5月29日夜のテレビ朝日の報道ステーションは、日朝政府間の拉致調査合意の報道で、歓迎ムードが漂っていたが、一夜明けた30日の放送では、被害者家族らが今まで散々北朝鮮の対応で、だまされてきた経緯があり、政府関係者との懇談会でも、「油断できない」といった不安と慎重論が全面に出ていた。
報道ステーションに時々出席する元通産官僚の古賀茂明氏の解説も、筆者が30日付のこのブログで紹介したコラムとほぼ同じような見方で、今回の拉致調査合意を説明していた。
一夜明けて、日本のメディアも、再び冷静に事の成り行きを見ようとしているようだ。
下に貼り付けた読売新聞の記事に、端的に現れている。
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(読売新聞より貼り付け)
拉致調査合意、被害者家族「油断できない」
2014年05月30日 22時37分
北朝鮮が拉致被害者を含む日本人の全面調査を約束したことを受け、拉致被害者の家族らが30日、内閣府を訪れ、日朝協議の合意内容について、古屋拉致問題相らから説明を受けた。
これまで何度も北朝鮮に振り回されてきた家族らは面会後、「きちんとした結果が出るまで油断できない」と語った。
面会には、増元るみ子さん(拉致当時24歳)の弟で、「家族会」事務局長の増元照明さん(58)や、「特定失踪者問題調査会」常務理事の曽田英雄さん(61)らが出席。
面会後、取材に応じた増元さんらによると、家族からは「合意内容には様々なテーマが含まれ、拉致問題が置き去りにされるのではないか」という質問が出たが、政府側は「北朝鮮には何回も拉致問題が優先だと伝えた」と答えたという。
制裁解除の対象に北朝鮮籍船舶の入港禁止措置も含まれているが、政府側は「北朝鮮には、(日本と北朝鮮を行き来していた)『万景峰マンギョンボン号の入港は認めない』と明確に伝えた」と説明。外務省の伊原アジア大洋州局長は「北朝鮮側は日本との関係を改善する最後の機会だと思っているのではないか」との見方を示した。(貼り付け終わり)
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北朝鮮との交渉は、日本では拉致問題が大きく報道されるが、ご存じのとおり、米国、韓国、中国などは北朝鮮の核兵器装備の解体を目指して交渉を続けており、その問題が最重要事項なのである。
かって小泉首相時代の拉致被害者送還も、国内では大喝采を浴びたが、海外からはひんしゅくを買っていた。
今回も、韓国のメディア報道では、この辺りの懸念を示す記事が出ている。
朝鮮日報の記事が読み易かったので貼り付けますが、本音では韓国、米国、中国も、日本に対して慎重に事を運んで欲しいという見方をしている。
筆者も周辺国の北朝鮮への不信感を理解すると、安倍首相の今後のこの問題解決への対応は、安倍首相の支持率アップなどと言う、浅はかな野望で取り組んで欲しい問題ではないと思う。
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(朝鮮日報より貼り付け)
拉致再調査:日朝接近に韓米中は困惑
記事入力 : 2014/05/30 09:09
日朝が29日、日本人拉致被害者の全面再調査で合意したのは、両国が直面している北東アジアでの孤立からの脱却を狙ったものと受け止められている。決して近寄ることのないような間柄に見えた両国の急接近は、北朝鮮の核問題をめぐる北東アジアのけん制構図を揺るがす可能性もあると見られる。韓米中3カ国からは一斉に困惑の声が上がっている。
■韓国の反応
韓国政府は、共に北朝鮮に対し圧力を加えていかなければならない日本が突然、韓米日3カ国共助から離脱した形となり、困惑の色を隠せない。北朝鮮に対し、国際社会の対北朝鮮制裁をかいくぐり息をつかせるような「すき」を与え、6カ国協議当事国の間にも分裂をもたらすのでは、ということだ。
世宗研究所の陳昌洙(チン・チャンス)日本研究センター長は「韓国は日米はもちろん、中国まで説得して北朝鮮に圧力を加えるているのに、日本がすきを与えることで安全保障協力で足並みを乱している」と指摘した。韓国政府当局者は「『韓米日が団結し、中国が北朝鮮にさらに圧力を加えるよう説得しよう』というのがこれまでの北朝鮮核問題の解決策ではなかったのか。
