『大事に、大事に』

　

一晩中

考えていた

思っていた

夜業の体は

夜業のままで

頭の中は

空が白む時まで

そして今も

考え

思っている

悪いことをしたことと

たったひとつの命が失われたことを

天秤で計っては

いけない

それだけは分かった

蒸し暑い夜の中

スマホを見て

壁を見ていた

昨日

コロナウイルスで失った命

昨日

拳銃で失った命

比べてはならず

同じ命

ウクライナで拷問にかけられ

笑いながら頭を吹き飛ばされた

兵士の命

日本で合法殺人

死刑の名のもとで失われた命

比べてはならず

同じ命

彼のやった悪いことの

たくさん

忘れずに

哀悼の意を

蒸し暑い夜の中

胸に宿すことはできなかった

朝

「あの人はあれでいいの」

と

声が聞こえた

それでやっと

わたしは

心から哀悼の意を捧げ

疲れた体と

冴えた頭で

手を合わせた

彼の名前を呼んで

目をつむり

優しい心あれば

戦争が終わる

思いやる心あれば

主義はいらない

すべての人が

すべての人を

大事に

大事に

すれば

本当に

世界は平和になる

七夕の

短冊に

書かなくとも