とうとう北海道11連泊最後の宿を発つときが来ました。
早起きはしたけれど、990アドベンチャーの手当てに手間取り早朝の出発とはいかず…
それでも今日は最後に苫小牧の新日本海フェリー乗り場に居ないといけないと言う、
これがまた凄く遠いのだけど絶対ににフェリーに乗り遅れてはいけない、ロングツーリングの最終日ににありがちな緊張感と言うか切なさと言うのか…
どんよりとした雲がかかる果てしなく続く直線道路を海に沿って「濤沸湖」を目指せば、
宗谷岬から知床半島まで、海沿いと内陸を出たり入ったりはしましたが
このオホーツクエリアの多くを走ったと言う、自己満足を得ることができるでしょう。
北に東にルートをとるのはココまで、以降は南に西に大きく方向変換することになります。
オホーツク海沿岸、網走市と小清水町にまたがる濤沸湖(とうふつこ)は、砂丘によってオホーツク海と隔てられてできた海跡湖。
お天気が良ければ、風光明媚な花と野鳥の楽園を眺めに寄り道するべきところでしたが、
何せこれまでの北海道ツーリングで悪い意味で「絶景慣れ」してしまっているし、この先の道のりも気になるので
湖畔を走る国道244号から眺めるに止めてしまったことは今にして残念に思うことです。
真冬の厳冬期にはマイナス10度以下にもなる寒さでほぼ全面結氷するような場所、僕の生活圏からすると別世界。
そんな絶景をよそに、僕はバイクの手入れ。
990アドベンチャーは補充用のエンジンオイル1リットルをここで使い切り、
ココまで全く手のかかっていないDL1000にはチェーンルブを追加で吹き付ける程度 (^_^;)
湖畔を走るのは国道だけではなくJR北海道の「釧網本線」もあって
旧くて小さな駅舎の中でストーブで暖をとりながら列車を待つなんて、
そんなのやってみたいなあ…なんて
さらには駅舎内にラーメン屋まであるなんて、
島根県の奥出雲、JR木次線の亀嵩駅舎内「扇屋そば」以来、この取り合わせはいいですね。
まだ営業時間前ですから叶いませんでしたけど、開いてたら食べてた間違いなく。
ラーメン屋(止別駅)を背にとうとうオホーツク海ともお別れ。
ここからはひたすらハイペースで南下、左手に「斜里岳」が見えているはずですが曇っていてそちらも見えず、
それでも途中に北海道ならではのものが見られると、アドベンチャーがルートに組み込んでいたポイントに向かいます。
清里町斜里川上流の「さくらの滝」まで少し歩き。
夏場の滝は涼しげ…なんてものではなくけっこう冷えます
6月中旬から9月上旬にかけて、サクラマスの遡上が見られるこの場所。
ヤマメが海に下って成長して、産卵のために生まれた川に戻ってきてこの川を遡上する過程で
この3.7メートルあると言われる滝をジャンプする様子が見られるのです。
見ていると次々にサクラマスがジャンプしていくのですがそのほとんどが自然のハードル越えに失敗。
毎年約1万匹がチャレンジして、滝を越えることができるのはわずか5%ほどだそうです。
初めて見ましたけど、チカラが入りましたねコチラも。
さくらの滝から南に下ること15分程度
そこからさらに南に位置する「摩周湖」の伏流水から成る池へ急行。
これまでに青い水を湛える池や水源は全国各地数多く見てきましたが、
コバルトなんて素の状態で見たことなんて当然ありませんけど、コバルトブルーとはこうあってほしいと思わせる透明感と冷ややかな青でした。
水温が年間通して8℃と低く、倒木が青い水の中に腐らずに化石のように沈んでいると言う環境も神秘的。
ココへ通じる林道は12月に入ると冬季閉鎖…でしょうね。
さてさて、現地点と苫小牧までに立ち寄りたい場所と距離。
ルートと時間を調整していかないと、距離が長いだけに序盤に見当が外れてしまうと到着時間に大きな差が出てしまいますから
進む方向を間違えないようアドベンチャーがこまめにマップをチェック。
遅れずに到着するにはトラブルなんてあってはならないところデス。
一周目でこのエリアを訪れた時はふたつ並んだ湖の「屈斜路湖」側に進んだので、今回は「摩周湖」に向かいます。
「霧の摩周湖」とは言いますが今回もやっぱりそう。
もはや大きな湖を見下ろしてもそれほど喜ばなくなっている時でしたから、
霧で見えない摩周湖を見たということで変に納得して先に進みましょう。
摩周湖展望台から摩周岳周辺の寒さと見通しの悪さから解放された「多和平」
周囲360°の眺望が望める。“地平線の見える大牧場も天気がいまひとつ。
ココでももうすっかり目が肥えている我々は大して残念がることも無く予定通りにランチ。
特産の標茶牛のシチューなど、この後のタフツーリングに備え
しっかりと食べております。
990アドベンチャーのほうは排気漏れと爆音を抑える術はすでに無く、
