熊本熊的日常

日常生活についての雑記

こぼれ梅

2014年02月23日 | Weblog

「こぼれうめ」という言葉を初めて耳にしたのは落語「鷺とり」を聴いたときのことだ。雀を捕るのに、「こぼれうめ」を播いて、それを雀が食べて酔って寝たところを掃いて集める、というのである。「味醂の搾り粕」という説明が付いていたかもしれない。味醂というのは酒だから、酒粕のようなものかと思ったが、「播く」とか「食べる」ということと酒粕とが結びつかないまま何年も過ぎていた。

先日、味醂の買い置きが残り少なくなったので、ネットで検索して岐阜の酒造業者から購入した。味醂と料理酒と酒粕と「こぼれ梅」がセットになった商品だった。今まで味醂は生協の宅配を利用していた。原料米はタイのものを使っているが、とても美味しい味醂だったので、カタログに載るたびに注文していた。美味しいといっても、そうそう大量に使うものでもないので、いつしか何本もたまっていて、宅配を止めて丸2年近くになろうという今頃になって、ようやく使い切る目処が立ったのである。同じものを探して、というのでもよかったのだが、新しいものも試してみようと検索してみた次第である。

「こぼれ梅」というのは梅に関係があるのかと思っていたのだが、単に味醂の搾り粕だ。ただ、一見したところ、白梅の花びらを集めたように見えないこともない。「こぼれ」というのは「こぼれ咲く」という意味なのか「散る」という意味なのか、判断に迷うところだが、どちらでもいいような気もする。ただ、「散る」よりは「こぼれ咲く」ほうが験がいいだろう。搾り粕を花に見立てるというのも粋だ。

ところで、今日は妻がこぼれ梅をベースにしたソースを作り、それをパスタに絡めた料理をこしらえた。酒粕のほうは板状になっていたので、素朴に焼いて醤油をつけていただいた。どちらも旨かった。味醂も酒もそれらの副産物も元は米だ。こういうものを旨いと感じるとき、自分が生きている文化の根幹に触れたような気持がして安堵するような嬉しいような気分になる。


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