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今こそ野党は、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)で発生している巨額損失を追及すべきだ。

2016年06月30日 12時08分29秒 | 日記
 30日午前の終値である日経平均株価は15.700円前後で推移している。

 まあ15,000円を割り込むことは今のところないようが、決して15,000円が底値で、今後、安定上昇する保証は勿論ない。

 まだまだ何が起こるかわからない不安定な状況で、株価や為替は欧州のニュースの内容で、乱高下するだろう。

 筆者はこのブログでも、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の株価の値下がりによる損失を明確にすべきだと話したが、今朝のTVのニュースワイドショウでもGPIFの損失に関して、経済評論家がかなりの損失が発生していると報道していた。

 安倍政権も、もうこれ以上ほうかむりをすべきではないだろう。

 安倍自民党は、豊富な資金を使って、アベノミクスをより推進するというTVのコマーシャルを大量に流している。

 昨日も書いたが、嘘っぱちのアベノミクスの一つの例が、このGPIFの大きな損失発生の事実を公表しない事だろう。

 筆者が信頼している経済評論家の植草一秀の『知られざる真実』というブログで、詳細な数字を使って、大きな損失を出しているGPIFの実情について書かれている。

 政府の担当者の言い分は、株価の損得を短期で見るべきではないと逃げているが、アベノミクスを自慢する安倍首相こそ、短期間のアベノミクスの効果的な部分の数字だけを取り上げて、誇らしげに述べているのだ。

 なんといっても、GPIFは国民の積み立てた年金資金であり、取り扱い比率を現政権の意のままにするのはとんでもないことだ。

 発生している株式運用による損失は、誰が責任を負うのか?、誰一人として、何年先に取り戻すなどといえる類のものではないのは、誰でもわかることで、所詮リスクのある株式投資は、年金資金のような国民資産の運用比率を、国会などの審議にもかけずに、やるべき性質のものではないのだ。



(植草一秀の『知られざる真実』より貼り付け)

2016年前半安倍政権損失が37兆円に達する疑い
2016年6月29日

 安倍政権は老後の生活を支える国民の財産である公的年金資金=GPIFの資金運用配分比率を変更する運用方針を2014年10月31日に大きく変更した。
 年金資産の資金運用の資産別配分比率を大幅に変更したのである。
 従来の資金配分比率である国内債券60%、国内株式12%、外国債券11%、外国株式12%を、国内債券35%、国内株式25%、外国債券15%、外国株式25%の新しい資金配分比率に変更した。

 国内株式の運用比率が12%から25%へと2倍強に引き上げられた。
 外国証券の運用比率も23%から40%へと大幅に引き上げられた。

 2015年12月末のGPIF運用資産残高は139兆8249億円、この時点での日本配分比率23.35%を基準にすると、日本株式残高は2015年12月末で32兆6491億円だった。

民進党の玉木雄一郎議員が仮定計算しているように、昨年12月末の株価水準はTOPIXで1547.3。 6月27日のTOPIXは1225.76で、日本株式が20.8%下落した。

 この下落率を当てはめると、日本株式残高は25兆8664億円に減少していることになり、日本株式だけで、年初来、6兆7847億円の損失が生じたことになる。

 日経平均株価は2012年11月14日に8664円の水準だった。2014年10月31日の終値は16413円だった。

 つまり、安倍政権は政権発足直前の水準から2年で、株価が約2倍の水準に暴騰した局面で、日本株式での運用比率を2倍に引き上げたのである。

 8664円の水準だった2012年11月に日本株式の運用比率を2倍に引き上げて、株価が2倍になった2014年10月末に元の比率に戻したと言うなら適正だが、その逆をやった。

 ところが、株価は2015年6月をピークに下落トレンドに転換した。

 円安・株高の流れが円高・株安の流れに転じたのだ。その結果、年金資産の損失が急拡大している。

 また、外国証券の比率が40%に引き上げられているから、円安の局面では利益が生まれるが、円高の局面では損失が拡大する。

 円高・株安のトレンドが生じるなかで、日本株式、外国証券偏重の資産配分は、国民に甚大な損害を与えており、その責任が問われるのは当然のことだ。

 安倍政権は年金資金運用で巨大な損失を発生させているから、そのデータを参院選前に公表することを避けて、参院選後に公表期日を先送りした。目的のためにはいかなる卑劣な手段でも用いるという、おぞましい姿だ。

