Kuni Takahashi Photo Blog

フォトグラファー高橋邦典
English: http://www.kunitakahashi.com/blog

ブログ更新と書き込み数の関係

2006-02-26 22:39:42 | 報道写真考・たわ言
くだらないことを書こうと思う。くだらないけれど、このブログに関係のあることで、実は僕としても結構気になっていることだ。

忙しかったり、単に怠惰になってブログの更新がままならないことが増えてきたが、アップデートの回数が減っているときは、書き込まれるコメントの数は逆に増えるということに最近気づいてきた。

ほぼ毎日ブログを更新していたときは数件しかコメントが書き込まれないのに、数日間更新せずに放っておくと結構な数の書き込みがされる。これは要するに、更新の合間が空くことによって、読んでくれている人達に内容を吟味して書き込む余裕ができる、ということなのだろうか。毎日ブログを更新したとすると、テーマがすぐに変わってしまうので、ひとつのことでいろいろな人がじっくりと意見を交錯させる時間的余裕がなくなってしまうのかも知れない。死刑のことを書いた前日も、チャベスの集会について書いた2月6日にしても、その翌日に別なテーマでブログを更新していたとしたら、あれほどいろいろな書き込みがされたとは思えない。

そうだとすれば、毎日ブログを更新するのは必ずしもいいことなのではないのかも、などと思ったりするのだ。

それとも、単に毎日のブログ更新を面倒に思う僕の都合のいい解釈に過ぎないのだろうか?

まあ、もともと日記のつもりで始めたブログだから、本来ならば人が読んでいようが読むまいが自分が書きたいときに書くべきで、コメントの数を気にする事自体が不純なのかも知れないけれど。。。

それでもやはり、気になってしまうのだ。

死刑延期

2006-02-23 08:52:15 | 報道写真考・たわ言
2日前になるが、通勤途中の車のラジオでこんなニュースを耳にした。

カリフォルニア州で、殺人犯の死刑執行の直前に、担当となっていた麻酔医2人が職務を拒否したために死刑が延期になった。麻酔医たちの言い分は、死刑執行に主要な役割を果たすことが「医者としての倫理に反するため」であるからだという。

さらに、その日の夜に急遽変更された2度目の執行計画も、鎮静剤をうつ有資格の医者を州内からみつけることができずに再度延期になった。州の法律で、殺される死刑囚が肉体的な苦しみを伴わないように、このような医者の立ち会いが義務づけられているためだ。これによって今回のケースはおろか、現在カリフォルニア州で予定されていた死刑執行は事実上すべて延期となってしまった、ということだ。

「死刑」。。。人間が他人の命を「合法的」に奪う制度。

死刑を巡る議論は、単純ではない。

以前ジャーナルにも書いたことがあるが、( http://www.kuniphoto.com/kj_story01.htm ) 僕は基本的には死刑制度に反対である。やはり合法的な殺人は認めがたいし、なによりも冤罪が多すぎる。しかし、それも単に頭で考えた論理に過ぎないことも分かっている。もし、僕の両親や弟妹。。。愛する人を無惨な仕打ちで殺されてしまったとしたら。。。そうなったときに悠長にもまだ死刑反対、などといっていられる自信は、ない。恐らく、犯人を殺してやりたいと思うだろう。それもできるならこの手で。

このカリフォルニア州の死刑囚は、25年前に17歳の女子を虐待し、レイプし、そして殺害した。

犠牲者となった女の子の母親は、死刑執行延期の知らせを聞いて、こう語ったという。

「こんな司法制度は馬鹿げています。。。犠牲者のほうが殺人犯よりももっと苦しんでいるというのに。。。」

死刑制度に対する議論には、妊娠中絶問題と同様、これだという正しい答えなどありはしない。

人の命のことだから。


極寒のシカゴ

2006-02-19 09:10:55 | シカゴ
マイナス15度C。。。。今朝のシカゴの気温だ。

冷たい風が吹きつけるときに感じる体感温度はマイナス20度C以下にもなるという。。。極寒、である。

幸い今日は室内での仕事しかはいっていないので助かるが、こういう日に長時間外にいなくてはならない撮影のときはさすがにきつい。数年前にボストンでアメフトの試合を撮ったときもこのくらい寒かった。靴下を3枚重ねて履いていたにも関わらず足先はしびれるわ、鼻水は凍るわ、あげくに2台持っていたカメラのひとつがあまりの寒さに動かなくなった。おまけにシャッターを押さなくてはならないので、あまり厚い手袋をすることができない指先は凍傷寸前に。。。散々な思いをした。間違いなく僕がこれまで経験した中ではもっとも寒い中での撮影であった。

