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星降る夜のリストランテ

 50年も前の夏の暑い盛り、ブリキのバケツの中に井戸水が汲んである。その中にはトマトが何個か浮いていた。三時になるとよく冷えたトマトをさいの目に切り、砂糖をかけて食べるのである。トマトは果物だった。

 しばらくするとケチャップが生活の中に入ってきた。アメリカでホットドッグとケチャップの相性が非常に良かったように、日本ではケチャップとお米の相性が非常に良かったのである。チキンライスやオムライスなど、米はケチャップと赤い糸で結ばれていたとしか思えないくらい良く出来た組み合わせである。

 大学に入るとスナックに入りびたり、いつもジンフィズにナポリタンであった。スパゲッティのケチャップ和えである。日本人のスパゲッテイのイメージはこのナポリタンとミートソースで作られたといっても間違いではない。

 このトマトであるが、ヨーロッパではトマトとは呼ばれていない。イタリアではPomodoro=黄金のリンゴだし、ドイツでもgoldt apffel=黄金のリンゴ、オランダ語でもguldt apple=黄金のリンゴである。

 面白いのがフランス語でpomme d'amours=愛のリンゴと呼ばれている。また、イギリスでもこれを直訳し、love appleと呼ばれているのである。

 なぜ愛のリンゴと呼ばれているのだろう。もともとリンゴは果物一般を指す言葉であった。果物はベリーかリンゴかのどちらかで呼ばれていたのである。

 蛇にそそのかされてイブが食べたリンゴとはだから果物を指していて、イチジクじゃないかと言われている。

 そしてなぜ「愛の」かというと、トマトに媚薬効果があると信じられていたからである。あるある大辞典で被験者50人に実験したら、その効果が確認できたなんてことになったら、スーパーマーケットからいっせいにトマトが姿を消すなんてことになっていたかもしれない。

 日本の食堂で塩や醤油が各テーブルにおいてあるように、アメリカではケチャップがおいてある。ヨーロッパでは言わないと持ってこないようである。

 星の降るような夜、リストランテで一味足りないと思ったら、「すみません、ケチャップありますか」と聞いてみましょう。日本人だけに許された特権のようです。日本ではスパゲッテイにケチャップをかけて食うと、かの地にまで伝わっているようですから。


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