 野党関係者の発言については、マスメディアを総動員して総攻撃するくせに、自分の不正については一切の報道、論評を許さない。文字通り、日本は暗黒国家への道を転げ落ちている。

 しかし、政府が隠している巨大損失は年金資産の日本株投資での損失だけでない。140兆円の資産残高のうち、外国証券での運用比率が40%だとすると、その残高は56兆円である。

 年初の1ドル=120円が1ドル=100円になれば、為替変動で17%の損失が生じる。仮にこの変動率で計算すれば、ドル安で9.5兆円の損失が生まれたことになる。 株式と合わせれば、何と16兆円の損失になる。

 そして、さらに驚くべきことがある。

 日本政府は日銀から借金をして1兆2540億ドルの外貨資産等を保有している。外貨準備というものだ。 このうち、1兆693億ドルが外貨証券である。 圧倒的に多いのが米国国債だ。

 これを1ドル=120円から1ドル=100円へのレート変化で換算すると、円評価額は128兆円から107兆円への減少していることになる。

 半年足らずで、21兆円もの損失が生まれていることになる。 この損失は、すべて、日本の国民が負担することになる。

 年金の損失と合わせると、なんと半年で37兆円もの巨大損失が生まれていることになる。

 私は、昨年4月21日付のブログ記事「安倍政権は政府保有米国債売却を決断せよ」で、政府保有の米国国債売却を強く提唱した。

 早晩、為替レート変動が円高に回帰する可能性が高く、為替損失を全額回収できるチャンスを放棄するべきでないことを強く訴えた。


 しかし、安倍政権は無為無策で、いまの円高で20兆円を超える損失を計上している。

 半年で37兆円もの巨額損失を生み出していると見られる安倍政権には、直ちに退場してもらわないと、国民の老後の生活は破綻し、若い人に明るい未来は絶対に来ない。

(貼り付け終わり)
 

アベノミクスは嘘っぱちと、力強く反論するパワーを示せない野党連合。

2016年06月29日 14時16分12秒 | 日記
 米国大統領選挙でトランプ候補が共和党のトップに躍り出ていることや、英国のEU離脱決定の国民投票など、先進国ではエスタブリッシュ層による支配が崩れつつあるのはなぜだろうか?

 金融経済が先進国経済の主力産業になり、ごく一部の富裕層が、カネの力によりますます巨富を増やし、持たざる者との間に大きな経済格差を生んでしまう社会構造になってしまった結果ではないかと思う。

 本来は富める者から多くの税金を徴収し、貧困者にそれなりの生活保障ができるようにすべきであろうが、現実の世界は富裕層がタックスヘイブン等で多額の税金逃れを行い、貧者に対してのトリクルダウンなど起こることもない。

 英国で、離脱派が理由として主張をしている、移民や難民の受け入れ問題も、大きな経済格差のある難民が流入することで、自分たちの職場の座をとって替わられ、所得の減少に見舞れるのを恐れてのことであろう。

 それこそ、先進諸国の新資本主義社会で解決できていない、格差と貧困の撲滅がおざなりになっている結果だ。

 振り返って日本の若者や成人層を見ても、今や正規社員層がどんどん減少し、非正規社員層が30%を超える社会に変質してしまっている。

 これも当然のことで、小泉自民党内閣時代に、小泉構造改革の一環として、大企業からの強い要請のあった、企業の雇用条件改正法の結果である。

 その結果、小さいが幸せな家庭の最低条件である結婚生活も、経済的事情からできない社会が生み出され、当然の結果として子供の出産も望めない社会が現実になっている。 これが本当に将来に希望が持てる社会なのだろうか?

 筆者の現役時代は、一億総中流社会といわれた時代であった。 自分は中流層と自認する国民が大半を占める社会であった。 振り返ってみればパートさん扱いの人たちもいたが、大部分は家庭の主婦層の働き手であって、その夫は正社員であった。 

 ささやかではあっても、自宅やマンションも購入して、将来の安定な老後生活も夢見ていた時代だった。

 さて、現在の社会を振り返ってみると、確かに贅を尽くす高額所得者もいるが、全体的には低所得者層に分類されてもおかしくない層が、大幅に増えている。

 高齢の年金生活者が増加していることもその理由ではあるが、元気な若者が目立たなくなった社会にも、大きな原因があろう。

 今の生活に満足していない層が、現在の社会の変革を要求して、大きく声を張り上げなければならない社会にする必要があると、筆者は思ってしまうのだが、受け皿になる野党のビジョンがなんともショボいのがつらいところだ。

