「虚庵居士のお遊び」

和歌・エッセー・フォート 心のときめきを

「えのころぐさ」

2006-10-15 19:53:09 | 和歌
  
 空き地の「えのころぐさ」が、風に吹き荒ばれていた。

 秋風が身にしむこの頃は、久しく音沙汰ない友人のことが気にかかる。「去る者は日々に疎し」とは、人口に膾炙された言葉であるが、元をたどるとこの詩に到達する。
Far from eyes, far from heart. 交際が疎遠になり、やがて途絶えてゆく交友の感慨には、洋の東西を問わず、通じるものがあるようだ。


            去者日以疎  漢古詩(作者不明)

            去者日以疎   来者日以親
            出郭門直視   但見邱与墳
            松柏摧為薪   古墓犂為田
            白楊多悲風   蕭蕭愁殺人
            思還故里閭   欲帰道無因







             去る者は 日に日に疎く        

          来たる人とは 日毎に親しむ     

          街をいでて 彼方を見やれば    

          目に入るは ただ盛り土の     

                  墳邱なるかな          


          古き塚は 犂かれて田となり

          松柏は 薪に焚かれぬ

          はこ楊 秋風すさべば

          その葉音 我に代わりて

                  むせび泣くかも



          ああ遥か故里想えど たどる道の

          因るべも無くば如何に還えらむ