「虚庵居士のお遊び」

和歌・エッセー・フォート 心のときめきを

「印度はまゆう」

2006-07-06 00:07:32 | 和歌


 梅雨が終わりに近づくと、「印度はまゆう」がニギヤカに咲いて、「うつろ庵」はパッと明るくなった。

 花茎がスーッと伸びて、頂に莟が十個ほども付いて次々と咲くので、かなりの期間にわたって愉しませて呉れる。長い首を次第に持ち上げて、清楚な花を咲かせるが、二日目には再び項垂れ始めて、やがて萎れる。「萎れ花」も有りの侭の姿ゆえ、それなりに風情があるが、放置すると「しどけない」雰囲気が、清楚な花のイメージを損なうので、極力早めに萎れ花を摘むことにしている。

 印度はまゆうとの朝の挨拶に行った虚庵夫人が、素っ頓狂な声をあげた。
何事かと訝って行って見たら、一本の花茎が何者かに引き抜かれて、放置されていた。夜中に通りすがりの悪者が、何かの腹いせに引き抜いたものだろう。鬱憤を花にぶつけねば納まらないとは、気の毒な御仁もいるものだ。

 引き抜かれた印度はまゆうは、花器に活けられて「うつろ庵」の住人の一人に加わった。






             顔寄せてささめく乙女ら どっと沸き
 
             笑いくずれぬ 浜木綿の花は 



             たれ抜くや 夜中に印度浜木綿を

             打ち捨て行く人 哀れなるかも 



             拾い来て花器に活ければたまきはる
 
             命とどめて咲きわたるかも