はからずも英国のEU離脱でもたらされた円高は、筆者など大歓迎だ。

2016年06月27日 16時23分49秒 | 日記
 先週の英国EU離脱決定で、混乱した金融市場も今後の動きを判断するには、いまだ時間が少なく、とりあえず各国の金融政策協調などを期待しているような形で、日経平均株価も先週比357円高、15,309円で終了した。

 ただ、ドル円為替相場は、101.77円と1.28円の円高だ。

 依然として世界の金融市場にリスク警戒感があることは事実で、大口投資家はいろいろな情報を集め、対策を練っていることだろう。ただ日経平均株価が17千円を目指すには、余りにもリスクがありすぎる。

 日本の株式市場は、公的資金による株の買い上げなどで、安倍政権がやにくもに株価を演出していただけに、今後はもっとメッキが剥げ落ちる恐れがないとは言えない。

 政府の為替介入も、あからさまには出来ない環境になってきており、105円~95円の100円を挟んだレンジで当面は為替相場は推移すると思える。

 ただ、日本のメディアは、円高になると決まり切った言い方で、輸出企業の減益を大きく伝えるが、今や日本経済の実体は、輸出よりも輸入の影響を重視すべきだ。

 安倍政権下で、実質賃金が伸びないうえに、115~120円の円高誘導の結果、輸入物価が上昇し、おまけに8%の消費税が重なり、結果として個人消費が長く低迷しているが。

 しかし円高になり輸入物価が下がれば消費も増える。

 見てみるが良い。今やあなたが使っているスマホも家電製品も、大部分は海外製品だ。石油製品のしかり、食料品も輸入のウエイトが大きい。

 自動車くらいが国産だが、自動車も外国製がじりじりとシェアを増やしている時代だ。

 円高は日本国民にとっては、本来あるべき国力を現わす。故意に円安誘導にし、株価を上げてアベノミクスを成功した経済政策に見せかけていた化けの皮が、図らずも英のEU離脱で剥がれたともいえる。

 今後は筆者の年金も賃金もあがりそうにないので、円高大歓迎だ。90円前半までの円高を望みたいくらいだ。(笑)

英国のEU離脱で、ドイツ銀行のデリバティブ破綻を引き起こさなければよいが。

2016年06月26日 15時06分19秒 | 日記
 ドイツ銀行が数か月前から経営破たんの懸念が言われていた。抱えている莫大なデリバティブの存在があることだ。その額はなんと75兆ドル(日本円概算で7500兆円)という、気の遠くなるような額だ。

 今回の英国のEU離脱により、EUの金融内部で混乱が生じると、ドイツ銀行問題が、世界の金融機関に深刻な影響を与えることになる。

 有名な投資家ジム・ロジャースをはじめ、経済学者や投資家による、金融危機の発生の警告が、今年に発せられている。

 英国のEU離脱も万一にも発生しうると読んでいた面もあったのかもしれない。 日本の金融機関に影響がなければよいが、最近の世界の金融機関はお互いにリスク負担の軽減のために、形を変えたデリバティブで幅広く分散保有されている。リーマンショックも全く同じ事情で、世界中の主要金融機関が損失を被った。

 どうも英国の予期せぬEU離脱で、大きな金融危機が発生する可能性が、ゼロとは言えなくなってきたような予感がする。


(トレンズウオッチャーズ ネットより2点貼り付け)

ドイツ銀行のCDS売却は破綻の前兆か
15.03.2016

 世界4位の総資産を持つドイツ銀行の破綻危機は、2013年から懸念されてきた。世界最大のデリバティブを保有していることから、破綻すればリーマン・ショック以上の金融危機、世界規模の恐慌を引き起こす可能性が高いと考えられる。そのため今回明らかとなった、ドイツ銀行によるデリバティブの一部の売却は注目される。  

 2015年には不良債権の増加、紛失決済、金利や為替の不正操作による損害賠償、ドイツ経済の低迷などによる業績悪化、そうして世界最大のデリバティブの保有による損失拡大のリスクで経営破綻は避けられないと示唆された。CEOの2回の交代、海外業務の縮小、事業再編、大規模なリストラを実施したが、2016年に入ってドイツ銀行の株価は一時4割以上も下落した。2015年度決算は過去最大の8,500億ドルの純損益となり、末期的な状態にある。

