Kuni Takahashi Photo Blog

フォトグラファー高橋邦典
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吸血マシーン

2005-12-18 11:33:25 | 北米
まるでSF映画にでてくる巨大な牙城のように、それは海上にそびえ立っていた。

ルイジアナ南岸のリービルという街からヘリコプターに乗っておよそ一時間、青い海のなかに突然姿を現したこの海上石油プラットフォームの姿は、なにか非現実で、異様でさえもあった。

今回の出張は、このプラットフォームの取材が目的だった。1ヶ月程前から取材の申請をしていたが、ようやく石油会社からの許可がおりたのだ。

海底からの高さ全長が610メートル(うち535メートルは海中)、地面に乗っただけのこのようなフリースタンディングの建物としては世界で一番高いそうだ。

このプラットフォームから海底に突き刺されるドリルによって採掘される石油は、毎日6万バレル近くに及ぶという。

到着するとまずオリエンテーションがおこなわれた。この設備について誇らしげに説明する石油会社の職員を横目に、僕はなんだか複雑な思いを抱いていた。

石油の採掘は、地球の内側にあるその資源を巨大なストローで吸い上げているようなものだ。人間は新しい油田を求め続け、休むことなく石油を吸い取っていく。。。

石油も自然の産物だから、それが地球内部に存在していることによって何かのバランスを保っているのではないだろうか?無制限に石油を吸い上げ続けることによって、地球内部のエネルギーのバランスが崩れてしまうようなことはないのだろうか?

職員の話では、油圧をモニターしながら採掘しているので問題ないようなことを言っていたが、果たしてどんなものだろう?僕にはこの分野の専門知識などないので何ともいえないが、ひょっとしたら石油の採掘し過ぎが地震の発生などにもつながっているのでは、などと思ってしまう。

世界一の産油国であるサウジアラビアも、その産油量のピークは越え、すでに下り坂になっているといわれている。そのためアメリカや中国などの消費大国は、アフリカなど中東以外の地域にやっきになって設備投資を進めているが、それよりも世界はもっと真剣に、根本的なエネルギー資源の見直しをするべきではないだろうか。

これからの世界は石油ばかりに頼っていては破綻するに違いない。

それなのにアメリカではあいも変わらず「大きいことはいいことだ」みたいな感覚がまかり通っていて、舗装道路しか走ることのないような郊外に住むママさんから、ダウンタウンのビジネスマンまで、猫も杓子も4輪駆動の大型車を乗り回しガソリンを垂れ流している。

金儲けしか頭にない自動車会社にしても、資源問題なんぞは聞く耳もたずで、大型車の販売にしのぎを削っている。エコカーなどまだまだ少数で、街でみることなどほとんどない。

そんなことに思いを巡らせていたら、この海上石油プラットフォームが、地球の体内から血液をどんどん吸い上げる非情な吸血マシーンに見えてきた。



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6 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
吸血鬼を減らす (kiyo)
2005-12-18 17:28:43
戦争のない世界にするために、まず何ができるか、それは身近なところから、できることから始めよう。何も難しいことやたいそうなことをしなくてはいけないのだと身構えることはないのだ。石油という資源の奪い合いが戦争につながっているのだから、石油の消費をなるべく少なくしていこう。エネルギーの無駄遣いを少なくしていこう。環境問題にとりくむことが、戦争を回避し平和につながっていくのだと思う。

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追伸 (kiyo)
2005-12-18 17:52:48
さっきの言葉は、自分自身に言い聞かせたものです。実は、できていないのです・・・。
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同じ (大輔)
2005-12-18 19:52:28
みんなそうですよ。誰しも分かっているけど実行に移せていないことって多いと思います。でも“自覚”という第一歩が踏み出せているのだから、みんなで進む事が出来るはず…と俺は思います。
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Unknown (Kuni Takahashi)
2005-12-18 21:12:09
企業が、利潤を追い求めるばかりでなく、将来を見据え、自然の摂理を念頭にいれた開発にもっと力をいれていかなければならないはずなのです。消費者は消費者で、使い捨ての便利な生活が身体に染み付いているので、環境のためにそれをわざわざ変えることが難しい。。。これは僕も自戒をこめてですが。。。。
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地球が痛い (じょじょ)
2005-12-18 22:02:29
大きなドリルを打たれて、地球が痛いって泣いているようですね。
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胸も痛い (やん)
2005-12-19 11:30:06
お久しぶりです!



ぱっと見ただけでは、その巨大さがピンと来ないけれど、実際は異様な位大きいモンスターみたいなんでしょうね。

吸血マシーンというタイトルがついたこの写真、胸に突き刺さって、私の血が吸われているような痛さ、息苦しさを感じました。
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