Kuni Takahashi Photo Blog

フォトグラファー高橋邦典
English: http://www.kunitakahashi.com/blog

オバマ大統領就任式

2009-01-21 08:40:26 | 北米
オバマ新大統領の就任式。

式の取材のために、トリビューンからは3人のフォトグラファーがワシントンDCへ出張になったのだが、希望をだすのが遅かったことと、年功の問題もあって、残念ながら僕は留守番組に。。。

そんなわけできょうはシカゴで人々の反応を撮っていたが、やはりワシントンのナショナル・モールに集まった人たちの、あの一丸となったエネルギーには叶うべくも無い。テレビで就任式の様子をみながら、やっぱり休みをとって個人でいけばよかったなあ、と後悔してしまった。

写真が撮れなかったこと自体はそれほど残念ではない。大体、こういうイベントでは警備がきつすぎて自由に動き回れないし、ステージ上のオバマ大統領を撮るにしても、それは決められた位置からのおざなりの写真になってしまう。

後悔したのは、写真どうこうというより、歴史に残るべくあのエネルギーに満ちた瞬間に立ち会っておきたかった、と思ったからだ。

テレビ画面に映る百万人を超える人々の姿をみながら、僕は15年前の南アフリカでのネルソン・マンデラ大統領の就任式を思い出していた。

アパルトヘイト(人種隔離政策)に終止符を打つ形で、南ア初の黒人大統領として選出されたマンデラ氏。当時まだ駆け出しカメラマンだった僕は、世界中から集まってきた報道陣に混ざって、首都プレトリアでの就任式の様子を取材していた。

式の会場には、新生南アフリカへの、希望と期待に満ちた群衆のエネルギーがふつふつを沸き上がっていた。黒人、白人、肌の色を問わない何万人という人々が、みな手を握り合って高く振り上げている様子をファインダー越しに見つめながら、不覚にも僕の眼から涙が溢れ出して、視界がみるみる曇っていったことを今でもはっきりと覚えている。

それほど感動的な歴史的瞬間であった。

マンデラにしてもオバマにしても、それまで虐げられてきた黒人初の大統領誕生という歴史的意味は重要だが、それ以上に、人種を問わず、これだけ多くの国民が一体となって「本心から」自分たちの選んだリーダーと共に事を成し遂げようという期待に満ちた瞬間にはそうそう巡り会えるものではない。

そういう意味で今日のオバマ大統領の就任式も、現場にいればマンデラの時と同じエネルギーを感じられたに違いないし、僕にとっても一生忘れることのない日になっていたはずだ。

後悔先に立たず、だが、やっぱり残念。。。


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7 コメント

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Unknown (dumbo)
2009-01-21 08:52:11
待ってましたー!と思ったら....

そうだったんですね。


もっと遠い東京にいる私は

今アメリカにいたら

エネルギーに満ち溢れた感動的な場に

近かったのになぁーと思いながら見ています。

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年功 (dora)
2009-01-22 20:53:59
アメリカにも「年功」という概念があるのですか?
それとも、高橋さんが日本人だから、気を遣ったのですか?

すみません。本筋から離れた話題で。

ワシントンに行けなかった理由がちょっと意外だったので、、
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年功 (Kuni Takahashi)
2009-01-23 09:24:51
年功、こっちでもありますよ。今回はこういういきさつでした。まず1人は黒人。これはもっともですね。もう一人はトリビューンで17年やってきている女性カメラマン。彼女は朝のシフトだったため、選挙日の夜のオバマ集会の取材からはずされ怒ってました。その埋め合わせの意味もあっての就任式取材抜擢です。もう一人はこれまたベテランでトリビューンでは僕も一目置くいいカメラマンです。それに選挙期間中からずっとオバマを追って撮影してきたカメラマンをあわせたメンバーだったので、さすがに僕が押し入る隙はなかったわけです。

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年功 (dora)
2009-01-23 19:00:03
ご回答どうもありがとうございました。
そのような事情だったのですね。
確かに仕方ないかも(`笑’)?!
でも、残念でしたね。
取材に行かれた方達は何か感想をおっしゃっていましたか?
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オバマの真実? (硝子)
2009-01-23 23:38:40
こんにちは。話題がそれてすみません。
先日週刊朝日に、「オバマの真実」?というシカゴトリビューン社で出版されたいわゆる「暴露本」?の紹介がされていましたが・・(その翻訳版が朝日新聞社から発売されたようですね?)オバマ大統領に対する地元シカゴや社内での評価とかはどうなんですか?ちょっと気になってます。
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 (Kuni Takahashi)
2009-01-24 03:09:10
シカゴは勿論のこと、全米で彼の評価はすこぶるいいですよ。早速1日目にしていい改革してくれましたしね。読んでいないのでその本の原本がどれかわかりませんが、トリビューンのものでしたら多分マイク・タケットの本だと思います。オバマは自伝ですでに自らの事を細かく書いているので特に暴露されて困る事はないと思いますが、それ以前に、タケットは信頼できるジャーナリストですから、きちんとした事実を書いていると思います。「暴露本」というと変に聞こえますが、原本のタイトル(essential guide) から考えてもオバマのこれまでの軌跡を単にわかりやすく書いたものだと思います。
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Unknown (硝子)
2009-01-31 23:14:43
お返事ありがとうございます。確かに暴露本と書いてあるのは週刊誌の表紙だけで、中の記事には、そんなにひどいことは書いてませんでした。最近は電車の中づり広告なども、センセーショナルな見出しが並んでいますが、そういう書きかたをしないとやはり雑誌も手にとってもらえなくなってしまってるだろうな、とは思います。特に週刊誌などもスポンサーのご機嫌うかがいとはっきりわかるような記事が多くて失望させられることが多いです。それがまた購買意欲をそいでいる元凶でもあるのですが。
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