◉75兆ドルのデリバティブ

 ドイツ銀行のデリバティブ取引の残高は75兆ドルにのぼる。ドイツのGDPの約20倍、ユーロ圏GDPの5倍、世界各国の総GDPの66兆ドルを上回る額である。

 そのデリバティブを巡り、ドイツ銀行は保有する未決済のクレジット・デフォルト・スワップ(CDS:借り手のデフォルト、債務不履行に備える、信用リスクに対して、保険の役割を果たす契約)で構成されているポートフォリオの約3分の2を既に2015年中に売却したことが明らかになり、残りの3分の1の売却は現在JPモルガン・チェース、ゴールドマン・サックスとシティグループの米銀3行と交渉中である。CDSポートフォリオの想定元本総額は約1.1兆ドルとされ、昨年売却した部分も3銀行を含む複数の銀行が購入している。

 投資家のウォーレンバフェットは、デリバティブのことを金融大量破壊兵器と呼んでいる。数多くの複雑な金融商品(デリバティブ)は次第に姿を変え、その毒性が明らかとなる出来事が起きるまで増殖を続けると提唱してきた。2011年には、大手銀行が保有している数兆ドルのデリバティブは金融システム全体に破壊的であり、そのリスクは事実上管理不能であると指摘した。

 ドイツ銀行が保有しているデリバティブの中身を全て確認することは困難なため、何時爆発するかが分からない爆弾を抱えているようなものである。思い出すのが、2008年のリーマン・ブラザーズの破綻の際、リーマンとのデリバティブ取引(約100万件)を交わしていた8,000以上の銀行、ヘッジファンド、投資家への連鎖的損失である。ドイツ銀行によるCDSポートフォリオの一部の売却は、破綻危機の前兆にみえる。
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投資家ジム・ロジャーズが警告する金融危機の津波
25.05.2016

 今年になって、世界的な金融危機が起きると警告を発している投資家、経済学者、金融機関が増えている。カール・アイカーン、新債券王ことジェフリー・ガンドラック、世界最大のヘッジファンドのレイ・ダリオ、ジョージ・ソロスに続き、投資家ジム・ロジャーズが2016年か2017年に世界的な金融危機の津波が起きると警告を発した。

 ウォールストリート・デイリーとのインタビューで、ジム・ロジャーズ氏は警告を発した。次の金融危機は大変に厳しいものとなると警告、その損失額は68兆ドル以上となると指摘した。2008年のリーマン・ショックは11兆ドル以上の損失をもたらしたので、ロジャーズ氏が指摘する損失額の規模はこれまでとないものとなる。

◉危機の津波

 2014年後半から始まった株式市場の下降傾向は止まっておらず、連邦準備制度(FRB)が指摘する米国の「景気回復」は金融緩和策と債務の拡大の結果であり、実態の経済状況を反映していないと述べている。株式市場の暴落は必ず起きるとみている。

 次の金融危機の津波は世界的規模で全ての国が影響を受けるとしている。ロジャーズ氏は米国のS&P500は50~80%下落、7,000以上の金融機関が倒産すると予測している。「今の金融システムは崩壊、さらに、既存の政治体制、政府、文化や習慣、文化施設、病院や公共施設などがなくなり、国家の破綻や存続危機が起きことになる。」と深刻なシナリオを描いている。

◉ジム・ロジャーズ氏の過去の予測

 ジム・ロジャーズ氏はこれまで数々の予測を出してきた。1970年代には、商品市場の強気相場を予測、10年間で 3365%のリターンを得た。1999年には商品価格の上昇を予測、特に原油、銅、ウランなどの価格上昇で利益をだした。2006年には不動産価格の上昇に注目、連邦住宅抵当公庫のファニーメイと連邦住宅金融抵当公庫のフレディーマックの株をリーマン・ショック前に売却した。中国の債務バブルの崩壊にも警告をだしている。

(貼り付け終わり)



アベノミクスへの反論を、勉強していない野党の党首。

2016年06月25日 11時28分32秒 | 日記
 6月23日のブログに書いていたが、参院選の党首討論で安倍首相が、とうとうとアベノミクスの成果を話し、野党の党首がその内容に正確に反論せず、別の問題数字を論じて、議論が噛み合っていなかったと書いた。

 安倍首相が述べているのは、中原 圭介氏が指摘しているように、主に、①有効求人倍率が24年ぶりの高水準であるということ、②民主党政権時に比べて税収が21兆円増えたという2点であった。