排気ガスの熱で溶けていくチェーンスライダーが脱落して、ドライブチェーンに巻き込まれないか
心配事はそれに尽きる状態。
どこをどう縛ってもドライブチェーンが接触してすぐに切れてしまうので、縛り方が手薄に見えるけどこの一か所をまめに見守るしかありません。
標茶町からはルートを大きく西へ
寒さも緩み北海道らしい快走で北海道南岸を目指します。
釧路湿原の西側を一気に南下し道東自動車道を2区間だけ利用し広域農道で太平洋側に出ます。
北海道での給油はほぼ「ホクレン」
990アドベンチャーはそんなものだろうと思うけど、DL1000も燃費はそれほど良いとは言えず
13~14/L程度と990アドベンチャーと同レベルの消費量。
少し距離は離れているけど、太平洋に沿う頃には天気も急速に回復してきてひさしぶりの晴れ間。
天気が回復と言うより我々が移動しているだけかも。
気分よく走っていると、十勝川の河口付近。
大河と海との出会う場所は本州では護岸工事が成されている場合が多いのですが、
十勝川の河口では堆積した砂浜と砂州を伴って海とぶつかる地らしく自然のままに複雑な川岸が広範囲に見られとてもいい眺め。
これからはずっと海沿いをひた走り「襟裳岬」を目指します。
断崖直下の海岸や切り立った絶壁を連続するトンネルでつなぐ「黄金道路」は
28Kmの道路完成までに黄金を敷き詰めるほどの金額が投じられたと言われ、このなが付けられたとツーリングマップルに書いてありました。
爆音による疲労を分担しようと、お互いのバイクを乗り換えていますが
音量と音質ともに堪えます。
国道336黄金道路はこの先の岬手前で内陸をショートカットするので、苫小牧まで早く行けるのだけど
北海道の東西中間あたりの南端「襟裳岬」に行く時間はあるようで、海岸線に延びる生活圏から離れ行く絶景ルートとなった県道に進みます。
さっきまでの晴れ間はもうどこにも見えず、コンディション良好で美しいアスファルトがこの先の様相が殺伐としている方向へ伸びている
なんとも神秘的な走行。
パワーのあるバイクで高いスピードで走るとまるで映画のシーンのよう。
襟裳岬が近付いてくると霧はさらに濃くなり、ココもやっぱり夏場は霧が出ることの多いエリアだそうで
ペースを落とすことになりますが、まだ予定通りに動いているので大丈夫。
そして襟裳岬まであと数キロというところ。
これまでこの北海道では多くの野生動物、とくに鹿を見ていまして、
スピードが上がるごとにお互いに注意を呼び掛けながら走ってきていたし、
僕も普段の仕事では、お客さんから鹿やイノシシが原因のアクシデントをお聞きしたりバイクを修理したりしている身なので
十分に注意と警戒をしているつもりでいました。
左右草原のわりと見通しの良い直線道路。
見通しも良いのでそれなりのスピード域に達していて、視界は遠くのほうでやや小さくなっている状況。
突然、一頭の鹿が真横から(感覚的に)僕のほうに突進してきて、僕が右手を伸ばせば届くくらいのところでパニック状態の鹿は足を滑らせて転倒。
おかげで衝突を免れたのだと言う一瞬の出来事を、事が済んだ直後に理解しました。
後続でその様子を見ていたアドベンチャー(その時はDL1000)も起き上がってもなおパニック状態のその鹿を避けるのに急ブレーキ。
なんと言っても恐ろしかったのは、そこまで鹿が接近してきたのに、僕はと言うと何時も指を添えているブレーキレバーを引くどころか、
スロットルさえも戻していなかったくらい、なす術がなかったことです。
僕からすると前を横切る鹿と衝突すると言うより、鹿が意図的に僕に体当たりする覚悟で真横から向かってきたように思えてならないくらい。
鹿やイノシシと衝突してしまうのってこういうことなんだと、気持ちの整理がつくまでスロットルを開けられず、ノロノロ運転が続きました。
野生の鹿にここまで接近したのは、2016年の「紀州伊勢信州ツーリング」で奈良公園の鹿に餌を与えた時に次ぐ近さ。
この鹿にしても、自ら命を絶つみたいな愚かなことで僕に向かってきたわけでは決して無いハズですが、
彼らの特性とか本能といったものがこのような行動に出てしまうと言うことなのか…
自分の運の良さに心から感謝しながらいつの間にか到着した「襟裳岬」は
視界を妨げる霧と寒さでかなりの悪条件。
ガラス張りの展望台からは岬の突端が望遠鏡で観察できるようになっていますが、やっぱり視界が悪くて遠くまでは見えていません。
ココではアザラシの群れが見られるそうで、目を凝らしてみるけどやっぱり無理でした (^_^;)
さあこの襟裳岬を発てば、あとは苫小牧までひたすら走るのみ。
さらに冷え込むことが予想されるので防寒対策をしっかりと
それからアドベンチャーは途中で買ったらしい耳栓を…
