最近の日経平均株価が、NY市場や世界の株価の動きに比べても、昨年末に付けた16,000円台から約2,000円下落し、14,000円台で推移し、上昇する気配がない。
安倍首相が「来年の日本株は買いだ」と豪語してから4カ月がたった。
彼は4月から実施した消費増税が、経済成長のマイナス要因に殆どならないと、財務省官僚から言い含められて、決断したのであろう。
しかし、筆者は消費増税の悪影響は、これから本格的に景況感に現れると見ている。
ここ十年以上、実質的な手取り賃金は、長期減少傾向を示していた。
今回の長く続いたデフレ環境が、果して本当に日本経済には、マイナス要因であったのだろうか?
筆者は、日本の賃金水準が、隣国である中国や東南アジア諸国に比べて、余りにも高すぎるために、長期に渡り、水準調整もしていたのではないかと思っている。
一桁もランクが違う程の安値の中国製品等が大量に日本に流入し、結果として日本企業の海外進出も促したし、日本の物価水準の低下が発生し、長期に続いた賃金水準の低下傾向も発生した。
しかし、我々の生活水準は、そんなに貧困を感じさせなかったと思う。
改めて身近にある家庭内の商品を見て欲しい。 今や、電器製品、高級ブランドのバッグ、靴、スニーカー、良く買うブランドの衣類、安価な家具類、100円ショップの雑貨品等々、食料品も含めて、高級品から普及品まで、中国、東南アジアで生産された商品で、我々日本人の生活は支えられている状況になっているではないか?
いつの間にか、モノつくりは海外に任せた消費大国になっているのだ。現在では国内産はせいぜい米や生鮮野菜、自動車程度のものだ。 そのうち海外生産が増加している自動車も、海外製の輸入品が増える時代が来てもおかしくない。
けれども非正規雇者の増加に伴い、年収2~300万円という低所得層は着実に増えており、かっては消費の牽引役であった中間所得層が、今の日本では減少しているのが現実だ。
無理やりの政府のお声掛かりで、好調だった自動車メーカーを中心に、一部の大手企業のベアは実現したが、消費税の値上げ分をカバーできる程の賃上げになったかどうかは疑わしい。
まして、大部分の中小企業では、ベアは望めていないのが実情だ。
アベノミクスがメディアで大いに宣伝されたが、異次元の金融緩和は、株式市場活性化では効果があったと思えるが、全体の日本経済の活性化には繋がっていないと、筆者はみている。
筆者の記憶している橋本政権の時の消費税増税も、当時の日本経済の上昇機運を、ぶち壊してしまった。
筆者は、日本のデフレ現象は、長期間の不景気の循環がもたらす、本来の経済理論でいうデフレスパイラルではなく、今までの日本の国内の価格体系を破壊する、大量の安価な輸入価格のパワーによって、もたらされたものと思っている。
例えば、TPPが締結されると、今度は高関税の農産品が、大幅に下がる事になる。
医療や保険なども、消費者の支払うコストが上がるのか下がるのか、筆者には今の時点では不明だ。
結局無理をしたデフレ脱却政策等は、日本の経済構造から見ると、何の足しにもならないと筆者はみている。
最近の株価の動きを見ていると、アベノミクスが経済活性化に効果がないと見透かされているのが、株価上昇力として働かない原因ではないかと、筆者は思う。
下のコラムは、やはり株屋のエコノミストであり、最後の方では、まだまだ日本の株式は上昇すると見ているが、これは仕事上、仕方のないことだろう。
(東洋経済オンラインより貼り付け)
日本株は、もう上昇しないのか?
