家内を伴って、信州・蓼科に遊んだ。
毎年この季節になると、蓼科へ紅葉狩りに出掛けるのが愉しみの一つであるが、宿の予約に合わせて、紅葉の進み具合を宿の主に尋ねたら、
「大分色付いて来ました。山葡萄の葉は今が盛りです」
とのご案内であった。
気も漫ろに「うつろ庵」を飛び出して、車を大分走らせてから、肝心のカメラを忘れて来たことに気付いた。カメラに収めると、何時でも後から振り返れるので安心だが、カメラが無いとなると「心のまなこ」にシカと焼き付ける以外にあるまい。久しぶりの蓼科の山は、紅葉には未だ少し早過ぎたが、所々に見られる鮮やかな紅葉と緑葉の対比が、素晴らしかった。
夕暮れになって、標高千七百メートルに位置する宿に到着した。折りしも西の窓には、夕陽が射しこんでいた。重なる遥かな山並みを越えて、御嶽山の山の端に紅蓮の夕陽が落ち込むところであった。稀に見る素晴らしい夕映であった。
紅に燃ゆる夕陽は今まさに
一瞬 煌めき 沈まむとすなり
御嶽の山影黒く深まれば
たなびく浮き雲 輝きわたりぬ
あかねさす光を残して沈みける
夕日の後を眺めつるかな