Kuni Takahashi Photo Blog

フォトグラファー高橋邦典
English: http://www.kunitakahashi.com/blog

ヒマラヤ・トレッキング

2012-04-25 19:25:56 | アジア
1週間で3都市をまわるというせわしない撮影から戻り、なんとか写真の編集も終わり電送完了。そろそろご無沙汰になってるブログをアップしないと…

今月初め、1週間の休暇をとって連れ合いと共に北部のウッタラカンド州に出かけてきた。随分長いこと自然のなかに身を置いていなかったので、久しぶりに川でのラフティング(ゴムボートでの川下り)とヒマラヤ登山を楽しんできた。

ラフティングをしながらガンジス川の岸にあるキャンプ場で2泊したあと(残念ながら防水カメラを忘れてきたので川下りの写真は無し)さらに車で5時間程北上してチャンドラシーラ山への登山に向かう。2日半ほどの短いルートだが、それでも4130メートルの頂上への最後の登りは結構きつかった。

雲がかからない朝のうちに景色を楽しむため、最終日は午前5時前にキャンプを出発。途中からあたりが前夜に降った新雪に覆われてくる。頂上へはもう道らしきものもなくなってしまい、滑る急斜面を息を切らしながら一歩一歩少しずつ登っていくしかない。登山なんてもう数年ぶりなので、酸素の薄さも手伝ってかなりしんどい。それでもようやく到達した頂上からの眺めは、そんな苦しさも吹き飛ばしてしまうような見事なものだった。

インドの都会、特にムンバイのようなクレージーな超人口過密都市の喧噪のなかにいると、ときどきその混沌さに嫌気がさしてくることがある。ウッタラカンドでの数日間は、ムンバイでの日常とは全く違ったインドを経験させてくれた。下流のバラナシあたりでみるような汚染されたガンジスではなく、まだ澄んだ、そして肌を凍らせるような冷たいこの「聖なる川」で泳いだ僕は、すっかりリフレッシュし、心身の充電もできたような気分になったものだ。だけどヒンドゥー教徒が信じるように、これまで犯した罪がすべて洗い流されたかははなはだ疑問だが。

(もっと写真を見る http://www.kunitakahashi.com/blog/2012/04/25/trekking-to-himalayas/ )

「あの日」から1年 Vol.2

2012-04-11 11:22:52 | 日本
畠山フク子さん(81)宮城県気仙沼市

フク子おばあさんと出会ったのは昨年3月、気仙沼の瓦礫のなか。大型漁船がうち上げられていた湾沿いの新浜町だった。

「貯めたお金を、探してるの。火事があっても焼けないように、消防士さんの服と同じ布で包んでおいたんだけど、どこに流されてしまったのかねえ。。。」

遺産として、息子のために貯めてあった箪笥貯金だ。少なくはない額だったが、結局このお金は見つかることはなかった。それどころか、瓦礫の上を行ったり来たりしているうちに、腰も痛め4ヶ月入院する羽目になってしまった。

「夜になると咳ばりしてたし、足も弱ってたので、息子に行くなといわれてたんだけど、黙ってさっささっさと行き来してたの。午前中にご飯食べていって、今度お昼食べてもまた行って、そのうちどうも腰が痛くなってきたなあ、と思って」

退院し、9月に仮設住宅に入居。震災前に介護センターに入所しており助かった夫の興治朗さんも10月に退所し、現在は2人で暮らしている。 興治朗さんはほとんど動くことができず、寝たきりだ。

「ケースワーカーさんが運転して看護士さんつれてくるの。毎週月曜日。『おばあちゃん大変だねえ』というんだけど、いつものことだもの。大変でもねえよ。わたし自分で頑張れるだけ頑張っからいいんだ」

トーンは高いが、なんだか心地よいやわらかさをもった声で話すフク子おばあさん。今年で81歳になるが、まだまだ気丈だ。

住んでいた土地は地盤が沈下し、もう家を建てることはできない。気仙沼市の現在の計画では公園になるようだが、まだはっきりとはわからない。市役所にかけあったこともある。

「役所に自分の土地さ勝手に公園にされても困るって、言ってきたの。だけど、『5年くらいかかるからどうなっかわからないんです』と言われたの。もう私たちが生きているうちに、良くはならないね」

歌が好きなフク子おばあさん、若い頃からよく歌っていたという。

「夜寝ててね、なんだか、頭が変になるから、夜中の12時あたりになったら、歌うたってるの。じいさんが歌えーっていうときは一晩中歌ってっけど、昔のようには歌えねえんだよ。調子っぱずれになってしまって」

頼むと、ちょっと照れくさそうにしながらも、やさしい声で一曲歌ってくれた。「お吉物語」だった。



泣いて昔が返るなら

なんで愚痴など言うものか

花のいのちは一度だけ

よしておくれよ気休めは

。。。


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