報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“戦う社長の物語” 「雪からの脱出」

2018-02-25 19:03:25 | アンドロイドマスターシリーズ
[1月8日10:00.天候:晴 宮城県仙台市青葉区国分町]

 敷島:「えっ、いいの?延泊代半額で?」
 従業員:「今回の場合は止むに止まれぬ事情でしたので、本社からの通達です」
 敷島:「そりゃありがたい。……支払い、カードでいい?」
 従業員:「はい、ありがとうございます。それでは、こちらに暗証番号を……」

 敷島がチェックアウトすると、未だに除雪の進んでいない公道の上にシンディが待っていた。

 シンディ:「社長、おはようございます」
 敷島:「シンディ!お前、どうやって来たんだ?」
 シンディ:「DCJのヘリコプターに乗せてもらったのです。ヘリコプターは東北工科大学に着陸しましたので、そちらまでお連れします」
 敷島:「そうか。あっ、そうだ」
 シンディ:「?」

 敷島、ホテル近くのコインパーキングへ向かう。
 まだまだ雪に阻まれている箇所が多々あるが、そこはシンディが除雪して行く。

 敷島:「いやあ、悪いね」
 シンディ:「いえ。何でもお申し付けください」

 コインパーキングに行くと、未だに車が雪に埋もれていた。

 敷島:「平賀先生の車はあれだ」
 シンディ:「かしこまりました」

 シンディは雪をかき分け、平賀のプリウスをそこから掘り出した。

 敷島:「うわ……精算機、ブッ壊れてやがる。これじゃ、料金ナンボか分からんよ」
 シンディ:「いいんじゃないんですか。そのまま持って行けば……」
 敷島:「そういうわけには行かんよ。取りあえず1日2000円分置いて行こう。東京より高くは無いだろう」
 シンディ:「はあ……」
 敷島:「シンディ、俺とこの車抱えて飛べるか?」
 シンディ:「お任せください。1番いいのは、社長が車の中に乗ってくださると助かるのですが……」
 敷島:「分かった」

 敷島、ポケットの中からキーを出してロックを解除した。

 シンディ:「……平賀博士の車だから、社長がキーをお持ちであるはすがありませんねと言いたかったのですが?」
 敷島:「いや、もし車が動かせたら動かしておいてくれって頼まれてたの」

 キーはその時に借りた。
 敷島は車に乗り込んだ。
 シンディは車を持ち上げ、エミリーと同じく超小型ジェットエンジンを起動させて上空に飛び上がった。
 あとは車の下に潜り込み、そのまま両手に抱えて飛ぶ。

 敷島:「うっひゃあーっ!絶景ーっ!」
 シンディ:「寒くないですか?」
 敷島:「いや、大丈夫!ってか、クソ速ぇーっ!!」
 シンディ:「あっという間に着いてしまいますよ!」

[同日10:20.天候:晴 宮城県仙台市青葉区 東北工科大学]

 大学構内は街中と打って変わって、除雪が進んでいた。

 敷島:「車は職員駐車場に置いておこう」
 シンディ:「はい」

 敷島が車から降りると、ヘリから鳥柴が降りて来た。

 鳥柴:「お迎えに参りました。すぐに参りましょう」
 敷島:「ああ。ちょっと待って」

 敷島はシンディに、南里志郎記念館の警備ロボット達を呼ぶように言った。
 ぞろぞろとやってきたのは、エミリーを救助したバージョン4.0達。

 敷島:「シンディ、こいつらはお前の姉を救助した立役者達だ。アルエットの通信性能が良かったとはいえ、それを上手く受信し、命令を忠実にこなしたことをどう思う?」
 シンディ:「素晴らしいことだと思います」
 敷島:「それではシンディ、こいつらに『大慈大悲』を」
 シンディ:「かしこまりました」

 シンディ、整列するバージョン4.0達の頭部にキスをした。

 シンディ:「エミリーを助けてくれてありがとう」
 バージョン4.0-4:プシューッ
 バージョン4.0-48:
 バージョン4.0-108:「ナ、何ト恐レ多イ……!」
 バージョン4.0-398:「シ、幸セデス……
 バージョン4.0-457:「アッシハムシロ、鞭デ引ッ叩イテクレル方ガ御褒美デス」
 シンディ:「調子に乗んなっ!」

 ガンッ!(457号機に顔面パンチ食らわせるシンディ)

 敷島:「あ゛!別の意味で煙が……」
 鳥柴:(本当に『女王様』だぁ……)