 中原 圭介氏は、安倍首相がちゃっかりアベノミクス効果だと自慢しているが、両方ともアベノミクスの成果ではなく、急速に進む高齢化による生産人口減が原因であり、 税収増も大半が「円安によるインフレ税」と「消費増税」という家計への二重課税によってもたらされたものであると論破しておられる。
 
 その結果として、個人の消費水準が低迷し、日本のGDPの60%を占める消費が伸びないのだから、経済成長を望むべくもない。

  中原 圭介氏もコラムの中で述べておられるように、安倍政権は当然アベノミクスの成果を述べようとする筈なのだから、せめて野党の党首は、中原 圭介氏のコラムにあるような反論を、勉強しておいて欲しいものだ。

(東洋経済オンラインより貼り付け)

円安に頼る経済政策を終わりにする時が来た
円高で実質賃金と個人消費は増加に転じる
中原 圭介 :経営コンサルタント、経済アナリスト
2016年06月25日

 今回の参議院選挙において、安倍首相がアベノミクスの成果として必ず訴えているのは、主に、①有効求人倍率が24年ぶりの高水準であるということ、②民主党政権時に比べて税収が21兆円増えたということ、の2点になります。

 これら2つの成果だけを強調されると、国民のなかにはアベノミクスを評価する人々がいるでしょうし、実際に各種の世論調査などでも、およそ半数近くがアベノミクスを評価すると答えています。しかし、これら2つの成果が、自らにとって都合のよい数字だけを並べていて、もっと大事な数字が隠されていると言ったら、みなさんは信じることができるでしょうか。

 まずは①の有効求人倍率については、2015年3月2日の『アベノミクスで失業率は低下していない』、2016年3月27日の『政治家の皆さん、もっと経済を勉強しなさい』と2年連続で述べさせていただいたように、アベノミクスによって有効求人倍率が上昇したわけでは決してありません。このようなデタラメな主張ができるのは、日本経済や日本社会の基本的な構造変化を無視しているからにほかならないのです。

◉有効求人倍率が上昇する本当の理由

日本の総人口は2008年の1億2808万人をピークに少しずつ減少していますが、2013年に21.7万人減(0.17%減)、2014年に21.5万人減(0.17%減)、2015年に27万人減(0.21%減)となり1億2711万人まで減少しています(いずれも10月1日現在)。

 これに対して、生産年齢人口(15~64歳)は2013年に117万人減(1.5%減)、2014年に116万人減(1.5%減)、2015年に77万人減(1.0%減)と総人口と比べても減少率が大きく、7708万人にまで減少しています。これは、2012年から2014年の3年間に団塊世代が65歳に達するようになり、その減少数が大幅に拡大していたためです。

 安倍政権誕生前の2010年~2012年の3年間で、生産年齢人口は132万人減少していたのに対して、誕生後の2013年~2015年の3年間では、実に310万人と2倍超も減少していたというのですから、人手不足になるのは当然のことであったと言えるでしょう。生産年齢人口の急激な減少を背景に、2012年以降は失業率が徐々に低下し、有効求人倍率が上昇するのは、初めからわかっていたというわけです。

 おまけに、多くの中小企業はこの構造的な人手不足のために、たとえ今の採用に結びつかなくても、将来の採用もにらんで無料のハローワークにおける求人を積み上げています。少子高齢化によって求人倍率の分母となる求職者数が減り続けているのに、人手不足から分子となる求人数が必要以上にかさ上げされているので、有効求人倍率は実態よりも高めに出る性格を持っているのです。

 確かに、有効求人倍率の上昇は喜ばしいことではありますが、「経済が好調だから、有効求人倍率は高水準が続いているのだ」という主張は、時代の変化に取り残された経済学のステレオタイプ的な浅はかな考えであり、アベノミクスの成果とはとてもいえないでしょう。

 次に②の税収の増加についても、GDPが2013年以降ほとんど増えていないことを考えると、決して素直に評価できるものではありません。それは、3月27日の『政治家の皆さん、もっと経済を勉強しなさい』でも論理的に証明しましたように、税収の増加は決して企業活動の活性化によってもたらされたわけでなく(2013年以降も日本企業全体の売上高は増えていない)、その大半が「円安によるインフレ税」と「消費増税」という家計への二重課税によってもたらされたものであるからです。

