:「敷島社長の望みは違います」
勝又:「違う?」
シンディ:「1度も使わずに、この右手が廃棄処分になることを望んでいるのです」
勝又:「こりゃ負けた」
タクシーが発進する。
シンディは深々とお辞儀をしてそのタクシーを見送った後、再び18Fに戻った。
敷島:「お帰り。ちゃんとお見送りできた?」
シンディ:「はい。やはり社長は、ハイヤーに乗られるべきだと勝又先生も仰ってました」
敷島:「俺が議員さんよりいい車に乗っちゃダメだよ」
シンディ:「勝又先生も本来なら、ハイヤーで移動しても良い御方だと思いますよ。でも、庶民の顰蹙を買わない為にあえて乗らないのだそうです」
敷島:「でもタクシーだろ?庶民なら、電車かバスで移動しろってんだ」
シンディ:「まあまあ。その庶民の乗り物を武器に使用した社長は、それ以上口出ししない方がよろしいかと思います」
敷島:「ブッ!」
敷島、シンディの思わぬツッコミにお茶を噴き出した。
敷島:「今度はリムジンで特攻してやらぁ……」
シンディ:「エアポートリムジンですか?」
敷島:「そっちじゃない!……とにかく、クールトウキョウの成功の為に、あいにくと武力を持ったロボット達も稼働させないと行けないかもしれないってことだ」
シンディ:「KR団や、それの派生組織から全て崩壊したはずですけど?」
敷島:「俺が引いた御神籤が本当だとしたら、今年中に第2、第3のKR団が現れるってよ」
シンディ:「はあ……。大吉を引いた私が全面的に協力しますよ。姉さんは何を引いたんですか?」
敷島:「大凶だよ」
シンディ:「は?」
敷島:「俺も初めて見た大凶。凶を引いたヤツの手助けをしたら何とかなるみたいなことが書いてあった」
シンディ:「それはつまり、姉さんは社長を助けろと……」
敷島:「お前達、ロボットやロイドの創造主は人間だ。だが、その人間が崇める神ってのは、どうやらギャンブル狂みたいだぞ」
シンディ:「それで社長、時折パチンコやスロットで稼がれるのですね」
敷島:「そいつはちょっと違うな」
敷島は苦笑した。
その時、社長室のドアが開けられた。
鏡音リン:「シンディ、ヘアメイク手伝って〜」
シンディ:「こぉら!何度も言ってるでしょ!?社長室に勝手に入るなって!お客様がいたらどうするの!!」
敷島:「まあまあ。リンもクールトウキョウの協力者だ。少なくとも、勝っちゃんは文句言わんよ」
リン:「ごめんなさい……」
敷島:「リンも午後から仕事だったな」
リン:「うん。ドラマの撮影の打ち合わせ」
敷島:「打ち合わせだけなら、特にメイクは要らないと思うが……」
リン:「メイキング映像を撮るんだって。打ち合わせをしている所も少し撮るんだよ」
敷島:「製作側も大変だな。まあいいや。シンディ。手伝ってやれ」
シンディ:「分かりました。ほら、おいで」
リン:「わぁい」
シンディとリンが社長室から出るのと入れ違いに、井辺が入って来た。
井辺:「失礼します。クールトウキョウの打ち合わせの資料、DCJさんにはどうしましょうか?」
敷島:「そうだな……。今さっき勝っちゃん……勝山先生と打ち合わせをした。その時の話も込みで資料を作り直すから、その時まで待って」
井辺:「分かりました。ボーカロイドの数も増えてきましたし、うちの事務所も油断できなくなったと思います」
敷島:「油断はしない方がいいと思うが、あまり心配する必要も無いと思う」
井辺:「そうですか?」
敷島:「確かに最近のボカロも量産体制には入ったけど、量産機見た?いかにも量産型って感じで、あんまり個性が見受けられない。アイドルってのは個性を全面的に磨き、それを前面に押し出して売るのがベタな法則だ」