雪は頭痛のタネだし、寒いのも嫌だから、冬は苦手だ。自分は暑いのは結構平気だから、完全な夏型人間だと思っている。

それでも、冬の朝にドアを開け外に出たときの、あの冷たい空気が肌をさしてくる感覚は嫌いではない。空気も心なしか新鮮な気がするし、身もしゃきっと引き締まるような思いがする。もちろん、長時間外にいなくてはならない状況であれば論外だが、休日などに散歩にでる程度ならば、寒気のなかで頭を冷やすのも悪くはない、と思う。

ただ、今日のような極寒の日だと、歩き始めて5分もしないうちに鼻のなかまで凍ってきてしまうのが難点だけれど。。。

(写真:昨年の冬にシカゴのミシガン湖沿いで撮ったものをグリーティングカードにした。風で吹付けられた湖の水が巨大なつららとなったのが、これを見たときはさすがにたまげた)


現実逃避

2006-02-17 20:21:04 | 報道写真考・たわ言
シカゴに戻ってきてから一気に忙しくなった。

まあ取材から戻ってくるといつもこんな感じではあるのだが、留守中に溜まっていた雑用のためにしばらく忙しい日々が続いている。

取材にでているときは幸せだ。写真のことだけを考えていられるから。。。

家賃や電話代、クレジットカードの支払いや毎日届く郵便のこと、それから食料品の買い出しにいたるまで、そんな日常の雑用を考えずにすむ。取材中はホテルで寝起きするから、掃除も洗濯も人任せ。外食ばかりだから、食事を作る必要もない。いい写真を撮ることだけに気を回していればいい。

今回は、帰ってきたのがちょうど自動車保険の契約が切れた後だったことと、確定申告の時期が迫ってきていることでよけい面倒な思いをしている。

シカゴはボストンよりも自動車保険が高くて閉口しているので、(昨年度は2000ドル以上払った!!)なんとか今年はすこしでも安い保険会社を探そうといろいろ電話をして見積もってもらっているが、それに随分時間がかかってしまった。5、6件あたったあげくに今日ようやく少しばかり安い金額で契約できた。

確定申告の準備も面倒で、昨年使った諸々の経費を分類し整理したものを会計士に提出しなくてはならない。これは少なくとも半日は根を詰めて机に向かわないとできないので、次の休日にでもやるしかない。3月の後半には日本に戻る予定だし、その前に出張取材などはいるとこれをやる暇がなくなってしまうので、早く済ませておかないとトラブルになる。

まあどこに住んでいようがこういう日常の雑用はついてまわるものだろうが、やっぱりそんなことを気にしなくていい取材にまた早くでたいものだ。。。。

だけどこれは単なる現実逃避というんだろうなあ。


アレックスとの別れ

2006-02-14 09:32:01 | 中南米
このところすっかり、筆無精になっていた。というより移動が多くて忙しかったのだけれど。。。

ベネズエラからシカゴに戻ってきた。

カラカスを発つ前日、スクータータクシーのドライバー、アレックスにダウンタウンまで乗せてもらい、最後の用事を済ませた。ベネズエラに着いたその日から、カラカス滞在中は毎日のようにお世話になったドライバーだ。実際は僕が金を払って雇っているのだが、そういう雇用関係や、言葉の壁を超えて彼とは友人のようになっていた。

僕の通訳を乗せていたやたらに陽気なドライバー、アビマエルに比べて、やや寡黙なアレックスだったが、それでもラテン気質はそのままで、2つのスピーカーを搭載した彼のスクーターからはいつもガンガンとメレンゲやサルサが鳴り響いていたものだ。

僕は取材にいく先々で、自分用のお土産としてその土地の音楽CDやテープを買ってくることが多い。滞在中によく耳にしていたものがあれば必ずそれを購入してくることにしている。音楽と思い出が強く結びつくから、家に帰ってきてからも、それを聴くたびに取材中におこった出来事や出会った人々が心に蘇ってくる。そういう感覚が好きなのだ。

