元気な高齢者こそ使いたい電子機器

80歳を過ぎても、日々の生活を楽しく豊かにする電子機器を使いこなそう

民進党の目玉政策は、「消費税を5%に戻す」を打ち出すべきだ。

2016年03月30日 17時45分45秒 | 日記
 もう世の中の流れは、来年4月の消費税10%への改定は延期されるという見方が大半だ。

 民主党と維新の党の合流で、メディアの伝え方も消極的なために、民進党の評価もすこぶる低いようだ。

 このような状態で、野党連合で自民・公明の与党と対峙するのは何とも心もとない。

 民主党時代に消費税のアップを宣言したのは、おそらく財務省官僚の脅しに立ち向かえなかった、政権運営に慣れていなかったせいであると、筆者は思っている。

 国民から見放されてしまって、野田政権と安倍自民党との国会対決で、自ら政権運営の権利を、早々と放棄してしまう結果になった。

 その後の安倍政権の誕生で、経済政策でアベノミクスという名のもとに、超金融緩和と円安誘導で、輸出企業の収益増と、株価が大幅に上がり、一見経済が上向くように見えたために、民主党は完全に国民から見放されてしまった。

 しかし、アベノミクスは国民の所得向上には一向に作用せず、おまけに8%の消費税上げで、すっかり消費低迷を招いてしまったのだ。

 安倍政権は経済は緩やかに上昇しているとうそぶくが、国民は消費の節約志向から脱却できていない。 当たり前である。 所得は一向に増えていないから、3%のモノの増税分の負担が打撃になっているのだ。

 民進党は民主党時代に消費税アップを決めた経過を反省し、国民の暮らしを取り戻す一助にと、消費税を元の5%に戻す政策を打ち出すべきだ。

 それでなくても、民進党への期待が少ないのが現状である。

 社会福祉の財源を消費税だけに集約されているのは、財務省のマジックに国民は見事に引っかかっていると筆者はみている。

 財源は消費税以外にも多岐にわたって可能である。 例えば、現在大企業のため込んだ社内留保額などは、莫大な金額に上っているではないか。 国としては社内留保の一定割合以上を、税金として回収すべきである。

 消費税が5%に戻されることによる消費の拡大は、いまやGDPの60%以上が国民の消費に依存しているのだるから、経済成長のためにも必要なことなのだ。

 民進党は注目を浴びる政策として、「消費税を5%に戻す」をアッピールすることだ。

 

食品大量廃棄型の日本経済の現実は、改めて改善すべきだ。

2016年03月29日 11時59分54秒 | 日記
 筆者は朝の通勤途上の車の中で、TBSの森本 毅郎氏のニュース番組を聞きながら運転するというのが、定番のスタイルになっている。

 今朝29日で取り上げていた話題は、食品ロスと、フードバンクの問題だった。

 以前から、スーパーの加工食品の棚では、消費期限までの経過で3分の1ルールというのがあり、日数に到達すると、自主的に撤去すると聞いていた。

 数か月前にも、ココ一番のカレーのトッピング用のとんかつに若干の包装フィルムのような異物が混入し、その時点での生産の全ロットとを、産廃業者にて廃棄される予定だった品物が、格安で一部のスーパーなどで販売されるという事件もあった。

 もちろん注意して食べれば健康上も全く問題はないのだろうが、産廃業者の横流しに批判が集中した。

 その産廃業者を調査すると、期限切れ直前の各加工食品メーカーの商品が多量に処理依頼で持ち込まれているが、一部を格安販売商品として横流しされているなどの問題も発覚した。

 しかし一方で、世界中で満足に食事ができない人たちの飢餓を救うという、国連の仕事も現実に存在する。

 そして今日の森本 毅郎氏の番組で紹介された、最近米国のスターバックスがコーヒー以外に、各種の軽食も提供するビジネスを拡大しているが、売れ残った商品を、米国の貧困家庭の食品として、NPOを通じて無料で払い下げる運動を始めたという。近い将来には売れ残りでの廃棄をゼロにすると発表しているらしい。

