Kuni Takahashi Photo Blog

フォトグラファー高橋邦典
English: http://www.kunitakahashi.com/blog

写真に重なる自分の姿

2008-05-29 10:04:13 | 写真展・雑誌掲載
今年3月に目黒区でひらかれた僕の写真展でのアンケートが先日届いた。主催者の方がまとめてシカゴまで郵送してくれたのだ。

毎度のことながら来場者の方々が感想や意見を残してくれるのは嬉しいし、それを読んでこちらも考えさせられたり、励まされたりするものだ。

そんなアンケートのひとつに、ある女性の興味深い感想が書かれていた。

「(前略)。。。黒っぽい色の写真には、額のガラスに自分自身が映り、写真と自分を一緒に見て更に考えさせられました。。。」

僕ら写真を見せる側からしてみれば、展示をする上で額の表面の反射は目障りになるので極力排除しようと気を使うものだ。しかし、ここでは逆にその反射のおかげで、一人の人間が「単に写真を見る」という行為から更に一歩踏み込んで思考を深く巡らせることが出来たわけだ。

その女性が実際に何を「更に考えさせられた」のかはわからない。ただ、平和な日本に住むその彼女にとっては、展示写真に写された光景は「非日常的」で「他人事」であったであろうことはある程度想像がつく。その「非日常的」な光景のなかに突然浮かびあがった自分自身の姿。。。写真に重なった自分の顔を発見することによって、自分が「他人」ではなくなってしまった、いや、「他人事ではすまされない」と気づかされたのかも知れない。

アンケートは無記名なので、僕はこの人については30代の女性であるということしかわからないし、ここに書いたことも僕の調子のいい憶測に過ぎない。しかし、展示された写真を見に来ただけだったのに、思わず自分自身のことも考えされる羽目になった、そんな感じだったのでないだろうか。

こんな機会をつくってくれるのも写真展ならではだな、などと変に感心しながら、一緒に送られてきた日本のチョコを頬ばりながらアンケートをじっくり読ませていただいた。





お知らせ リベリア募金報告

2008-05-26 12:03:38 | 写真展・雑誌掲載
リベリア募金に協力していただいた方へ、2007-08年使用報告書を送らせていただきました。こちらでメールアドレスを把握している方へのみの送付になってしまいましたので、もし募金をしていただいた方で報告書を受け取っていない方は、僕の私信宛にメールでご一報ください。ktakahashi9@gmail.com ご協力ありがとうございます。

ホームページ更新

2008-05-25 10:08:29 | 写真展・雑誌掲載
休みの半日を費やして、なんとかホームページのムスのページがアップできた。サイトのアップは時間がかかるし、マシーンの如く機械的に作業しなくてはならないのでしんどい作業だ。アシスタントでもいて、こういうのをぽんぽんやってもらえると楽なんだけどなあ。。。なんて身の程知らずなこと考えてしまう。
http://www.kuniphoto.com/warchildren/warc_musu_wed_thum.htm

お知らせ

2008-05-24 06:07:38 | 写真展・雑誌掲載
このブログでも触れたことがある、ニューヨーク在住のフォトグラファーで、僕の友人でもあるQサカマキ氏が、今年7月東京都写真美術館でカメラマンを対象にしたワークショップを開くことになった。

Qさんのスリランカの組み写真は、昨年のワールド・プレス・フォトでも受賞しており、同美術館で6月から8月までひらかれる世界報道写真展にあわせてのワークショップだ。

一般の人向けの講演ではなく、すでにカメラマンとして活動している(プロ、アマ問わず)人たちが対象だが、まだ定員に余裕があるようなので、興味のある方は応募してみては?

詳細は以下のサイトで
http://www.syabi.com/workshop/ws_photo.pdf

苦悩するモモ

2008-05-22 10:43:56 | リベリア
元少年兵のモモについての近況報告もしておきたい。

彼は、内戦が終わり銃を捨ててから5年が経とうとしている今もまだ自分を見出せないでいるようだ。

学校生活も、校長の話によればモモは集中力に乏しく、成績も振るわずに進級できない状態が続いている。ただ、以前は乱暴だった教師に対する言葉遣いなどは落ち着いてきたようだし、気まぐれだった出席率もあがり、最近はきちんと登校しているということで、悪いことばかりではない。

内戦終結の翌年に会ったときからそうだったのだが、モモと話していても、勉強する目的や、これから自分がどうしたいのかということが自分の中ではっきりせずに、悶々としている感じをうける。いつも欲求不満で、どこかに怒りを溜めている、という印象だ。

僕は心理カウンセラーではないので、それが何に起因しているのかなどうんぬん分析するつもりはないが、やはり少年兵としての壮絶な経験が影響を及ぼしているのは否定できないだろう。

以前にも書いたが、モモは内戦中に捕虜になった二人の男たちを殺している。司令官の命令で、至近距離から撃ち殺したのだ。そのときはさすがに身体から力が抜けたようで、司令官がくれたラム酒とマリワナで気分が楽になったと言っていた。

まだ12,3歳の少年がこんな経験をすれば、その後後遺症が残っても当然だろう。

ただ、モモの同年代の友人で、少年兵として同じ部隊で戦ってきたオサカやファヤは、学習意欲もあるし、成績もよく人あたりもいいから、少年兵みながそういうトラウマや後遺症に苦しんでいると一括にすることはできないのだが。。。

いずれにしても、モモに必要なのは、しっかりと導いてくれる強い兄貴とか父親の存在なのかもしれない、それとも、温かくつつんでくれる母親なのか?

