陽射しが西に傾いた頃、草原に素晴らしい情景を見た。
名も知らぬ雑草が、枯れて立ち尽くす姿であるが、種子の毛わたが苞からはみ出して、逆光に照らされて光る様は、印象的であった。やがてこの毛わたは、秋風に吹かれて苞を離れ、何処かへ着地して新たな生命が芽吹くことだろう。普段は何気なく見過ごしてきた「くさはら」であるが、そこには自然の持つ命の育みの原点が、斯くも美しい情景を作り出していて、荘厳ですらあった。
夜遅く帰宅して、せめて草の名前でも調べたいと時間を費やしたが、残念ながらその思いは達せられなかった。移り行く自然の姿を時節に合わせて、取敢えずは「名も知らぬ雑草」と記しておくが、読者の何方かご存知の方が居られたらお教え願いたい。
「くさはらの荘厳」に出会えて感激したが、虚庵居士もこれからの人生で、このような荘厳の時を迎えられるのだろうか。
自らに苞押し広げ毛わた延べて
秋の陽射しに輝く今日かな
くさはらの荘厳の時いままさに
輝く毛わたは飛び立たむとす
ああ あはれ 草だに斯くも知恵こらし
命をつなぐ備えをなしてふ