「虚庵居士のお遊び」

和歌・エッセー・フォート 心のときめきを

「ホトトギス」

2006-10-13 22:52:55 | 和歌

 「うつろ庵」のホトトギスが咲いた。

 ホトトギスは茎にも羽にも毛が生えていて、どう見ても美味しそうには見えないが、どの様な虫であろうか、ホトトギスの葉を好んで食い荒らしてくれる。蓼食う虫も好きずきと言うが・・・。

 鳥の名前ホトトギスが野草に借名されたのは、花の模様が、鳥の斑な羽紋に似ているからだと伝えられている。鳥のホトトギスは、古来多くの詩歌に詠まれて来たが、野草のホトトギスが余り詩歌に詠まれないのは、何故だろう。地味な花ゆえ、この野草の存在が余り知られていない為かも知れない。

 ホトトギスの鳴き声は、「テッペンカケタカ」「特許許可局」或いは「本尊かけたか」「不如帰去」など、聞く者の心の在り様によって、聞こえ方は様々だ。漢字名も、杜鵑・蜀魂・杜宇・不如帰、或いは時鳥・卯月鳥・早苗鳥・子規等など、三千年昔の中国の伝説によるもの、或いは夏を呼ぶ時節の鳥名など、こちらも詠む人のこころ次第だ。

 蜀の望帝・杜宇が死して後、ホトトギスになったとの伝説もあるが、血を吐くような声と聞き、怨みを含んで聞こえるのも、杜宇が心底から蜀へ帰ることを願っていたからだと伝えられている。拙著「千年の友」・熊孺登詩、「湘江夜汎」を参照されたい。






             侘びしげに杜鵑の花たゆたへば
 
             耳に残れる啼声かなしき 



             ホトトギスの花咲きにけり吾庵の 

             虫の集きを共に聞かまし



             ホトトギス鳴きつる方をながむれど 

             姿は見えず想いを残すや