内戦は、モモような少年兵たちから、人に甘えたり、互いに遊んだりという子供として生きる大切な時間を奪ってしまった。そんな彼らが、失われた少年期を取り戻すことなどもう不可能なのだろうか。。。








ファトゥとアルバートの結婚式

2008-05-15 11:05:22 | リベリア
メールで友人が、「歳をとると疲労の回復が遅くなる。。。」などと宣っていたが、悔しいが齢40を過ぎた自分もその例には漏れないようだ。リベリアでひいた風邪がなかなか抜けず、おまけにシカゴに戻って気が緩んだか腹の具合も悪くなって2日ほどダウンしてしまった。

まあそれはいいとして、あまり日にちの経つ前に、ムスの家族の近況を報告しておこう。

4月26日、ムスの両親であるアルバートとファトゥが正式に結婚した。実は僕も昨年まで知らなかったのだが、何年も一緒に暮らしてきた彼ら、正式には籍を入れていなかったのだ。アルバートもファトゥも仕事に就き、ここ2年ほど不安定ながらもある程度の収入を得られるようになったので、この辺できちんと籍を入れて将来のために一家の結束を固めようと思ったらしい。

もともと今回のリベリア行きは、彼らの結婚式に招待されたのがきっかけだったので、これは僕にとっても滞在のメイン・イベントになった。

式はリベリアの伝統的儀式にのっとった身内だけのものと西洋風の2度にわたっておこなわれたが、知人友人を招待した西洋風ウェディングのほうがずっと大掛かりなものだった。

フラワー・ガールの役となったムスは奇麗に着飾り愛らしい姿をみせてくれた。初めて出会ってからもう5年。今年で彼女も11歳になる。背丈も随分伸びて、訪れる度に女の子らしくなっていくようだ。以前はおてんばだった彼女ももうすっかり大人びて、今ではしおらしいほどになった。

そんなムスと、純白のウェディングドレスが美しいファトゥに焦点をあて無数のシャッターを切りながら、この日は僕も存分に楽しませてもらった。

教会での式のあと、学校の教室を借りてのレセプション、そして自宅でのパーティーと、とても経済的に恵まれているとはいえない彼らにしては随分派手な計画をたてているなあと、他人事ながらちょっと心配だったのだが、案の定レセプションの時点で資金を使い果たしてしまったようだ。自宅でのパーティーが始まる前に、ビールを買うために寄付を募る羽目になっていた。

現在、ムスも弟のブレッシングも、日本からの「リベリア募金」の助けもあって、欠かさず学校に通うことができている。

アルバートもファトゥも正式に結婚式をあげて心機一転。貯金もわずかながらできるようになってきた。募金の助けなしに家族が自立できるようになるのも間近だろう。







疲労困憊の空港より

2008-05-10 17:06:05 | リベリア
3週間の滞在後、昨日リベリアを発ち、今ブリュッセルズの空港でこれを書いている。

連日早朝からの長時間の撮影で、全くといっていいほどゆっくりする時間がなかった上に、泊まったホテルのネット環境も悪かったので必要なメールの返信をするのが精一杯で、ブログ更新どころではなかった。

歳をとってきたのか、正直結構疲れた。。。飛行機の中でもずっと寝ていたし、これからまたシカゴまで9時間のフライトがあると思うと気が重い。

今回は、ムスやモモ達の近況以外に、他に2,3の新しいストーリーを取材することができた。特に、足や手を切断した人たちのサッカープレーヤー達とは随分時間をともにして、いい写真が撮れたと思う。

彼らの多くは内戦で足や腕を失ったが、元少年兵だったプレーヤーも少なくない。

今年のアフリカ・カップでリベリアのチームは優勝したが、プレーヤー達はほとんどホームレス状態で劣悪な生活を強いられている。

驚いたことに、内戦中に右腕を失い、2003年にモンロビアの病院でたまたま僕が撮影したジョセフが、アフリカ・カップの2008年最優秀ゴールキーパーに選ばれていた。これは嬉しい再会だった。

今回の自費取材の経費を少しでも埋め合わせなくてはならないし、これからしばらく写真の整理と原稿執筆に追われそうだ。