それなのに、日本が北朝鮮に対する制裁を先に解除してしまったら、立場的に困惑する」と言った。韓国政府は29日夜、「日本側の公式発表直前、外交ルートを通じて通知があった。30日に日本側から追加説明がある予定だ」と明らかにした。これと関連、別の政府当局者は「日本は交渉内容を米国にもきちんと説明していないと聞いている」と語った。
■米国の反応
米国政府は特に見解を示していない。ただ、米国務省のジェン・サキ報道官は両国間の交渉について28日の定例記者会見で、「日本とはすべての案件について非常に密接に、頻繁に協議しており、調整している」と述べた。日本人拉致被害者問題は人道的次元の議論であるため、これに対し反対するのは難しいと思われる。
南北問題に詳しいワシントンの外交消息筋は「北朝鮮の核問題やミサイル発射などに関する議論は進展がないのに、別次元での交渉が行われていることに対し、米国が歓迎する訳がない。特に今回の合意で、日本が制裁を解除することにしたのは、米国にとってかなり負担となるだろう」と言った。北朝鮮の姿勢を変える唯一の手段は経済制裁だが、これを解除すれば北朝鮮の核放棄はさらに困難になると見られる。
最大の変数は、日本が今回の交渉過程や結果を米国にどこまで明らかにするかだ。ホワイトハウス関係者は「日本が独自に北朝鮮と交渉したとしても、友好国には進展状況や内容をきちんと伝えることが重要だ。北東アジア共助を害するようでは困る」と述べた。
■中国の反応
中国人民大学国際関係学院の時殷弘教授は「日朝間の合意について、中国の本音を言えばあまり喜んではいない」と言った。日中関係が最悪の今、日朝関係改善が喜ばしいわけがないということだ。しかし、中国は表向きには日朝関係改善に反対しないと見られている。北京の外交筋は「中国は北朝鮮の孤立を避けるため、外の世界との接触を増やすべきだと主張してきた。日朝関係の改善に正式に反対する名分はない」と言った。
だが、北朝鮮が日本と手を握ろうとすれば中国が警戒するだろうという見方もある。北京大学の韓半島(朝鮮半島)問題専門家は「中国は日朝関係改善をきっかけに北朝鮮との冷却期を終わりにしようとするかもしれない」と語った。北朝鮮による4回目の核実験など挑発行為を防ぐため、経済的・外交的圧力をかけている中国。習近平国家主席は近くソウルを訪れる。中国の国家主席が就任後、北朝鮮よりも前にソウルを訪れるのは初めてだ。こうした状況で、中国が平壌に「ニンジン」を与える必要性を感じているかもしれないとの見方もある。
ワシントン=ユン・ジョンホ特派員
朝鮮日報/朝鮮日報日本語版
(貼り付け終わり)
報道ステーションに時々出席する元通産官僚の古賀茂明氏の解説も、筆者が30日付のこのブログで紹介したコラムとほぼ同じような見方で、今回の拉致調査合意を説明していた。
一夜明けて、日本のメディアも、再び冷静に事の成り行きを見ようとしているようだ。
下に貼り付けた読売新聞の記事に、端的に現れている。
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(読売新聞より貼り付け)
拉致調査合意、被害者家族「油断できない」
2014年05月30日 22時37分
北朝鮮が拉致被害者を含む日本人の全面調査を約束したことを受け、拉致被害者の家族らが30日、内閣府を訪れ、日朝協議の合意内容について、古屋拉致問題相らから説明を受けた。
これまで何度も北朝鮮に振り回されてきた家族らは面会後、「きちんとした結果が出るまで油断できない」と語った。
面会には、増元るみ子さん(拉致当時24歳)の弟で、「家族会」事務局長の増元照明さん(58)や、「特定失踪者問題調査会」常務理事の曽田英雄さん(61)らが出席。
面会後、取材に応じた増元さんらによると、家族からは「合意内容には様々なテーマが含まれ、拉致問題が置き去りにされるのではないか」という質問が出たが、政府側は「北朝鮮には何回も拉致問題が優先だと伝えた」と答えたという。
制裁解除の対象に北朝鮮籍船舶の入港禁止措置も含まれているが、政府側は「北朝鮮には、(日本と北朝鮮を行き来していた)『万景峰マンギョンボン号の入港は認めない』と明確に伝えた」と説明。外務省の伊原アジア大洋州局長は「北朝鮮側は日本との関係を改善する最後の機会だと思っているのではないか」との見方を示した。(貼り付け終わり)
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北朝鮮との交渉は、日本では拉致問題が大きく報道されるが、ご存じのとおり、米国、韓国、中国などは北朝鮮の核兵器装備の解体を目指して交渉を続けており、その問題が最重要事項なのである。