◉実質賃金はリーマン期並みに下落している

 「輸入品の価格水準を示す輸入デフレーター」と「消費者物価の上昇率」は見事に一致していますし、その結果として、円安により企業収益が増えた一方で、輸入インフレにより家計の可処分所得が減ってしまったというのは、2013年~2015年の実質賃金の下落率が4.6ポイントという事実を見ても明らかなことではないでしょうか(私の推計では、実質賃金の下落率4.6ポイントのうち、2.6ポイント以上が輸入インフレによるもの、2.0ポイント以下が消費増税によるものです)。

 そのうえ、2012年度の税収については、2008年のリーマン・ショックと2011年の東日本大震災による二重の税収減に見舞われていたという現実も見逃してはいけません。当時は欠損金の繰り越しにより、トヨタやメガバンクですら法人税を納めていなかったのですから、その他の大企業や中小企業も押しなべて法人税額が少なかったのは言うまでもないでしょう(もっともメガバンクはリーマン・ショック前も欠損金繰り越しで法人税を支払っていませんでしたが)。

 安倍首相は先日のG7では各国首脳に対して、「世界経済はリーマン・ショック並みの危機に備える必要がある」と訴え、G7終了直後には消費増税を見送るという決断をしました。海外メディアの多くは「消費増税を延期するために、リーマン並みの危機を煽った」と批判的な見方を示しましたが、日本経済の実態を冷静に見ていると、安倍首相の認識はある意味では正しいのかもしれないと思われます。日本国民の生活水準の落ち込みを考えれば、確かに家計部門はリーマン・ショック時と同じような状況にあるからです。

 繰り返しになりますが、2013年~2015年の実質賃金の下落率は累計して4.6ポイントにまでなっており、この下落率はリーマン・ショック期に匹敵しています。また、2015年の途中までは下落率が5.0ポイントを超えていて、明らかにリーマン・ショック期を凌駕していた時期もあったのです。

◉個人消費は戦後最悪の減少率を記録

 国民の購買力がリーマン・ショック期と同様に落ち込んでいるというのに、GDPの6割を占める個人消費が増えるわけがありません。1990年代に日本のバブルが崩壊して以降、個人消費がマイナスになったのは、金融システム危機で金融収縮が起きた1998年、リーマン・ショック期の2008年~2009年、そして実質賃金が大幅に下落した2014年~2015年の計5年間です(意外かもしれませんが、消費増税を行った1997年には個人消費は増えていたのです)。

 ここで注目しなければならないのは、個人消費が2年連続でマイナスになったのは、2008年~2009年と2014年~2015年の2回しかないということ、さらには個人消費が2008年に0.9%減、2009年に0.7%減だったのに対して、2014年は0.9%減、2015年は1.3%減と、戦後最悪の減少率を更新してしまったということです。このような現状を見れば、大手メディアの世論調査で押しなべて「8割が景気回復を実感していない」という結果が出るのは、当然のことであると言えるでしょう。

6月21日に行われた日本記者クラブでの党首討論では、安倍首相は前回の衆院選と同じく有効求人倍率を前面に出して実績を誇っていましたが、これにしっかりと反論できない野党の党首たちも、経済をもっと勉強しなければならないと思います。せめて誰かに「首相はG7でリーマン並みの危機にあるとおっしゃいましたが、確かに実質賃金と個人消費で見ると、リーマン級の危機にありますよね」という切り返しくらいはしてもらいたいところでした。

 ただし、ドル円が今のように100円~105円程度で推移している状況が続けば、2016年の実質賃金は間違いなく上がることになります。1.0ポイントくらいの上昇は見込むことができますし、それに伴い個人消費も幾分戻ってくることが期待できます。そろそろこのあたりで、通貨安に頼る経済運営は国民生活にとって恩恵が少ないことを、国民もいいかげん学習する必要があるのではないでしょうか。

◉適正なドル円相場は95円~105円

 私がアベノミクス以降に一貫して主張してきたことは、日本の経済構造の変化に合わせて、行き過ぎた円高や行き過ぎた円安の水準は変わるはずであるということです。たしかに、2000年代初めであれば、私も適正なドル円相場は120円くらいだと考えていましたが、いまや日本経済の構造変化に伴って、行き過ぎた円安は弱者にシワ寄せが偏る性格を持ってしまっています。

 そのように考えると、国民全体にとっても、企業全体にとっても、国家財政にとっても、三方一両損ではないですが、ドル円相場は95円~105円くらいが適正ではないかと思っています。そして、そういったことを考慮に入れながら、経済政策や金融政策は決めていかなければならないと強く思っているわけです。

(貼り付け終わり)