Kuni Takahashi Photo Blog

フォトグラファー高橋邦典
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路地裏の中毒者たち

2014-01-28 15:13:19 | アジア
「インド警察が北部カシミール地方で、パキスタン側からやってきたトラックから100キログラム以上のヘロインを押収」
数日前、ネットでこんなニュースを目にした。インド側の情報によれば、アーモンドを運ぶトラックに隠された114袋のヘロインがみつかり、6年前にカシミールで両国を結ぶ商業交通網がひらかれてから最大の摘発事件になったという。

この記事を読んで、2年ほど前にパキスタンの港町カラチで撮影したヘロイン中毒者たちのことを思い出した。路地裏や橋の下で、垢と埃で汚れきった男たちが、ヘロインの粉末をライターの火であぶりながら吸引したり、液体化したものを腕や足の静脈に注射していた。カメラを持った僕が近づいても目に入らないほどにハイになって白目をむいている者も少なくなかった。

パキスタンやアフガニスタンの裏通りでは、ヘロイン中毒者たちをみかけることはそれほど珍しいことではない。世界最大のケシ(ヘロインのもとになる阿片を含む植物)の栽培地であるアフガニスタンは、世界中で消費されるヘロインの80パーセント以上を供給するが、そのうち4割はパキスタン経由でアジアやヨーロッパへと流れていく。当然それはパキスタン国内の市場でもさばかれ、一回分100円にも満たない、ヨーロッパよりも遥かに安い値段で手に入るので、中毒者は増える一方だ。現在パキスタンには、およそ100万人のヘロイン中毒者たちがいるといわれる。

パキスタンに限らずどこの国でも麻薬取引は莫大な利益をもたらすビジネスだ。どんなに警察が取り締まりを強化しても、マフィアやカルテルによる麻薬ビジネスが撲滅されることはない。この地域では、ヘロインがタリバンや他のイスラム武装グループの貴重な資金源となっていることは言うまでもない。

今年はアフガニスタンからNATO軍が撤退を始める予定だが、撤退後はこの地域の麻薬ビジネスはさらに活性化してしまうだろう。
「堤防の水門をあけるようなものだ」
そんな懸念の声も聞こえてくる。

次にパキスタンを訪れるときは、吸引したり注射針を腕に差し込んでいる中毒者たちが路地裏にあふれているんじゃないだろうか….そんな気がしなくもない。

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渋滞をひきおこす警官

2014-01-14 14:14:12 | アフリカ
少しばかり前、交通安全に関する撮影で、ケニアの首都ナイロビで数日間を過ごした。はじめのうちは、無法地帯ともいえるムンバイやデリーなどのインドの都市に比べれば、ナイロビの交通事情などたいしたものではないなと感じていたのだけれど、ある晩の経験から考えががらりと変わってしまった。

ナイロビから100キロほど北上したナイバシャという町から戻ってきた夜のことだ。仕事が長引き少し出発が遅れたにもかかわらず、交通量は少なく、思っていたより早くナイロビに到着。ところが、市内にはいりホテルまであと少しというところで、とんだ渋滞に巻き込まれた。のろのろと50メートル程走っては、10分間まったく動かなくなるといった繰り返し。どうやら1キロほどさきにあるロータリーが原因らしかった。

「警察のせいさ…」ドライバーがため息まじりにこう漏らした。彼が言うにはこういうことらしい。ロータリーで交通整理にあたっている警察官が、わざとひとつの道路だけを長く停止させて、しびれをきらせたドライバーから賄賂をとるのだという。賄賂せびりのそんな警察官の手口など、これまで訪れたどんな国でもきいたことはなかったが、同乗していたナイロビ在住のアメリカ人も、こんなことは日常茶飯事だと同意している。結局ロータリーまでの1キロを走るのに1時間半ほどかかり、そこでまさに僕が目撃したのは、僕らの道路に立ちふさがって異常に長い時間ストップさせている一人の警官の姿だった。

今回の仕事を始める前、撮影リストに「ロータリーで交通整理をする警察官」がはいっていた。なぜ特別にロータリーの警官を?と疑問に思った僕に、クライアントの言ったこんな言葉が、この晩まざまざと実感できたのだ。

「ロータリーの警官は交通整理どころか、逆に渋滞の原因になることもあるんだ」

(ちなみにここに掲載されている警官の写真は、記事中にあるロータリーの渋滞とは関係ありません)

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