「虚庵居士のお遊び」

和歌・エッセー・フォート 心のときめきを

「夏椿」

2006-07-03 22:06:01 | 和歌

 夏椿が静かに咲いている。

 かつて「うつろ庵」の庭には、数本をまとめ植えして、毎年初夏の花を愉しんだ。三・四メートルほどの背丈まで育ったが、どうしたものか一本が立ち枯れると、後を追って次つぎと枯れて、悔しい思いをした。

 夏椿の花は、葉の間から見え隠れする、慎ましやかな咲き方が好ましい。花びらも、容姿の繊細さに加えて、時にはこの写真のように、刷毛でサッと刷いたほどに、ごく薄く紅をさすこともあって、驚かされる。

 夏椿を、何時からか我国では「沙羅」とも呼んでいる。双樹の下でお釈迦様が涅槃に入られた「沙羅」は、全く別の樹だが、夏椿を沙羅と呼ぶようになったのには、定かに調べていないが、何か謂れがあるのであろう。

 一日花の夏椿には、儚く散りゆく美学をも訓えられる。






             葉に隠れ慎ましやかに咲く花は
   
             たったひと日の 命なるかな  



             たれに逢う化粧なるらむ頬紅は 
 
             乙女の想いを せめてとげばや   



             白妙のうすぎぬの袖ひそやかに 
 
             打ち振りおれば去り難きかな