Kuni Takahashi Photo Blog

フォトグラファー高橋邦典
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不可触民の百万長者

2011-12-28 19:56:00 | アジア
先月仕事をとおして興味深い人と会う事ができた。

彼の名はアショク・カーデ。ダス・オフショア・エンジニアリングという、海底石油採掘のためのパイプ加工をおこなう技術会社の創始者だ。彼もインドの経済発展を機に成功した多くのビジネスマンの一人であるが、アショクの珍しいところは、彼がダリット(不可触民)の出身であるということだ。

インドは50年以上も前にカースト制度を廃止したが、今でもそれは生活のなかにある程度根付いている。

アショクは、ムンバイから400キロほど南にある村で、この最底辺階層の家庭に生まれついた。彼が子供の頃、階級差別のため村の井戸の水さえ飲む事を許されなかったそうだ。この極貧だった家族には、食べ物が全くなかった日々さえあったという。

この境遇から彼と家族を救ったのは、彼の聡明さだった。学校をクラスの上位で卒業した後、兄と一緒に働き始めるが、そこでも機転がきくことと熱心な勤労態度が買われてすぐに頭角をあらわした。数年後には自ら会社を立ち上げ、現在ではこの企業は資産1億ドル、従業員が4500人に成長した。

詳しい彼のサクセス・ストーリーはニューヨーク・タイムスの記事を参照してもらいたいが、僕にとって印象深かったのは彼の性格だ。典型的な嫌みな金持ちとは正反対に、アショクは友好的で親切、僕らを暖かくもてなしてくれた。こちらの金持ちや権力者には鼻持ちならない輩も多いので、アショクのような人間に出会うと新鮮さを感じるものだ。しかし、彼のこういった好意的な性格の背景を察する事は難しくはないだろう。

「苦しみを知る者ほど他人に優しくできる」

アショクとの出会いは、僕にこんな言葉を思い出させてくれた。


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インドにウォールマート?

2011-12-24 17:31:46 | アジア
インドの小売業活性化のため、マンモハン・シン首相は先月、ウォールマートやテスコのようなスーパーマーケットチェーン店の進出を認める方針を示したが、それが大きな反発をよぶ事になり、ここ数週間インド各地でデモや小売店のストライキなどが相次いだ。

大型チェーンが参入すると、ローカルの小店舗が客をとられて危機に晒されると反対派は懸念。また、作物を卸す農家や、流通業の形態も崩れて悪影響を与えるともいう。対する推進派は、消費者にとって便が良くなるのは勿論、農家とっても、チェーンから今よりも高く、かつ大量に買い取ってもらえるので、多くの中間業者が入って安く買いたたかれている今より利益があがる、と主張している。

正直なところ、ローカル小店舗はそれほど心配する事はないのでは、というのが僕の私見。ムンバイのような都市ではすべてが密集しすぎていて、ウォールマートのような大店舗を市内につくるのは難しい。そうなると郊外までショッピングに行けるのは車をもつミドルクラス以上に限られる。だいたいインドの都市ではどこの近所にもローカルショップはひしめいており、日常生活に必要な大方のものは家から歩いていけるところで調達できるシステムが出来上がっている。車社会のアメリカとは根本的に背景が異なるのだ。

いずれにしても、僕らのような、週に一度買い物に行って全部いっぺんに買い込んで来る生活に慣れてる外国人にとっては、スーパーマーケットが近くにできてくれると非常に便利にはなるんだけれどね。。。

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