井辺:「私もそう思います」
敷島:「だけど最近の量産機は何だか迷走しているような気がしてね」
井辺:「恐らく、色々な方面にオールマイティに売り出せるようにしたからだと思いますね」
敷島:「それじやダメだ。汎用機にロクな性能は無い。やっぱり専用機にしないと」
井辺:「メーカーとしては、量産して売り出さないと売り上げにならないのでしょうね」
敷島:「だからこそ、うちは少数精鋭で行くつもりだよ」
井辺:「はい」
それでも、各ボカロにマネージャーが付くほどまでには売れるようになった。
シンディ:「失礼致します。車寄せにお車が到着しました」
シンディが社長室に入って来る。
敷島:「おっ、了解。すっかり話し込んじゃったね」
勝又:「確かに。それじゃ、クールトウキョウのプロジェクトはよろしくお願いしますよ」
敷島:「承知。勝山先生のお手並みを拝見と行きますよ。シンディ、車寄せまで送ってあげて」
シンディ:「かしこまりました」
敷島はエレベーターホールまで見送った。
シンディは一緒にエレベーターに乗る。
勝又:「敷島社長の御協力には頭が下がります」
シンディ:「社長には東京都に貸しがあるので、都議の先生には頭が上がらないのです」
その割にはフレンドリーなのは、大学の同級生だからか。
勝又:「貸し?」
シンディ:「『東京決戦』の時に都営バスを無断拝借して、敵ロボット達の集団に突っ込んだことです。それでそのバス、全損させてしまったので」
秘書:「乗員乗客が全員避難した後、無人となっていたバスですよ、先生」
勝又:「ああ、そうだったのか。別に非常時だったわけだし、それでその事件を解決する糸口になったわけだし、何年か後、その全損させたバスを新車で弁償したんだろ?だったらいいんじゃないか」
秘書:「特に交通局から訴訟などの話はありません」
勝又:「というわけだから、もう時効だよ。ま、それで協力してくれるのはありがたいけど」
エレベーターがB2F車寄せに到着する。
シンディ:「タクシーで宜しかったのですか?ハイヤーの手配なども……」
勝又:「いえいえ、これでいいんです」
秘書:「『庶民の味方』たる無所属の若手議員がハイヤーなどに乗っていては、都民から顰蹙を買います。先生がハイヤーにお乗りになるのは、国選に選出されてから」
シンディ:「うちの社長も似たようなこと言って、ハイヤーに乗りたがらないのです。本社からは乗るように指示されているのですが……」
勝又:「それは指示に従うべきだと思いますよ。民間企業の経営者と、テロと戦う正義の味方の二足の草鞋を履いているんですから、別に顰蹙を買うことは無いと思いますね」
シンディ:「ありがとうございます」
車寄せに止まっているのは、黒塗りのタクシーである。
敷島エージェンシーが呼んだこともあって、タクシー会社は敷島が出勤の時に乗った所とは違う。
勝又:「その右手に仕込まれた光線銃が、正義の為に使われることを望みますよ」
タクシーに乗り込んで、窓を開けた勝山がそう言った。
だが、シンディは笑みを浮かべてこう答えた。
シンディ:「敷島社長の望みは違います」
勝又:「違う?」
シンディ:「1度も使わずに、この右手が廃棄処分になることを望んでいるのです」
勝又:「こりゃ負けた」
タクシーが発進する。
シンディは深々とお辞儀をしてそのタクシーを見送った後、再び18Fに戻った。
敷島:「お帰り。ちゃんとお見送りできた?」
シンディ:「はい。やはり社長は、ハイヤーに乗られるべきだと勝又先生も仰ってました」
敷島:「俺が議員さんよりいい車に乗っちゃダメだよ」
