kotoba日記                     小久保圭介

言葉 音 歌 空 青 道 草 木 花 陽 地 息 天 歩 石 海 風 波 魚 緑 明 声 鳥 光 心 思

伏見

2013年02月08日 | 生活
愛知県
名古屋市
伏見界隈
朝に小雪
最高気温4度
最大風速9
寒風は
職人たちを
やぐらからおろし
温かな場所へ
動かした
わたしたちは
行き場がない

中学生と
小学生に混じって
銀色のテーブルで
ささやかな日光を浴び
生姜入りのみそ汁を飲んだ
そして
セブンイレブンに行き
100円で買える挽きたてのコーヒーを
カップで飲んで
暖をとった

風の通り道は
南北に貫き
ビルとビルの間は
寒が
吹き抜け
「わたしたちは いつも裸 いつも孤独」
と言ったのは
どの音楽家だっただろうか(「blood」 this mortal coil)

それを忘れて
この寒を記憶する
いずれ
この伏見の風道の風圧も
忘れてゆくのだ

二杯目のコーヒーを買って
緑のとなりに座り
陽の下
緑の表層とともに
わたしの表層も
光を取り込む
内部へと
脈を通して
交通よ
歌え
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ゴイサギ

2013年02月07日 | 生活
空が広い
濡れた田
ゴイサギ
頭上で二度
鳴く
それを聞いた
それを見た
音は空気を振動させたあと
ゼロになって消えた
ゴイサギも
消えた
今はどこの塔に
いるのだろう
それとも
小川の面の数センチ上を
下流に向かって
飛んでいるのか

空が広い
濡れた田
今が冬の底
過ぎれば草木
花の色
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

小屋にて

2013年02月06日 | 生活
二月の雨にしては
冷たくない
そのように感じて
一年前の記憶を
誰それに訊いてみる
「去年は12月と1月が寒かった」
すっかり忘れている
ただ今年の二月は寒くはない

小さな小屋には
荷が所狭し
置いてあって
机の上には
書類があった
その間で
400円の弁当を食べていた
ヒーターが二つ
高速の沸騰器
黄色い電球の灯り
ここにも
幸せがある
私たちは
食べることができ
体を温めることができ
灯りで字を書くことも読むこともできる
静かな気持ちで
小窓の曇りを
手で拭って
雨は見えぬが
雨に当たって
濡れる事物を
目が
見ることができるのだ
物を考え
物を思い
記憶や
妄想さえ
自由である
わたしの頭の中は
どこへ繋がるのか判らない線をもち
外部への接続は無線になって
及ばぬところに
繋がる時がある
その至福は
この
ささやかな
小屋にいて
馬の到来さえ
予感できるのだ
馬が来れば
馬小屋ができ
藁が積まれる

ダンテの神曲を
挿絵の大型本で
何度も読んだ
あのとき
挿絵の光を
わたしの目は見ていた


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ダッシュ!

2013年02月05日 | 生活


綿




白サギ
二回鳴き
どこだろうと探すと
頭上で鳴いたのだった
白サギは西に向かった

帰路
踏切を渡り
チャンピオンベルトを買って
戻った

駅までの道
駅横の
踏切が鳴り
夜の中で
赤く点滅したので
僕も点滅した
走ってみた
小さな駅の自動改札を過ぎ
すぐに電車が来た
タイミングこそすべて
こんなふうに
ちょうど間に合った
時に
音を出して咲く小さな花
そのメロディは長調である
流れを変えるための
ダッシュ!

歌を歌った
一日中
胸に空に
白サギに
田中に
花に
綿に
繋ぐ


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

初声

2013年02月04日 | 生活
昨夜からの雨
夜の雨
日中の雨

小雨になったので
自転車を漕いでいた
薬局
電話ボックス

「学生が作った野菜」

八百屋のご主人が言った
立派な大根である
安く買えた
バックと両ハンドルに
野菜を持って
帰ってゆく時
雨が降っていることに
気がついた
雨以外の
何を考えていたのだろうか
雨が強く降っていたというのに
それを知らずに自転車を漕いでいた
雨より大事なこと
雨に濡れるより大事なこと

疲れて眠った
ずっと

ラジオを聞きながら
台所で野菜を切っていた
サカナクションが聞こえていた

夜の始まり

を聞いた
初めて
聞いた

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

腰痛星人

2013年02月03日 | 生活
風は冷たい
左官屋のコテの音
sya sya
と発し
それは技術
アートとは技術の意

そうだった
明日が立春
今日が恵方巻き

帰りがけ
腰がギクッ
とは聞こえなかったけれど
痛みを感じ
帰路
腰痛星人がいる
腰痛星人だ
とひとりごち
妙なハイになりながら
図書館に向かい
寒風の中で
恵方巻きを売っていた売り子
買ったよ

南南東を向き
黙った食べた
今日は旧大晦日
豆まきはしなかったが
ギックリの腰痛もあるのだが
座って食べた
恵方巻き

図書新聞というものがあるらしい
そこで詩人に
「大切にしたい」
と書かれていた
喜びで
飛び上がりたかったけれど
ギックリ腰である
鎮座して
感を極め
恵方巻き
南南東

年明けまで起きていよう
立春を祝おう
そう思って
フェイスブックを見ていた

ああ
たかとう匡子さん
ありがとう

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

青い道

2013年02月02日 | 生活
朝の9時半
歩道橋の下で
ばったりと友に会い
驚かす
悪ふざけをして
笑いあう
「びっくりしたよ」
「からまれたと思った」
友は古本市にゆくという

お昼前に戻ってきた
友のカバンの中身は
金子光晴やその類が
数冊入っていた
それから弁当は夜にまわして
昼食を共にした
彼はビールを飲み
僕は労働に戻った
偶然とはいえ
示し合わせたかのように
出会う人々

温かき
チュー君
夜には太巻き(間違えた)
を食べた

青い道を
知っているだろうか
僕は知っている
青い道は
南北に通り
東西に通り
途中でなくなる
空色の道
まさか
空へ続くなんて
誰がそんな言葉連鎖の
空想を

僕がする

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

いい匂い

2013年02月01日 | 生活
そろばん塾の匂い
長机
その木目
おじいさんの塾長
といっても
六畳に
何列か長机が並んでいて
僕たち子供は
畳に座って
そろばんをはじいた
そろばんの奇妙な形
チョークの粉
そろばんは退屈で
指の運動は
のちのギター演奏の方が
快楽を伴ったので
上達した
そろばんは快楽はなく
無級で塾から弾かれ
その後は
ローラーボードになった
あの角にあった
そろばん塾の匂い
のちに
学習塾になった時
喜んで通った
何故なら
あの民家の
匂いが好きだったから
おじいさんが好きだったから
寺子屋のような
学びの部屋に
僕らは嗅いでいた
静かの中で
時折
外から
豆腐売りの
鐘と声が鳴り
耳はそれを聞いたが
鼻は嗅いでいた
あの
ぼろぼろの
長机で
算数が好きになった
方程式の美しさに
子供ながら感動し
僕らは嗅いでいた
その民家の
小さな部屋で
学ぶ静けさの
いい匂いを
茶色の木の
長机に座って
すべて割り切れる
方程式に
胸は鳴り

ーーー

モンゴル800
鳴る
高架の下で
「人に喜んでもらってそれを受け取る。本当の幸せはそこにしかない」
と吉岡医師は言った
そのことを考えていた
あの大木のそばで
僕は吉岡医師の言葉を
噛んでいた
キシリトールガムと一緒に

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする