Kuni Takahashi Photo Blog

フォトグラファー高橋邦典
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ゲイ・レズビアンの行進 in ムンバイ

2012-01-30 11:27:05 | アジア
一昨日、ムンバイでゲイ・レズビアンのマーチを撮影した。「クウィアー・アザーディ」と名付けられたこのイベントは、同性愛者、バイセクシャルやトランスジェンダーを含めたコミュニティーに対する差別偏見と闘うために2008年から毎年続けられている。

2009年7月2日、首都デリーの高等裁判所は、 150年前から続いていた「自然の摂理に反した快楽的性交(要するに同性間性行為)」を犯罪と見なしていたインド刑法377項を違憲とする画期的判決を下した。これ以前は、同性間の性行為によって逮捕されることもあったわけだ。

近年、高度経済成長により国際舞台でも頭角をあらわしてきたインドだが、社会的、文化的にはまだまだ保守的な面が多い。言うまでもなく、勇気を持って公にでる同性愛者たちは極少数だ。

イベントでは、多くの通行人たちが沿道で足を止め、興味深そうに行進を眺めたり写真を撮ったりしていたが、妨害や嫌がらせの類いは一切なく、参加者たちはドラム演奏に合わせ行進を楽しんだ。保守的とはいえ、こういう懐の深さも持つインド人の一面を見た思いだ。(これがさらに保守的な農村部だったらどうなるかは疑問だが。。。)

90年代半ば、ボストンで撮影したセント・パトリックス・デー・パレードでの場面を、僕はいまでもはっきりと憶えている。それは、パレードに初めて参加した同性愛者のグループに対して罵声が飛び交い、子供たちまでもが彼らに向かって唾を吐きかけるという醜悪なものだった。

少数派が社会で理解され、受け入れてもらうためには、自ら権利を主張しそれを勝ち取っていくしか無い。インドの同性愛者の権利獲得への闘いはまだ始まったばかりだ。

(もっと写真を見る http://www.kunitakahashi.com/blog/2012/01/30/queer-azaadi-gay-and-lesbian-in-mumbai/ )

カトマンドゥーのストリート・チルドレン その2

2012-01-25 13:12:35 | アジア
前回のブログに書いたこと以外に、ストリート・チルドレンたちについてひとついいニュースもあった。

追っている子供のうち2人がすでに路上生活から抜け出して、1年以上シェルターで生活していたのだ。カトマンドゥー郊外にある一軒家で、12人の元ストリート・チルドレンたちが共同生活をしながら学校へ通っていた。2年程前にこのシェルターを開設したサムラットという男性が、寝食を共にしながら彼らの面倒をみている。

ベットや机といった家具類は何も無く、子供たちは床で雑魚寝。割れた窓から冬風が吹き込んでくるような、とても恵まれた環境ではないのだが、 炊事の手伝いや洗濯、庭を耕して野菜の種まき、そして勉強と、子供たちはそれなりに共同生活を楽しんでいるようだった。数人と話をしたが、誰一人としてまた路上生活に戻りたいという者はいない。学習し、将来に目を向けることの大切さを根気よく彼らに説き続けてきた、サムラットの教育の成果なのだろう。

こんな子供たちのポジティブな変化をみられたことは幸いだったが、将来バラ色という訳では全くない。政治的コネもなく、NGOなどの支援団体とのつながりもないサムラットは、シェルターを維持していくための慢性的な資金不足に陥っていた。これまで少数の個人支援者たちに頼ってきた彼だが、それも滞りがちになり、3ヶ月後にはシェルターの家賃が払えなくなりそうだという。

これまで幾つか見てきたような、営利目的のいかがわしい組織とは違って、サムラットの誠実さと子供たちに対する愛情は本物だと感じたが、悲しいかな僕はこの問題の根本的解決になるような資金など持ち合わせてはいない。子供たちの服を購入し、些細なことでお茶を濁すことしかできなかった。

残念ながら、これはよくある話でもある。ネパールに限らず多くの国々で、善意と熱意を持って行動に移すが、金が無くて続けられない、というサムラットのような人間に出会うことが少なくないのだ。

軍事紛争に何十億ドルもの金が費やされる現在、そのうちほんの僅かな額だけでもサムラットのような人たちの手にまわることになれば、計り知れない可能性を子供たちに与えることができるだろうに。。。

追伸 ― サムラットに何らかの援助をお考えの方はお知らせください。最良の方法を考えたいと思います。Ktakahashi9@gmail.com

(もっと写真をみる:http://www.kunitakahashi.com/blog/2012/01/25/durbar-boys-streetkids-in-kathmandu-2/ )

Durbar Boys - カトマンドゥーのストリート・チルドレン

2012-01-15 18:40:45 | アジア
ネパールのカトマンドゥーで一週間程過ごしてきた。他の仕事もはいったのだが、この町に戻った一番の理由はここ2年程追いかけているストリート・キッズたちにまた会うためだった。

http://www.kunitakahashi.com/blog/2010/06/03/darbur-boys/

短い滞在だったが、彼らを撮影するのがけっこう難しくなってきたのをひしひしと実感させられた。彼らがまだ幼い頃は、そんなに動き回ってはいなかったので見つけるのも簡単だったのだが、今では行動範囲も広まり、昼夜問わず動き回る。

追いかけているメインの少年の一人はもう17歳。とはいってもそんなに歳をとっているようにはみえないのだが、本人曰く、だ。すでに小遣い稼ぎのための段ボール拾いや空きボトル拾いからは「卒業」し、仲間とスリや空き屋泥棒などの犯罪を収入源とするようになってきた。主に夜間にこういうことをおこなうのだが、さすがにこういう現場には同行させてもらうことができなくなった。(まあ、もしそういう場面に一緒にいたとすると、それはそれで自分の倫理的立場に問題がでてくるのだが、そこは今は置いておくことにしよう)

そんなわけで、グルー(接着剤)を吸ったり、寄り集まって寝たりという、これまでとあまり変わりばえのない写真ばかりになってしまい、彼らの成長をビジュアルに記録することはできなかった。

そういった面での不満は残るが、十分に彼らと時間を過ごして信頼を得ない限り、これ以上は望めないだろう。次回はもっとじっくりと時間をとってかからないといけないな。

(もっと写真を見る http://www.kunitakahashi.com/blog/2012/01/15/durbar-boys-streetkids-in-kathmandu/ )