シンディ:「勝又先生も本来なら、ハイヤーで移動しても良い御方だと思いますよ。でも、庶民の顰蹙を買わない為にあえて乗らないのだそうです」
敷島:「でもタクシーだろ?庶民なら、電車かバスで移動しろってんだ」
シンディ:「まあまあ。その庶民の乗り物を武器に使用した社長は、それ以上口出ししない方がよろしいかと思います」
敷島:「ブッ!」
敷島、シンディの思わぬツッコミにお茶を噴き出した。
敷島:「今度はリムジンで特攻してやらぁ……」
シンディ:「エアポートリムジンですか?」
敷島:「そっちじゃない!……とにかく、クールトウキョウの成功の為に、あいにくと武力を持ったロボット達も稼働させないと行けないかもしれないってことだ」
シンディ:「KR団や、それの派生組織から全て崩壊したはずですけど?」
敷島:「俺が引いた御神籤が本当だとしたら、今年中に第2、第3のKR団が現れるってよ」
シンディ:「はあ……。大吉を引いた私が全面的に協力しますよ。姉さんは何を引いたんですか?」
敷島:「大凶だよ」
シンディ:「は?」
敷島:「俺も初めて見た大凶。凶を引いたヤツの手助けをしたら何とかなるみたいなことが書いてあった」
シンディ:「それはつまり、姉さんは社長を助けろと……」
敷島:「お前達、ロボットやロイドの創造主は人間だ。だが、その人間が崇める神ってのは、どうやらギャンブル狂みたいだぞ」
シンディ:「それで社長、時折パチンコやスロットで稼がれるのですね」
敷島:「そいつはちょっと違うな」
敷島は苦笑した。
その時、社長室のドアが開けられた。
鏡音リン:「シンディ、ヘアメイク手伝って〜」
シンディ:「こぉら!何度も言ってるでしょ!?社長室に勝手に入るなって!お客様がいたらどうするの!!」
敷島:「まあまあ。リンもクールトウキョウの協力者だ。少なくとも、勝っちゃんは文句言わんよ」
リン:「ごめんなさい……」
敷島:「リンも午後から仕事だったな」
リン:「うん。ドラマの撮影の打ち合わせ」
敷島:「打ち合わせだけなら、特にメイクは要らないと思うが……」
リン:「メイキング映像を撮るんだって。打ち合わせをしている所も少し撮るんだよ」
敷島:「製作側も大変だな。まあいいや。シンディ。手伝ってやれ」
シンディ:「分かりました。ほら、おいで」
リン:「わぁい」
シンディとリンが社長室から出るのと入れ違いに、井辺が入って来た。
井辺:「失礼します。クールトウキョウの打ち合わせの資料、DCJさんにはどうしましょうか?」
敷島:「そうだな……。今さっき勝っちゃん……勝山先生と打ち合わせをした。その時の話も込みで資料を作り直すから、その時まで待って」
井辺:「分かりました。ボーカロイドの数も増えてきましたし、うちの事務所も油断できなくなったと思います」
敷島:「油断はしない方がいいと思うが、あまり心配する必要も無いと思う」
井辺:「そうですか?」
敷島:「確かに最近のボカロも量産体制には入ったけど、量産機見た?いかにも量産型って感じで、あんまり個性が見受けられない。アイドルってのは個性を全面的に磨き、それを前面に押し出して売るのがベタな法則だ」
井辺:「私もそう思います」
敷島:「だけど最近の量産機は何だか迷走しているような気がしてね」
井辺:「恐らく、色々な方面にオールマイティに売り出せるようにしたからだと思いますね」
敷島:「それじやダメだ。汎用機にロクな性能は無い。やっぱり専用機にしないと」
井辺:「メーカーとしては、量産して売り出さないと売り上げにならないのでしょうね」
敷島:「だからこそ、うちは少数精鋭で行くつもりだよ」
井辺:「はい」
それでも、各ボカロにマネージャーが付くほどまでには売れるようになった。