薄紫の槿が二つ並んで咲いていた。
先程まで降っていた雨が小降になって、空が急に明るくなった。コウモリを携えて散歩に出たら程なく雨が止んだ。雫を湛えた槿に、パッと陽ざしが射しこんで、誠に爽やかであった。
日本画であれ洋画であれ、絵画の嗜みのある方ならば、花の色に対する優れた感性と、色を表現する適切な色名をご存知で、適切な表現ができるのだろうが、その辺りに疎い虚庵居士は、何時ものことながらシドロモドロになる。色の濃淡や明るさや、それに「紺桔梗」でも触れたが、光線の加減によって色調は随分と変るので、花の色合いを言葉で表現するのは素人には難題である。加えて、写真に写す技量も拙いとあっては、救いようがない。残されたのは、「美しい」と感じる心だけだから、誠にファジーな感覚だけで、何とも頼りない。
間もなく梅雨が明ければ、日本列島は猛暑に包まれて、花々も避暑のシーズンを迎える。
精一杯咲いて儚く散り行く槿と蝉時雨を朋に、暫らくは暑さを耐えねばなるまい。
降る雨を厭いもせずに浴びて咲く
槿は乙女か語らひ止まずも
嬉々としてきらめく雫の槿かも
並び咲く花 雨後の陽ざしに
この後は槿の花と蝉時雨を
朋に忍ばむ猛暑の夏は