 敷島達がヘリに乗り込むと、すぐに離陸した。

 敷島:「どこもかしこも雪景色だな」
 鳥柴:「首都圏の方はまだ積雪量も少なく、除雪も進んでいます」
 敷島:「つっても、1メートルは積もったんだろ?東京でそれくらいだと……」
 鳥柴:「東京は2メートル、埼玉が3メートルですね」
 敷島:「今年は暖冬で雪が少ないとか言ったヤツ、後でシンディに狙撃させていいですか?」
 鳥柴:「ダメです!」

[同日13:00.天候:晴 千葉県成田市 DCJ成田営業所]

 敷島:「ここに来るのも久しぶりだなぁ……」
 鳥柴:「是非ゆっくりして行ってください」
 敷島:「いやいや、会社が心配だから、エミリーの様子を見たら帰るよ」

 ヘリが営業所敷地内のヘリポートに着陸する。
 敷島達はヘリから降りた。
 よく見るとエントランスの看板に、来年度から成田支社へと格上げされることが書かれている。

 敷島:「売り上げいいの?」
 鳥柴:「おかげさまで」
 敷島:「うちも実質的には四季エンタープライズの豊洲支社みたいなものだから、うかうかしてはいられないな」
 鳥柴:「業種が違いますよ」

 地下にある技術開発室に入ると、そこに平賀がいた。

 敷島:「平賀先生!」
 平賀:「おー、敷島さん。雪から脱出できましたか」
 敷島:「おかげさまで」
 平賀:「カプセルホテルやサウナの料金、後でお支払いします」
 敷島:「車の方も回収して、大学の駐車場に移動させておきましたから」
 平賀:「ええっ?それじゃ、後で駐車場代の立替分も払いますよ」
 敷島:「それより、エミリーはどのくらいで直りますか?」
 平賀:「約1週間です」
 敷島:「1週間!そんなに?」
 平賀:「頭部以外の損傷が結構大きかったものでね。難しい所は自分がやりまして、後はDCJの社員がやれば修理費用も安く済みますよ」
 敷島:「先生が全て直すんじゃないんですか?」
 平賀:「大丈夫ですよ。難しい所は自分がやりますから。あとは任せてください」

 敷島は部屋の外に出た。

 シンディ:「姉さん、あんなになってかわいそう……」
 敷島:「だが、あの雪の中から回収できただけでも奇跡だ。お前もバージョン達に鞭振るってばっかりいないで、たまには役に立てたら褒めてやれよ」
 シンディ:「はあ……」
 敷島:「とにかく、エミリーが直るまで、しばらくまた俺の秘書をやってもらうことになるな」
 シンディ:「はい、お任せください」
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“戦う社長の物語” 「デイライト・コーポレーション」

2018-02-25 10:21:55 | アンドロイドマスターシリーズ
[1月7日15:00.天候:晴 宮城県仙台市青葉区国分町]

 敷島:「んん……」

 敷島はサウナが併設されているカプセルホテルに平賀と泊っている。
 サウナの仮眠室で寝ていたのだが、やっと目が覚めた。

 敷島:「体が痛ェ……」

 午前中、ずっと雪のトンネルを掘っていたからだろう。
 その痛む体に鞭打って起き上がり、暗い仮眠室を出た。

 敷島:「ん?」

 外が何やら騒がしい。
 敷島はエレベーターに乗って1階に下りた。

 従業員:「あ、お客様!」
 敷島:「何かあったんですか?」
 従業員:「救助隊が来たんですよ!」
 敷島:「今頃ですか」

 敷島はついそれが自衛隊だと思っていた。
 だが、どうやら違った。
 着ている服装が自衛隊のそれとは違う。
 かといって、米軍のそれとも思えなかった。
 だが、見覚えはある。
 1人が気づいて、敷島の所にやってきた。
 そして、被っていたフルフェイスのヘルメットを取る。

 鳥柴:「DCJ成田営業所の鳥柴です」

 アメリカ編ではさんざんっぱらDCJがアドバイザーになったが、ピンチの時には駆け付ける体制になっているというのが何ともニクい。
 鳥柴優菜は表向きは成田営業所の営業主任。
 だが、裏の顔は御覧の通りである。

