Kuni Takahashi Photo Blog

フォトグラファー高橋邦典
English: http://www.kunitakahashi.com/blog

物乞いの女の子

2009-11-29 14:04:40 | アジア
不覚にも先週デング熱というを患ってしまい、40度の高熱と体中の痛みで数日間ダウンしてしまった。ジャイプールで何度か蚊に刺されたので、たぶんそれが原因だろう。それでもなんとか木曜日までには体力も回復し、ムンバイ・テロ事件一周年の撮影には間に合った。

一周年追悼に関しては、集まった人たちの感情もいまひとつで、病み上がりの体に鞭打って行ったわりには写真的にはほとんど収穫無し。テロの標的のひとつとなったタージ・ホテル前の広場に集まった群衆も、犠牲者の追悼というよりは半ばお祭り、といった感じの雰囲気であった。

そんな中途半端な追悼イベントよりも、この日タージに向かう途中で遭遇した一人の女の子の姿が僕の脳裏に焼き付いた。

彼女は交差点で停まったのタクシーの窓にべったりと張り付いてきた物乞いだった。物乞いの子供など珍しくもないので、はじめは特に気にも留めなかったのだが、普段見かけるような、窓をたたいたり、腕を車内に突っ込んでくるアグレッシブな子供達と違って、この女の子はただ静かにじっと僕を見つめているだけだった。その何とも例え難い寂しげな瞳に惹かれて、僕は窓越しにカメラを向けた。逃げる訳でもなく、微笑む訳でもなく、彼女はただレンズを見つめ返してきた。

5秒だったか、10秒だったか。。。僕らはファインダー越しに視線を合わせるながら、短い時を共有した。

やがて信号が青に変わり、タクシーが動き出すと共に彼女の姿は後方に滑り去って行った。

子供や赤ん坊をだしに悪用して小銭を稼ぐ輩が多いので、僕はよほどのことがない限り物乞いに施しはしない。それでもさすがにこのときは少しばかり心が揺らいだ。

久々の取材

2009-11-22 14:00:03 | アジア
昨日ムンバイにもどってきた。
女性住民の大半が売春婦となって出稼ぎにでる村と、児童労働の問題など、短い間にいくつかのストーリーをこなしてきたので忙しかったが、そこそこ撮れたかなと思う。ムンバイに移ってきてから雑用に追われて思うように撮れなかったので、しばし日常を離れ撮影に集中できた。
とりあえずは写真の整理と原稿書きに追われそうだが、ビデオも撮ってきたのでこちらの編集にも手間がかかりそう。

ちょっとしたいい経験

2009-11-14 19:32:21 | 報道写真考・たわ言

先週末銀行のATM(自動預け払い機)で現金を引き落としたあと、うっかりしてカードをそこに忘れてきてしまった。さらに間抜けなことに、それに気づいたのがそのまた2日後。

とりあえずネットで残高を照会してみて、他人に引き落とされた様子はないので安心したが、アメリカの銀行のカードだからこれを再発行してインドまで届くにはえらく時間がかかる。もしカードを見つけた人がよほどの正直者だったとしても、不効率を極めたようなこのインドで、まずカードがみつかるわけはないよなあ、とあきらめつつも、一応ATMの場所に戻ってみた。

ATMには普段セキュリティーガードが常駐しているが、英語が通じない。地元の友人に電話での通訳を頼みながら彼に尋ねてみると、とりあえずはダウンタウンの支店に行けという。

渋滞の中タクシーに乗って40分あまり。支店で訳を説明すると、15分ほど待たされた挙げ句、カードが見つかったから1時間後に戻ってくるように、とのこと。

「!!!」

99パーセントあきらめていたので、その答えが信じられなかった。

それまで僕は知らなかったのだが、預金者がATMでカードをとり忘れた場合、15秒ほどでそのカードは機会の中に収納されてしまうのだそうだ。一日の終わりに管理会社が現金を補充しにくる際にこういうカードが機会の中から見つかると、中央管理局に届けられるシステムになっているという。

官僚主義とビジネスのあまりの効率の悪さに閉口していた僕も、無事にカードを手にして少しばかりインドを見直したのだった。

明日から北部のジャイプールに4日間ほど取材に出かけてくる。これまで雑用に追われてゆっくり撮る時間がなかったので、久しぶりのいい機会だ。

写真酷評

2009-11-05 01:55:02 | 報道写真考・たわ言
ずいぶん前回の書き込みでは自分の写真に対してクソミソに書かれてしまったが、たかがブログに載せた写真1枚2枚をみただけで、まあよくも「会社の力がおおきかった」だの「腕が落ちた」だののたまってくれるなあと思う。その絶対的判断力にはこちらが感心してしまうほどだ。

いちいちそういうコメントに目くじらをたてるほど暇でもないのだが、こういう理不尽な中傷をうけ続けるのもあまり気分のいいものではないので、いちおう釈明くらいはしておこう。

ここインドでは、日本やアメリカに住んでいると想像できないほど物事の進むスピードが遅い。アパート探しやビザの更新、携帯電話やネットの契約に何日も何日も気の遠くなるような時間と労力をとられながら、引っ越してからこの4週間、撮影に出かけられたのはほんの3、4日だけ。まともな撮影取材などようやく始動したばかりだ。

少しは気に入ったものも撮れはじめているが、それでもそういう写真はこの時点ではブログには載せられない。ブログに載せてしまえば、それで世間に発表してしまったことになるから雑誌やその他メディアに売るときの価値が落ちてしまうからだ。ブログはあくまで日記のようなもので、収入になるわけでもないし、そこで写真をみな発表してしまってはこちらの生活が成り立たなくなる。

これまでは新聞社のスタッフだったから撮ったものはトリビューンに掲載されるし、写真が新鮮なうちにどこかに売らなくては、という心配はなかった。

いまはフリーだから自分の撮った写真の扱い方も大きく変わっているのだ。

。。。。ああ、ここまで書いて、なんでこんなことをいちいち言い訳がましく書いてるのか、馬鹿馬鹿しくなってきた。

やることは山ほどあるし、時間をもっと有効に使わなくては。。。

さらに写真酷評をしたい方はご自由にどうぞ。ただ、せめて名前かペンネームくらいは名乗ってもらいたいものだけれどね。