外国の青年に
チョコを割って
手渡す
もし
次の世
彼の国に生まれたら
果実をいただくかもしれない
もちろん
ここにいたことは忘れて
いや
わたし
前の世で
彼の国で
誰かから
果実をいただいたのかも
しれない
早朝の労働中に
5時45分
出身を訊くと
ベトナム
NGHEAN(ニャーン)
「ホーチミンさんのふるさと」
彼はカャJモフ日本語で
言った
29歳だと言う
もっと若く見える
ナショナリストかもしれないけれど
せめて
この国で労働している間
辛いことの方が多いだろうゆえ
わずかでも
甘い思いをしてほしい
と思
彼はホーチミンさんのふるさとへ帰った時
ふっと
割ったチョコの味を
思い出してくれるだろうか
そうならばうれしい
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あの人に
お礼とお詫びで
タオルを手渡すと
温泉のチケットを二枚くれた
「たくさんあるから」
あの人はいつも
そんな言い方をして
楽にしてくれる
あの人は
黄色い半月の月に
ホースで水をかけ
遊んでいた
鳥の大きな群
南南西へ向かった
V字だろうけれど
ビルとビルの狭い空の一瞬
V字は乱れていた
土に
苔