 敷島:「よくここが分かったな?」
 鳥柴:「はいっ!平賀執行役員の連絡で飛んで来ました!」
 敷島:「平賀先生が?」

 平賀はDCJの外部執行役員という顔も持つ。

 敷島:「救助に来てくれたのはありがたいが、まだエミリーが見つかってないんだ」
 鳥柴:「そうなんですか?でも、さっきヘリの中に運びましたよ?」
 敷島:「な、何だって!?」
 鳥柴:「執行役員の話ですと、バージョン4.0の小集団が現れて、エミリーを発見したということです」
 敷島:「何だ、バージョン達、結構役に立つじゃないか。随分贅沢なことを言う『女王様』方だ」
 鳥柴:「どこの世界でも、『女王様』というのはワガママなものですから」
 敷島:「それもそうだな」
 鳥柴:「敷島社長も早くヘリコプターへ」
 敷島:「いや、俺は1番後でいい」
 鳥柴:「えっ?」
 敷島:「体が筋肉痛でしょうがないんだ。もう一っ風呂浴びてからにするよ」
 鳥柴:「でもそれですと、一旦燃料補給に戻らないといけないので、次の救助は翌日になってしまいますが……」
 敷島:「明日でいいよ。ホテルやサウナ代は俺が払っておく。……と、平賀先生に伝えておいてくれ」
 鳥柴:「分かりました」
 敷島:「エミリー、かなり損傷してたろ?」
 鳥柴:「人間だったら、絶対死亡しているレベルです」
 敷島:「だろうな。修理はどこでやる?東北工科大学?」
 鳥柴:「いえ、あそこはまだ雪深く、ヘリが離着陸できないので、成田営業所まで持って行きます」
 敷島:「成田は大丈夫だったのか?」
 鳥柴:「はい。成田の積雪は1メートルで済みました」
 敷島:「それでも1メートルか。改めて凄い雪だったんだな」
 鳥柴:「そうですね」
 DCJ社員:「鳥柴主任!そろそろ離陸したいのですが、よろしいですか!?」
 鳥柴:「あ、はい。それじゃ敷島社長、エミリーはお預かりして行きます」
 敷島:「ああ、頼むよ」
 鳥柴:「明日またお迎えに参ります」
 敷島:「わざわざ悪いな」

 こうしてエミリー達や要救助者を乗せたヘリは飛び去って行った。

 敷島:「何だ、ほとんどの客が出て行ったのか?」
 従業員:「特にカプセル利用者は出張のお客様が多いですから」
 敷島:「そう言われれば、俺もそうだ。会社が心配だから、ちょっと電話してこよう」

 こう楽観的なのは、雪に閉ざされてもインフラが止まらなかったからだろう。
 停電など1回も無かった。

[同日同時刻 天候:晴 宮城県仙台市青葉区上空 DCJヘリコプター機内]

 平賀:「なに?敷島さんはもう一泊して行くって?」
 鳥柴:「はい」
 平賀:「敷島さんらしいや。まあ、それに……」

 平賀はバラバラ死体のようになったエミリーを見た。

 平賀:「さすがに今の敷島さんに、これは見せられねぇ……」
 鳥柴:「これでも修理可能とは、さすがは執行役員です」
 平賀:「頭部が無事なら、あとはどうにもでもなるさ」

 平賀は肩を竦めた。

 平賀:「それより、一連の黒いロボットのことだが……。そっちの調査で何か分かったか?」
 鳥柴:「はい。色々と輸送ルートは細工されていましたが、やはり出所はアメリカの方ではないかと……」
 平賀:「それが日本に対して、どういう嫌がらせだ?」
 鳥柴:「それはまだ調査の段階です。ただ……ニューヨークでは関知していないようです」
 平賀:「どういうことだ?」
 鳥柴:「研究畑が勝手にやったことだ、ということでしょう」
 平賀:「とんでもないな。北海道の黒いロボット、そっちでサンプルで確保したんだろ?」
 鳥柴:「ええ。その資料はアメリカにも流しました」
 平賀:「それだよ、きっと。おおかた、日本法人が独立を企てているという噂を聞きつけて嫌がらせでもさせたんだろ」
 鳥柴:「そんな、『顕正会員のブログを発見次第、放火・炎上させる武闘派法華講員』みたいなマネをしますか?」
 平賀:「奴らなら平気でやりかねん!」

[同日17:00.天候:晴 宮城県仙台市青葉区国分町]

 マッサージ師:「少しずつ雪も融け始めてますし、少しは安心ですね」
 敷島:「いや、全く」

 サウナ内のマッサージコーナーで、ボディケアを受ける敷島。

 敷島:「うー……そこそこ……」
 マッサージ師:「この辺りですか?この筋ですか?」
 敷島:「そうそう」
 マッサージ師:「だいぶお疲れですねぇ」
 敷島:「雪掘り過ぎた……」
 マッサージ師:「さっきの救助隊が緊急物資を持って来てくれましたから、まだしばらくは持ちそうですよ」
 敷島:「それより早く、交通機関が復旧するといいねぇ……」

 休憩コーナーのテレビでは、天気はしばらく晴れが続くので雪は融ける一方だろうという天気予報が流れていた。
 また、市内各地でも、ようやく除雪作業が本格化してきたことがニュースで報じられていた。
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