負け組のロシア並みに停滞している株式市場
村上 尚己 :マネックス証券 チーフ・エコノミスト
2014年04月28日
日本株が低調なのは、安倍首相の政治的な力点が変わったからではない。
日本株市場の停滞が続いている。特に、3月半ばからの世界の株式や金融市場の値動きと比べると、その不調ぶりは明らかだ。
米欧や新興国に比べ、戻りが鈍すぎる日本市場
米国の株式市場は、ウクライナ情勢への懸念から上値が重い時期もあったが、4月半ばに再び切り返し、年初来高値更新を再びうかがう水準まで、ジリジリ上昇している。
また、年初に大幅な通貨安に見舞われた新興国では、多くの通貨は買い戻され、それを後追いして株価も3月半ばから大きく上昇している。新興国全体(MSCI指数)の株価指数をみると、ほぼ年初の高値と同水準で、米欧と遜色ない。
2013年と同様に、新興国経済はなお脆弱であり、米国頼みの状況だ。にもかかわらず、通貨・株式は復調しているわけだ。日本株と同様に、年初来のパフォーマンスが悪いのは、ウクライナ問題の渦中にあるロシアくらいである。
リスクや不確実性に相対的に敏感な米債券市場と比べても、日本株の停滞は目立つ。米10年国債の金利は2月初旬には2.5%台まで大きく低下した後、反転。その後の方向感は乏しいとはいうものの、1月半ばからの金利が低下した分の半分程度を取り戻す水準まで、上昇している。
同時期に、日経平均株価は、1万6000円近辺から約1万4000円割れの水準まで約2000円も下落した。
だが4月後半になっても、下落分の半分も戻せず、1万4000円台半ばで低空飛行の状態である。
この変化を軽視し、「消費増税は日本株市場に影響しない」との見方が、年初まで市場で流布していた。ただ、それが極端な楽観論だったということである。そう強弁していた市場関係者が株価の先行きに自信を持てなくなっていることが、足元で日本株市場がさえない一つの要因になっていると、筆者はみている。
日本企業の業績悪化への懸念は、今後和らぐ
それでは、このまま消費増税によって日本経済は失速し、日本株のダウントレンドはこのまま続くのだろうか? 筆者は、そのリスクは小さいとみている。 消費増税が、個人消費を中心に日本経済に及ぼす影響は無視できないが、経済全体を失速させる可能性は低い。
1月21日のコラムで書いたように、世界経済安定と円安による価格競争力回復で、今後輸出が日本経済のけん引役になるだろう。また、消費増税による消費抑制は避けられないが、一方で2013年に実現した「金融政策の大転換」の効果で、日本経済が長期にわたったデフレから抜け出す動きは広がっている。
企業、個人の多くは、「デフレ時代が終わりつつある」と認識しており、これが企業の設備や消費行動を積極化させる。つまり「お金の使い方」を大きく変えつつある。このため国内需要も底堅さが保たれ、増税による景気の落ち込みは深刻化しないだろう。であれば、日本企業の業績悪化に対する、現在マーケットが抱きつつある懸念は、今後和らぐだろう。
年初までの行きすぎた楽観論が一服し、日本株市場に対する慎重論が広がりつつある今こそ、投資機会の到来である。
(貼り付け終わり)
安倍首相が「来年の日本株は買いだ」と豪語してから4カ月がたった。
彼は4月から実施した消費増税が、経済成長のマイナス要因に殆どならないと、財務省官僚から言い含められて、決断したのであろう。
しかし、筆者は消費増税の悪影響は、これから本格的に景況感に現れると見ている。
ここ十年以上、実質的な手取り賃金は、長期減少傾向を示していた。
今回の長く続いたデフレ環境が、果して本当に日本経済には、マイナス要因であったのだろうか?
筆者は、日本の賃金水準が、隣国である中国や東南アジア諸国に比べて、余りにも高すぎるために、長期に渡り、水準調整もしていたのではないかと思っている。
一桁もランクが違う程の安値の中国製品等が大量に日本に流入し、結果として日本企業の海外進出も促したし、日本の物価水準の低下が発生し、長期に続いた賃金水準の低下傾向も発生した。
しかし、我々の生活水準は、そんなに貧困を感じさせなかったと思う。
改めて身近にある家庭内の商品を見て欲しい。 今や、電器製品、高級ブランドのバッグ、靴、スニーカー、良く買うブランドの衣類、安価な家具類、100円ショップの雑貨品等々、食料品も含めて、高級品から普及品まで、中国、東南アジアで生産された商品で、我々日本人の生活は支えられている状況になっているではないか?
