「虚庵居士のお遊び」

和歌・エッセー・フォート 心のときめきを

「月見草」

2006-07-30 23:44:08 | 和歌


 蓼科のゴルフ場でも日光黄菅が楽しめるかと期待したが、ゴルフ場で出会えたのは一株だけだった。その代わりと言うわけでもあるまいが、月見草が待って居てくれた。

 月見草といえば、竹下夢二は「待てど暮らせど こぬひとを・・・」と涙の別れを詠った。
太宰治は、富士山と対峙する逞しいこの花と、己の破綻しつつある姿とを胸の内で対比して、「富士には月見草がよく似合う」と書いた。人々は、月見草にそれぞれの思いを抱いているに違いあるまい。

 月見草と慣れ親しんで呼ぶが、花が大きく背丈も一米余の逞しいのは大待宵草、花も背丈も小ぶりな雌待宵草(別名・荒れ地待宵草)、更に待宵草、小待宵草などとかなりの種類があるそうだが、虚庵居士にはどれもが月見草だ。

 虚庵居士の郷里には、諏訪湖にそそぐかなり大きな上川があって、その土手や河川敷には無数の月見草が咲いていた。夕暮れに見る月見草は仄かに浮き立って、せつなくも片恋の乙女を想わせたものだった。






             くれなずむ上川の土手恋しけれ
  
             瀬音も聞こゆる 月見草かも  



             暮れゆけば仄かに浮き立つ月見草の
  
             姿は佇む浴衣の乙女か  



             夕されば草ぐさ物みな消え失せて
  
             白きうなじの乙女ぞ浮かびぬ