この日、ダウンタウンで買い物を済ませた僕に、アレックスは2枚のCDを差し出してきた。「君へのギフトだよ。。。」

僕は今回もベネズエラのCDを買って帰ろうと思い、いつもスクータに乗りながら聞いていたやつを2、3枚欲しいとアレックスに頼んでおいたのだ。

「親愛なるクニへ、アレックスより」

明らかに海賊版とわかる、コピーされたそのジャケットの裏にはボールペンでこう走り書きされていた。

「今度はいつカラカスに戻ってくるんだ?」

「。。。わからないなあ。。。」

尋ねるアレックスに、特に近いうちこの国に戻ってくる理由のない僕は、下手な口約束などできるわけもなく、ただ言葉を濁すことしかできなかった。

滞在しているホテルの前で僕を降ろし握手を交わすと、急にしんみりし、うつむいて半べそになりかけたアレックス。そんな彼を見送りながら、僕も心なしか寂しくなる。

「いい滞在になった。。。」そう思った。

(写真:右端がアレックス)

チャベズ集会にて

2006-02-06 07:48:35 | 中南米
カラカスに戻ってきてすぐさまの土曜日、チャベズ大統領支持の集会を撮影した。

各地からバスで乗り付けた人々も含め、ダウンタウンのストリートは何十万(政府発表では2百万人だが、これはちょっと眉唾ものだと思う)という人で埋め尽くされた。報道者用のステージからのその眺めはなかなか壮観であったが、そこに集まった全ての人が必ずしもみなチャベズ支持者とはいえなかったようだ。

アナコの近くにある村を取材しているとき、このチャベズ支持の集会にいくという男達に出会った。貸し切りバスで村の人々がカラカスに駆けつけるそうだ。その村からカラカスまでは6時間程かかる。村から多くの人達が行くのかと尋ねると、これはもうほとんど義務のようになっているので行かない訳にはいかないという。

この集会に参加しないと、将来いろいろ不都合がでてくるらしい。例えば家を建てるとか、車や作業機械を買うためにお金を借りたいというときに、「君は集会に行かなかっただろう」という理由で、政府機関からの援助が受けられなくなるというのだ。

さらにバスに乗るときに一人当たり50000Bs(2000円ほど)が支給されるという。(これは地域や村によって様々らしい)ここではビール一瓶が70円、軽食ならば2-300円ほどの値段なので、2000円といえども馬鹿にできない。

こんな具合なので、チャベズ勢力の強いコミュニティーに住み、自分の家族を養えるような仕事を持っていない彼等のような人達にとっては、チャベズが好きであろうがなかろうが、集会参加は必然になってくるわけだ。政府からの援助抜きでは生活できなるからだ。

勿論、心からのチャベズ信望者も少なくない。チャベズはこれまで無視されてきた貧困階級の救済もある程度おこなっているので、特にその利益を得られる人々のなかには熱心なチャベズ支持派が多数存在することは事実だ。

ただ、集会でチャベズがステージに登場しスピーチを始めた途端、これで役目は終わった、かとでもいうように、ぞろぞろと帰っていく人々の姿がみえたのもまた印象的だった。

大統領支持者といえども、一筋縄ではいかない国である。




不便な数日間

2006-02-05 14:25:29 | 中南米
首都カラカスから南東に車でおよそ5時間のところにあるアナコという町を数日間取材してきた。

アナコの一帯は石油と天然ガスの産地になっており、ここから算出された天然ガスが僕らの石油プロジェクトの出発点となっているシカゴのガソリンスタンドにも運ばれてくるためだ。

この町では通信手段で少々面倒な目にあった。

町のどのホテルにもインターネットの回線がはいっていないのだ。そのため忙しい取材の合間を縫っていちいちインターネットカフェまで行かなくてはならないのだが、それも夜8時くらいには閉店してしまうので、朝から夜まで取材が続くときなどはメールチェックもままならない。おまけにカフェのコンピュータには日本語など入っていないので、日本からのメールの読み書きもできなかった。普段なら衛星電話と自分のラップトップをつないでインターネットを使うのだが、今回のベネズエラ滞在はそれほど長くはないし、ニュースの取材ではないので重くてかさばる衛星電話は持参してこなかったのだ。おかげで不便な思いをすることになってしまった。。。

さらに悪いことに、カラカスで使っていた携帯電話がアナコでは全然使えなくなってしまった。この地域では、カラカスとは違うネットワークが使われており、政府の政策でローミングができなくなっている。一体どういう訳でこんな政策をとっているのか理解しかねるが、とにかく不自由極まりない。ローカル以外の長距離電話をかけるためには、これまたインターネットカフェにいって公衆電話を使わなくてはならないのだ。

メールチェックができない、携帯電話がかけられない、というだけで、随分心細い思いをしたが、いかに普段の生活でインターネットや携帯電話といったコミュニケーションの手段に頼っているかということを思い知らされた数日間であった。