Kuni Takahashi Photo Blog

フォトグラファー高橋邦典
English: http://www.kunitakahashi.com/blog

平和な風景の裏側で

2010-07-29 17:28:21 | アジア
毎日雨続き。来月あたまの日本帰国前にやらなくてはならないデスクワークに追われる毎日だ。

昨日、ダウンタウンでミーティングの合間に少し時間があったので、久しぶりに海沿いのマリーンドライプを散歩することにした。空はどんよりと曇り、光もグレイ。特に写欲がわくような日ではなかったけれど、とりあえず海岸まで降りてみる。

「うーん。。。」浜辺に降りると、そこに広がる景色に思わず唸ってしまった。砂浜は一面ゴミだらけ。

毎日1400万人が所構わずゴミを吐き出すムンバイ、お世辞にもきれいな町などといえたものではない。悲しいかな此処に住んでいると、路上や空き地に捨て散らかされたゴミさえ当たり前の光景に思えてきてしまう。そんな景色に慣れた僕でも、無数のビニール袋や小さなゴミが、浜辺にとめどもなくうち上げられるこの姿にはさすがに胸が痛んだ。

ほんのわずかな救いは、ゴミ拾いのオヤジ達が徘徊してボトルや缶などを集めていたこと。リサイクル工場に持っていって売るためだ。もちろん彼らは自らが生き延びるためにゴミを拾っているわけで、浜辺を綺麗に、などという意図なんぞは全く持ち合わせていないだろう。それでも実質的には環境向上に貢献している事にかわりはない。

アラビア海に面するムンバイにとって、海岸線は町の魅力のひとつだ。そぞろ歩く人たちや家族ずれ、肩を寄せ合う恋人達。。。そんなマリーンドライブやシーフェイスの平和な光景には心が和む。

残念ながら昨日の発見は、その和やかな景色の裏にひそむ悲しい現実を知らしめてくれたのだった。

(もっと写真をみる:http://www.kunitakahashi.com/blog/2010/07/29/dirty-reality-behind-beautiful-scenes/ )

「森の小人」たちのいま

2010-07-17 11:44:58 | アフリカ
今月号のデイズ・ジャパンにコンゴで撮ったピグミー族の写真記事が掲載された。

恥ずかしながら、数ヶ月前にこの取材をするまで、ピグミーがこれほどひどい扱いを受けているとは知らなかった。彼らは内戦、または政府の森林保護政策によって90年代に森を追われ、結局政府からそのまま見捨てられたようなものだ。他の部族から「プッシュマン」と蔑まされ差別されるピグミーにとって、仕事や教育の機会を得るのは非常に難しい。

「森の小人」としても知られ、森林の中での狩猟生活を謳歌していたピグミーたち。いまや部族としての誇りも捨て、町の郊外につくられたキャンプで細々と暮らす彼らの姿をみるのは複雑な思いであった。

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http://www.kunitakahashi.com/blog/2010/07/17/pygmies-in-congo/

インドのゲイたち

2010-07-12 23:32:31 | アジア
「同性愛者間の性交渉は合法」とするデリーの高等裁判所の判決から一年。数日前にこれを記念する集会を撮影してきた。

正直言って、たった一年前までインドで同性愛行為が違法だとは知らなかったので少し驚く。起訴されることは少ないものの、イギリスによる植民地時代の1861年に制定されたこの法律によって同性愛者が警官によって嫌がらせや脅迫を受けることは日常茶飯事だったらしい。

近年急速な経済的発展と文化的自由化が進むインドだが、性や結婚の問題についてはまだまだ保守的だ。新聞でhonor killing(家族の名誉を汚したとして当事者を殺す)や婚前交渉を原因とした訴訟の記事を見かけるのも珍しくない。

「まだまだ戦いは続いています。これからの問題はいかに社会の偏見を変えていくかです。インド人として、人間として、誇りを持って生きていくために!」

ステージにあがった女性がマイクに向かって叫ぶと、参加者たちは拍手と足踏みでそれに答えた。

(7月9日発売の「週刊金曜日」にこのテーマの写真記事掲載されました)

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http://www.kunitakahashi.com/blog/2010/07/12/one-year-anniversary-of-gay-rights/