国道336号を海沿いに走りながら時間は夕刻へと進んで行くのですが、苫小牧港から新日本海フェリーが出航するのは23:30
だから今回の北海道ツーリングで最も遅い時間帯まで走り続けることになるわけで、
途中、いくつかの街や集落を通過するのがこんなに遅い時間帯であったことも初めて。
すると、走りながら見えるお店の閉店時間が早いことに気付きました。
土地柄、朝は早いけど夜も早いし寒いので、僕らの感覚よりも活動時間が早い方にズレているのではないかと思いました。
日高昆布の一大産地として、この地域だけで実に日高昆布の6割の水揚げ量を誇るこのエリア。
さすがにこのお天気と時間帯だからなのか、昆布の天日干しはされていませんが
天日干しする干場(かんば)を所々で見ることができました。
そして苫小牧も間近となったところで無料高速から見えた、夕闇前の一瞬の晴れ間。
走りながらのデジカメでまともに撮影できるわけもないと思ったけど、これで終わってしまうのだけれど…
北海道を走り終え帰って行けることを確信できた時の心境を、後々振り返った時に思い出せるように
ピンボケだから我々だけにしか思い出せないけど撮りました。
本日の走行は555Kmほど。
新日本海フェリー、苫小牧東港には20時の到着。
行きは京都の舞鶴港~小樽港、帰りは苫小牧東港~福井県の敦賀港とどちらの航路も乗っておこうと
アドベンチャーが予約しましたが、コチラの航路の南行きのバイクの多さは何でしょう。
確か70台くらいは並んでいたと思うけど、当然そのほとんどが北海道ツーリングを終えて帰ろうとするところ。
皆さん装備も積載量もかなりのもの、レンタルバイクでもなく、バイクを送るのでもなく
自走で目指す人達ですから気合十分ツワモノばかりのように見受けます (^_^;)
恥ずかしい爆音で列に加わった990アドベンチャーもこれでひとまず本土の敦賀までは帰れることになり
これで一安心ですね。
行きも帰りもフェリーの乗船待ちの間、雨が降らなかったのはツイてた。
行きの高揚感を楽しむのと帰りの感傷に浸るときに雨が降っていると多分しらけるハズです。
ものスゴイ数のタイダウンベルト、縛る船員さんもライダーたちの荷降ろしも素早く手慣れたものです。
皆さん何度も繰り返してきているわけですもんね (笑)
個室ツインの船室には洗面台はもちろん、トイレも完備されていて
船旅も21時間ともなると、あったほうがそれはもう快適。
翌日の午前、同フェリーの北行きとすれ違う時の心境は、
ついこの前、逆ですれ違った時に想像していたものと近いような違うような…
乗り込むバイクはあれほど多かったのに、乗船客は少なくて
船内の共有スペースはガラ空き。
ツーリング中は振り返ることをほとんどやっていないと言うかできなかったし、下関に帰って仕事再開となるとなおさらできません。
やるなら今しかないと、敦賀港へ到着は20:30ですからまる一日をかけて地図を突き合わせて
アドベンチャーの解説でルートの確認完了。
乗船前に寄った最後の「セイコーマート」で買った最後の北海道メシ。
下船後の夜間走行に備えて仮眠もとっておきました。
これから下関まで高速道路で660Km
最後のロングランですね。
ここまで来れば990アドベンチャーに何があっても僕が自力で回収できる距離なので、もう走るしかない。
予報では西から下り坂とのことで、多分途中から雨天走行になるだろうと覚悟を決めて走り出すと
なんとも蒸し暑いこと。
単調な高速道路はもう眠いの一言で下関が遠く感じます。
行きと帰りとで距離感全く違いますね (^_^;)
景色も見えない夜の高速道路、気分転換と言えば食べることくらいか。
ついつい休憩が多くなり、我々としては超鈍足な移動が続き、
山陽自動車道の宮島SAで明るくなって来たところで最後の給油。
明るくなってみると、雨はまだ降りそうでもなく
うまくいけばこのまま帰れそう。
そして下関IC
いろいろあったけどこうしてまともに帰ってこられたので本当に良かった。
到着して間もなく、雨が降り出しましたけど、
我々が北海道に居るあいだ、下関はずっと憂鬱な天気が続いていたようで
この日の雨で打ち止めとなりました。
よく走ったほうだと思いますけど、あまり一所にこだわらず走り回ったし
お天気にも恵まれて、北海道ならではの平均スピードが維持できたからでしょう。
こんなに遠いところ、何度も行けるとは限らないし
これ一度きりになるかもしれないので、悔いることの無いようできるだけ広範囲に廻ろうということで、
アドベンチャーが考えたルートにより
総走行距離はDL1000のメーターで6400Km。
怒涛の14日間
これでやっと、北海道に行く人行った人と北海道の話ができるくらいの経験ができました。