木漏れ日を受けて、白桔梗が凛と咲いていた。
桔梗は、昔から色にもその名をとどめて、「紺桔梗」として知られている。桔梗の紺色が艶と深みがあるのは、ごく僅かではあるが紫が混じっているからであろうか。それに引きかえ、白桔梗は誠に清々しい。白い花びらには殆ど気付かぬほどの、毛脈が透けているが、虚庵居士のカメラの力量では、その表情を写し撮れないのが残念である。
桔梗の蕾を見ると、ごく幼い頃のことが思い出される。子供の頃は無邪気なもので、桔梗の花はトンと目に入らず、遊びの対象は専ら蕾に集中した。人差し指と親指で蕾を摘み、「ポン」と音を立てて割るのが、楽しみだった。
木漏れ日が白い花弁に射し来て大胆な模様を描いているが、その表情は中々粋なものだ。陽を一杯に浴びて咲く桔梗は、それはそれで美しいが、風に揺れながら木漏れ日と戯れる白桔梗には、凛とした中にも知的な茶目っ気が漂っている。
木漏れ日を受けて咲くかも凛として
白きころもに知性を秘めにし
そよ風に吹かれて揺れる白桔梗は
戯れるらし 木漏れ日相手に
木漏れ日に透けるは花弁か薄絹か
脈の見ゆるは乙女にあらずや