Kuni Takahashi Photo Blog

フォトグラファー高橋邦典
English: http://www.kunitakahashi.com/blog

泥水に飛び込んで

2010-06-24 03:18:10 | アジア
暑い、とにかく暑い。。。ここ数日イスラマバードとペシャワールを行き来しながら取材を続けているが、気温は40度をこえる毎日。それに加えてたまらないのが頻繁におこる停電で、何の予告も無しにいきなり電気がぱっと消えてしまう。安いゲストハウスの窓のない僕の部屋は突然暗くなり、エアコンも停まってしまうので、ものの一分も経たないうちに身体がべっとりとした思い熱気に包まれることになる。

こんな停電も、先週泊まっていたような自家発電機の設置してある一晩100ドルほどの中級ホテルにいれば問題はないのだが、アサインメントが終わってからもこの国に残って自費で別の取材を続けるためには、安宿に移らざるを得なかった。安宿といっても部屋はそこそこきれいだし、無線インターネットも備わっているのだが、まともに動く自家発電機がないのが思わぬ落とし穴だった。

毎晩深夜過ぎには必ず停電になるのだが、このときが一番悲惨だ。真っ暗な闇の中で、体中からだらだらと汗を流しながら、なす術もなくベッドに横たわるしかない。それでもイラクや西アフリカではもっと過酷な経験をしているので、あまり文句はたれないようにしているのだけど。

午後、地元のカメラマンに会いにいく途中で、水浴びをしている子供達を見かけた。水浴びといっても、ロータリーにできた泥の水たまりで、とてもきれいとは言い難いし、何しろこの気温だから水も全然冷たくない。しかし公営プールや河川のないこの町では、悲しいかな彼らにとってはあまり選択肢はないらしい。泥水に顔を沈めながら、それでも楽しそうにしぶきをあげてはしゃぐ彼らの姿をレンズをとおして追っているとき、日差しに晒されながらも僕は暑さのことをしばし忘れていた。

(他の写真はこちら http://www.kunitakahashi.com/blog/2010/06/23/jumping-in-muddy-water/

イスラマバードより

2010-06-21 04:29:38 | アジア
月曜の夜にイスラマバードに到着してからずっとアサインメントの仕事に追われる毎日。ようやく昨日少し時間ができたので写真を20枚程新聞社に電送してから、友人から紹介されたドライバーを雇って午後の町に繰り出した。

イスラマバードは60年代に新首都としての都市計画によってつくられた新しい都市で、その町並みは整然として実にきれい。特に混沌を地でいくムンバイから来た僕にとっては、このイスラマバードの整然さはショックだった。しかし、渋滞もほとんどないし、きれいで住みやすいのは確かだが、反面退屈でもあり、写真的にも全然面白くない。そんなわけで、僕はドライバーに頼み隣町で旧首都でもあるラワルピンディへと連れて行ってもらった。ここは3年近く前、パキスタンの元首相ベーナズィール・ブットーが暗殺された場所でもある。

車を降りて、しばらく昔ながらの市場を散策し、これまでみたことのない片足相撲のような遊びをしていた子供達と時間を過ごして、道ばたで好物のチャイ(ミルクティー)を嗜む。。。たかだか数時間ではあったが、いいリフレッシュになった。ああ、それからひとつ面白かったのが、なんとアダルトムービーを上映している映画館を発見。このイスラム教の国で?と、僕はかなり驚いたが、ドライバーの言うことにはせいぜい抱擁とキスどまり。服を脱ぐことはない、という。やっぱりね。。。ここはパキスタン。しかし正直なところ、自分の眼で確かめたい気もするな。

(他の写真はこちら http://www.kunitakahashi.com/blog/2010/06/19/in-islamabad/ )

鉄は熱いうちに打て

2010-06-09 18:55:20 | アジア
ムンバイはここのところ雨続き。まだ本格的に雨期にははいっていないとはいわれているが、それでももう時間の問題だろう。

昨年の雨期は例年に比べて非常に雨が少なかったようで、そのため今年は極端な水不足が懸念されていた。実際に水不足を見越した市の給水制限もすでに昨年末からはじまっていたし、これはいいストーリーになるだろうと踏んだ僕は11月あたりからこの「ムンバイの水問題」についての写真をすこしずつ撮りはじめていた。しかしアフリカをはじめカシミールやネパールなど、水不足の一番ひどくなる3月から5月に他の仕事でムンバイの外に出ることが多くなり、気がついたらもうすでに乾期は終わっているではないか。

今年の雨期も雨不足という事態がないとはいえないが、いずれにしてもすでに雨が降り始めてしまった以上、これまで撮ってきた写真の使い道がほとんどなくなってしまった。発表すべき時期にだしそびれてしまったわけだ。そんなわけで、せめてこのブログとホームページには載せてしまおうと思った次第。

日本(だと思うけど)の諺に「鉄は熱いうちに打て」というのがあるが、写真記事にしてもまた然り。期を逃してしまえば使えなくなる。

(もっと写真をみる HTTP://WWW.KUNITAKAHASHI.COM/INDIA_WATER.HTML )


ダーバー・ボーイズ

2010-06-04 00:24:42 | アジア
ここ数日、ネパールのストリート・チルドレンの写真の整理で忙しい。

いつもカトマンドゥのダーバー広場のあたりにたむろしていたので、「ダーバー・ボーイズ」と僕が勝手に名付けたこの子供達、たかだか6日間を共にしただけだったが、妙に懐かしく感じられる。彼らにとっては、僕などただの通りすがりの外国人に過ぎないのだろうが、僕にとってはこの連中は特別な存在になったようだ。言葉ではうまく表現できないが、彼らと過ごしているうちに、撮る者と被写体という関係を超えて、なにかノリがあうというか、言葉も通じない彼らと共有する時間が妙に心地よくなっていったのだ。

被写体に対してこういった感情をもつことはそれほど多くはないのだが、彼らと早くまた会いたい、とわくわくしている。多分3ヶ月先あたりにまたカトマンドゥに戻る機会もあるだろう。できればこれからも何年という長い目で、彼らがどのように成長していくか、見守っていければなあと思う。

(他の写真はこちらへ http://www.kunitakahashi.com/blog/2010/06/03/darbur-boys/ )