Kuni Takahashi Photo Blog

フォトグラファー高橋邦典
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ミャンマー 「国なき民」ロヒンジャ問題

2013-02-18 13:54:59 | アジア
前回のブログアップから随分と時間が経ってしまった。12月終わりに娘が生まれたことで、生活パターンががらりと変わってしまい、しばらくプログどころか睡眠時間を確保するほうが重要だった次第。

しばらく前になるが、ミャンマー西部ラカイン州でニュースとなったロヒンジャ問題を撮影する機会があった。

ベンガル系ムスリムであるロヒンジャと、ラカイン仏教徒は不安定ながらも長年この地域で共存してきたが、昨年5月におこった、ロヒンジャ男性3人によるラカイン女性のレイプ殺人をきっかけに両者のあいだで大規模な武力衝突が続き、100万ともいわれる難民が発生した。その多くはロヒンジャの犠牲者だ。

港町シットウェの郊外にあるロヒンジャの避難キャンプを訪れた。衝突で家を失った数百家族が掘建て小屋に住み、最近来たばかりと思われる何家族かがテントをつくっている。一人の若者が不満を漏らした。

「仕事どころか生活に必要なものなど何もない。ここにはNGOも来ないから、テントをつくるプラスチックシートさえないんだ」

一方、町中の寺院には家を焼かれた12組のラカイン仏教徒の家族が身を寄せ合って暮らしていた。

「奴らは火のついた自転車の車輪を窓から投げ込んできたんだ」

ロヒンジャの群衆が彼の家を襲ってきたときのことは忘れない、一人の男性はこう語った。

長年ミャンマー政府から「不法移民」とみなされ、市民権さえ認められていないロヒンジャ。属する国のない民として、外国メディアは彼らに同情的になる傾向があるが、衝突の原因はそう単純ではない。ミャンマーには130以上の民族が存在するが、人口の8割以上を占める多数派のビルマ族が主体で、その他少数民族の権利を踏みにじってきた政府の体質は軍政時代から今も続いている。ラカイン仏教徒たちは、長年のビルマ族からの圧政に加え、近年のロヒンジャの人口増加に伴う地域のイスラム化も脅威となり、ビルマ族、そしてロヒンジャの双方から侵害されているという危機感を募らせていたのだ。昨年の暴動は、そんな長年蓄積された不満が爆発したともいえるだろう。

寺院に避難した前述の男性は、近所に住んでいたロヒンジャについてこう言い放った。

「以前は友達だったけどね。もうそんな関係には戻らないよ。二度と...」

(もっと写真をみる http://www.kunitakahashi.com/blog/2013/02/18/rohingya-conflict-myanmar/ )