いつの間にか、モノつくりは海外に任せた消費大国になっているのだ。現在では国内産はせいぜい米や生鮮野菜、自動車程度のものだ。 そのうち海外生産が増加している自動車も、海外製の輸入品が増える時代が来てもおかしくない。
けれども非正規雇者の増加に伴い、年収2~300万円という低所得層は着実に増えており、かっては消費の牽引役であった中間所得層が、今の日本では減少しているのが現実だ。
無理やりの政府のお声掛かりで、好調だった自動車メーカーを中心に、一部の大手企業のベアは実現したが、消費税の値上げ分をカバーできる程の賃上げになったかどうかは疑わしい。
まして、大部分の中小企業では、ベアは望めていないのが実情だ。
アベノミクスがメディアで大いに宣伝されたが、異次元の金融緩和は、株式市場活性化では効果があったと思えるが、全体の日本経済の活性化には繋がっていないと、筆者はみている。
筆者の記憶している橋本政権の時の消費税増税も、当時の日本経済の上昇機運を、ぶち壊してしまった。
筆者は、日本のデフレ現象は、長期間の不景気の循環がもたらす、本来の経済理論でいうデフレスパイラルではなく、今までの日本の国内の価格体系を破壊する、大量の安価な輸入価格のパワーによって、もたらされたものと思っている。
例えば、TPPが締結されると、今度は高関税の農産品が、大幅に下がる事になる。
医療や保険なども、消費者の支払うコストが上がるのか下がるのか、筆者には今の時点では不明だ。
結局無理をしたデフレ脱却政策等は、日本の経済構造から見ると、何の足しにもならないと筆者はみている。
最近の株価の動きを見ていると、アベノミクスが経済活性化に効果がないと見透かされているのが、株価上昇力として働かない原因ではないかと、筆者は思う。
下のコラムは、やはり株屋のエコノミストであり、最後の方では、まだまだ日本の株式は上昇すると見ているが、これは仕事上、仕方のないことだろう。
(東洋経済オンラインより貼り付け)
日本株は、もう上昇しないのか?
負け組のロシア並みに停滞している株式市場
村上 尚己 :マネックス証券 チーフ・エコノミスト
2014年04月28日
日本株が低調なのは、安倍首相の政治的な力点が変わったからではない。
日本株市場の停滞が続いている。特に、3月半ばからの世界の株式や金融市場の値動きと比べると、その不調ぶりは明らかだ。
米欧や新興国に比べ、戻りが鈍すぎる日本市場
米国の株式市場は、ウクライナ情勢への懸念から上値が重い時期もあったが、4月半ばに再び切り返し、年初来高値更新を再びうかがう水準まで、ジリジリ上昇している。
また、年初に大幅な通貨安に見舞われた新興国では、多くの通貨は買い戻され、それを後追いして株価も3月半ばから大きく上昇している。新興国全体(MSCI指数)の株価指数をみると、ほぼ年初の高値と同水準で、米欧と遜色ない。
2013年と同様に、新興国経済はなお脆弱であり、米国頼みの状況だ。にもかかわらず、通貨・株式は復調しているわけだ。日本株と同様に、年初来のパフォーマンスが悪いのは、ウクライナ問題の渦中にあるロシアくらいである。
リスクや不確実性に相対的に敏感な米債券市場と比べても、日本株の停滞は目立つ。米10年国債の金利は2月初旬には2.5%台まで大きく低下した後、反転。その後の方向感は乏しいとはいうものの、1月半ばからの金利が低下した分の半分程度を取り戻す水準まで、上昇している。
同時期に、日経平均株価は、1万6000円近辺から約1万4000円割れの水準まで約2000円も下落した。
だが4月後半になっても、下落分の半分も戻せず、1万4000円台半ばで低空飛行の状態である。
この変化を軽視し、「消費増税は日本株市場に影響しない」との見方が、年初まで市場で流布していた。ただ、それが極端な楽観論だったということである。そう強弁していた市場関係者が株価の先行きに自信を持てなくなっていることが、足元で日本株市場がさえない一つの要因になっていると、筆者はみている。
日本企業の業績悪化への懸念は、今後和らぐ
それでは、このまま消費増税によって日本経済は失速し、日本株のダウントレンドはこのまま続くのだろうか? 筆者は、そのリスクは小さいとみている。 消費増税が、個人消費を中心に日本経済に及ぼす影響は無視できないが、経済全体を失速させる可能性は低い。
1月21日のコラムで書いたように、世界経済安定と円安による価格競争力回復で、今後輸出が日本経済のけん引役になるだろう。また、消費増税による消費抑制は避けられないが、一方で2013年に実現した「金融政策の大転換」の効果で、日本経済が長期にわたったデフレから抜け出す動きは広がっている。
企業、個人の多くは、「デフレ時代が終わりつつある」と認識しており、これが企業の設備や消費行動を積極化させる。つまり「お金の使い方」を大きく変えつつある。このため国内需要も底堅さが保たれ、増税による景気の落ち込みは深刻化しないだろう。であれば、日本企業の業績悪化に対する、現在マーケットが抱きつつある懸念は、今後和らぐだろう。
年初までの行きすぎた楽観論が一服し、日本株市場に対する慎重論が広がりつつある今こそ、投資機会の到来である。
(貼り付け終わり)