かって小泉首相時代の拉致被害者送還も、国内では大喝采を浴びたが、海外からはひんしゅくを買っていた。
今回も、韓国のメディア報道では、この辺りの懸念を示す記事が出ている。
朝鮮日報の記事が読み易かったので貼り付けますが、本音では韓国、米国、中国も、日本に対して慎重に事を運んで欲しいという見方をしている。
筆者も周辺国の北朝鮮への不信感を理解すると、安倍首相の今後のこの問題解決への対応は、安倍首相の支持率アップなどと言う、浅はかな野望で取り組んで欲しい問題ではないと思う。
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(朝鮮日報より貼り付け)
拉致再調査:日朝接近に韓米中は困惑
記事入力 : 2014/05/30 09:09
日朝が29日、日本人拉致被害者の全面再調査で合意したのは、両国が直面している北東アジアでの孤立からの脱却を狙ったものと受け止められている。決して近寄ることのないような間柄に見えた両国の急接近は、北朝鮮の核問題をめぐる北東アジアのけん制構図を揺るがす可能性もあると見られる。韓米中3カ国からは一斉に困惑の声が上がっている。
■韓国の反応
韓国政府は、共に北朝鮮に対し圧力を加えていかなければならない日本が突然、韓米日3カ国共助から離脱した形となり、困惑の色を隠せない。北朝鮮に対し、国際社会の対北朝鮮制裁をかいくぐり息をつかせるような「すき」を与え、6カ国協議当事国の間にも分裂をもたらすのでは、ということだ。
世宗研究所の陳昌洙(チン・チャンス)日本研究センター長は「韓国は日米はもちろん、中国まで説得して北朝鮮に圧力を加えるているのに、日本がすきを与えることで安全保障協力で足並みを乱している」と指摘した。韓国政府当局者は「『韓米日が団結し、中国が北朝鮮にさらに圧力を加えるよう説得しよう』というのがこれまでの北朝鮮核問題の解決策ではなかったのか。
それなのに、日本が北朝鮮に対する制裁を先に解除してしまったら、立場的に困惑する」と言った。韓国政府は29日夜、「日本側の公式発表直前、外交ルートを通じて通知があった。30日に日本側から追加説明がある予定だ」と明らかにした。これと関連、別の政府当局者は「日本は交渉内容を米国にもきちんと説明していないと聞いている」と語った。
■米国の反応
米国政府は特に見解を示していない。ただ、米国務省のジェン・サキ報道官は両国間の交渉について28日の定例記者会見で、「日本とはすべての案件について非常に密接に、頻繁に協議しており、調整している」と述べた。日本人拉致被害者問題は人道的次元の議論であるため、これに対し反対するのは難しいと思われる。
南北問題に詳しいワシントンの外交消息筋は「北朝鮮の核問題やミサイル発射などに関する議論は進展がないのに、別次元での交渉が行われていることに対し、米国が歓迎する訳がない。特に今回の合意で、日本が制裁を解除することにしたのは、米国にとってかなり負担となるだろう」と言った。北朝鮮の姿勢を変える唯一の手段は経済制裁だが、これを解除すれば北朝鮮の核放棄はさらに困難になると見られる。
最大の変数は、日本が今回の交渉過程や結果を米国にどこまで明らかにするかだ。ホワイトハウス関係者は「日本が独自に北朝鮮と交渉したとしても、友好国には進展状況や内容をきちんと伝えることが重要だ。北東アジア共助を害するようでは困る」と述べた。
■中国の反応
中国人民大学国際関係学院の時殷弘教授は「日朝間の合意について、中国の本音を言えばあまり喜んではいない」と言った。日中関係が最悪の今、日朝関係改善が喜ばしいわけがないということだ。しかし、中国は表向きには日朝関係改善に反対しないと見られている。北京の外交筋は「中国は北朝鮮の孤立を避けるため、外の世界との接触を増やすべきだと主張してきた。日朝関係の改善に正式に反対する名分はない」と言った。
だが、北朝鮮が日本と手を握ろうとすれば中国が警戒するだろうという見方もある。北京大学の韓半島(朝鮮半島)問題専門家は「中国は日朝関係改善をきっかけに北朝鮮との冷却期を終わりにしようとするかもしれない」と語った。北朝鮮による4回目の核実験など挑発行為を防ぐため、経済的・外交的圧力をかけている中国。習近平国家主席は近くソウルを訪れる。中国の国家主席が就任後、北朝鮮よりも前にソウルを訪れるのは初めてだ。こうした状況で、中国が平壌に「ニンジン」を与える必要性を感じているかもしれないとの見方もある。
ワシントン=ユン・ジョンホ特派員
朝鮮日報/朝鮮日報日本語版
(貼り付け終わり)