Kuni Takahashi Photo Blog

フォトグラファー高橋邦典
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鉄鋼の街

2006-06-10 21:30:34 | 北米
取材で昨日からピッツバーグに滞在している。

ここを訪れたのは初めてで、昔、鉄鋼業の街として栄えたという事くらいしかこの街についての知識はない。

そんなわけで工業の街とか、公害の街とかいう、あまり良くない先入観しか持っていなかったのだが、ダウンタウンには比較的新しいビルが建ち並び、街並みも綺麗で驚いた。

地元の人によれば、60年代あたりから鉄鋼業は廃れ、工場は次々と閉鎖されていったそうだ。いまでは街の中心部には工場はひとつも残っていない。近年は、病院や大学、コンピューターソフト関係の会社を誘致することによって、再生化を図っているという。どうりで街が小綺麗になっているわけだ。

しかし、それでもこの街は未だに「鉄鋼」で溢れている。

たまたま入ったレストランでは、メニューのカバーが鉄鋼を連想させるが如くアルミでつくられていたし、街にはアイロン・シティー(鉄の街)という名の地ビールがどこの酒場にもおいてある。ダウンタウンには、合金のような銀色の外観をもったビルまで建てられているし、トレードマークとしての鉄鋼はいまでも健在だ。

「白いシャツを着てこの街を歩くな」

鉄鋼業が最盛のころ、こんな言葉があったそうだ。

工場から排出される煙とすすで、服が真っ黒になってしまうから、というわけだ。

そんなネガティブなイメージにも関わらず、おそらく当時のピッツバーグの市民たちは、アメリカの経済を支えてきたこの街の鉄鋼業を誇りに思っていたのだろう。そして、現在でもその当時を「古き良き時代」として懐かしんでいるのかな、と思う。

だから、鉄鋼業が姿を消して何十年も経つのに、今でもピッツバーグは「鉄鋼の街」なのだ。

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9 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (星河)
2006-06-11 14:15:32
「少しずつ」でも、時代は動いているのですね。
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Unknown (tomocapa)
2006-06-11 16:00:28
日本人で「わが町を誇りに思う」というひとは少ないなぁと感じてます。ぼくは生まれも育ちも東京の隣、埼玉県ですが、なんとなく「わが故郷」と思えないです。

きっとピッツバーグに古くから住んでいるひとたちは「鉄鋼の街」としての「わが街」を誇りに思っているんでしょうね。

ひとびとの諍いのもとになる国境とか、そういう意味ではなく「わが国」とか「わが街」と誇りに思えるのは、なんだか良いなぁと思ってしまいます。
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開拓者 (菜穂)
2006-06-11 16:15:22
「自分たちで作り上げてきた街」という意識が根底にあるのかもしれませんね。



日本だと、そんな気持ちはあまり無いでしょうし・・・



もっと、愛着を土地にもつ、関わることが、自然にできれば、・・・これから、良い方向に「開拓・変革」したい!って、モチベーションがピッツバーグにはあるのでしょうね^^なんだか素敵ですね☆





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(故郷)人 (bluesnow)
2006-06-12 08:56:04
アメリカはなんといっても権威(英国)に反抗してできた国ですから、中央集権(連邦)を嫌う地方分権メンタリティですね。自分の住んでいる町を大事にします。自分が払った税金が使われる町なのですから。日本はまだまだ中央集権的なのでは。。。「日本」人と国家を背負わされるのが嫌になった私に、「神戸人」と友達がつけてくれました。気分がいいです。生まれ故郷によって、食べものも言葉も、もちろんそれぞれの町の社会的背景も違うわけですから、これからは(故郷)人というアイデンティティを広め、think globally, act locally でいきましょう(笑)
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キューポラ (小俵小太郎)
2006-06-12 13:47:04
団塊の世代に片足を突っ込んでいる私の世代では、「鉄は産業の米、国家の米なり」と教育されたりしました。

産業も国家も鉄を消費して成長するということでしょうか。

ピッツバーグという街は、建国間もないアメリカの土台を支えた都市なのでしょうね。



日本では、こういう映画もありました。

キューポラのある街

http://www.cinema-today.net/0511/03p.html



映画では主人公(吉永小百合)が川原で初潮をむかえるシーンがあったりして、思春期の世代をうならせたり(なんでや?笑)しましたが、鉄工所の街とそこに住む活力あふれる人間模様が自然にマッチしていて感動を覚えたりしました。ピッツバーグもかつてはそういう街だったのだろうかと想像するしだいです。
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自分で選ぶ (ゆうこさん)
2006-06-13 13:48:22
故郷って素敵な響きですね。でも私は生まれて育った大阪から昨年九州に自分の意志で移りました。仕事も一から、住む場所も一から全部自分で選んできめて、今はとても落ち着いた気持ちです。故郷の大阪も大好きだけれど、自分で生きる場所として選んだいまの土地はかけがえのない場所です。大事にここでの生活を作っていきたいなと思ってます。アメリカの開拓民もそういう覚悟と希望を持って町を作ったのかなと感じました。
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Unknown (maru)
2006-06-15 20:08:32
そろそろ気合の入ったシブイ写真見せてください!!
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Unknown (Kuni Takahashi)
2006-06-16 23:23:40
「気合の入ったシブイ写真」はここんところ全然撮っていません。正直言って欲求不満です。。。。
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気をつけてくださいね (bluesnow)
2006-06-23 21:59:42
”正直言って欲求不満です。。。。”



気をつけてくださいね。奇病の人が来たら、眼を輝かせてメスを握りたがる医者みたいにならないように。。。(笑)といって、それが進歩につながるわけですから、ほんとに”業が深い”(?)職業ですよね。医者もジャーナリストも。。。大変な仕事です。がんばってください。



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