夏椿が静かに咲いている。
かつて「うつろ庵」の庭には、数本をまとめ植えして、毎年初夏の花を愉しんだ。三・四メートルほどの背丈まで育ったが、どうしたものか一本が立ち枯れると、後を追って次つぎと枯れて、悔しい思いをした。
夏椿の花は、葉の間から見え隠れする、慎ましやかな咲き方が好ましい。花びらも、容姿の繊細さに加えて、時にはこの写真のように、刷毛でサッと刷いたほどに、ごく薄く紅をさすこともあって、驚かされる。
夏椿を、何時からか我国では「沙羅」とも呼んでいる。双樹の下でお釈迦様が涅槃に入られた「沙羅」は、全く別の樹だが、夏椿を沙羅と呼ぶようになったのには、定かに調べていないが、何か謂れがあるのであろう。
一日花の夏椿には、儚く散りゆく美学をも訓えられる。
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葉に隠れ慎ましやかに咲く花は
たったひと日の 命なるかな
たれに逢う化粧なるらむ頬紅は
乙女の想いを せめてとげばや
白妙のうすぎぬの袖ひそやかに
打ち振りおれば去り難きかな