 このような貧困家庭に食料品を配給するという考え方が、フードバンクと呼ばれる行為だ。

 またフランスでは、小型の日本のコンビニのようなスーパーであっても、食品を廃棄すると数十万円の、罰金を取る制度になっているという。

 イタリアでも同じような方向で、検討が始まっているらしい。

 振り返って日本の食品廃棄の実態はどうであろうか? 正直言って、いまだ日本政府も手つかずだ。。

 ネットを検索で調べてみると、次のようなコラムがあった。そこに記されていた「食品大量廃棄、年間1800万トン」の見出しに、筆者は改めて衝撃を受けたよ。

(ビジネスジャーナルより貼り付け)

食品大量廃棄、年間1800万トンの衝撃 廃棄コスト2兆円、背景に業界ルールや慣習
 構成=安積明子/ジャーナリスト.

 14年7月、中国食肉加工会社・上海福喜食品が使用期限切れの鶏肉やカビの生えた牛肉を使用していたことが発覚。同社から食品を仕入れていた日本マクドナルドは一部店舗で「チキンマックナゲット」の販売を休止し(7月23日に再開)、ファミリーマートも発売されていた鶏肉加工2商品を停止するなどの事態に発展した。

 このほかにも昨年から今年にかけ、高級ホテルのレストランにおける食材偽装表示事件やアクリフーズ冷凍食品への農薬混入事件など、「食の安全」を揺るがす事件が相次いだ。一方で、国内では日々大量の食品が廃棄されている問題も深刻だ。

 その昔、繁栄を極めた末に滅んだローマ帝国の市民は食べ物をたらふく食べ、満腹になると羽でのどをくすぐって胃の中のものを出してまた食べたという。その姿は、飽食を当然として食べ物を大量廃棄する現代の日本人と重なるが、今回は食の問題に取り組んでいる民主党の安井美沙子参院議員に、食品大量廃棄の実態と問題点などを聞いた。

--まず、日本における食品大量廃棄の実態について教えてください。

安井美沙子氏(以下、安井)  経済力にものをいわせ、世界中から食料品を買い込む日本の食品廃棄量は年間約1800万トンで、食料消費量の2割を占めています。そのうち、まだ食べられるはずの「食品ロス」は年間500万トンから800万トンにも及んでいるのです。

 世界では約8億4000万人が栄養不足に苦しみ、世界各国から途上国へ年間390万トンの食料援助が行われています。その一方で日本では、その倍の量の食品が十分に食べられるにもかかわらず捨てられている現実があるわけです。

 その廃棄費用は年間2兆円にも及び、経済的非合理性は否めません。こうした問題についてよく、「もったいない」と言われますが、私はそういう精神論だけでは済まないと思っています。

●「3分の1ルール」の弊害

--政府を挙げて、この問題に取り組むべきということでしょうか?

安井  そもそも流通の世界は企業の自主的なルールで秩序がつくられており、政府が積極的に関与する余地はあまりありません。 例えば「3分の1ルール」です。このルールは、製造日から賞味期限までの期間のうち、メーカーや卸が小売店に納入できるのは製造日から3分の1以内に限るという業界ルールです。鮮度に敏感な消費者を配慮して大手量販店が採用し、業界全体に普及したものといわれています。

 しかし小売店は在庫を最小限に抑えたいし、メーカーは予備の在庫を抱える傾向にある。よって「3分の1ルール」の納品期間が過ぎると、メーカーは納品できなくなるという問題が生まれました。これをディスカウント店などに回し、再度消費されるようになればいいのですが、ブランドイメージを棄損されたくないメーカー側の理由で、その多くが廃棄されています。食品メーカーの製造工程で発生する規格外品などを引き取り、福祉施設等へ無料で提供するフードバンクに回されるものもありますが、一部にすぎません。

 もちろん海外でも納入期限はあります。ただアメリカでは2分の1などもっと長く、日本の3分の1という基準は世界的に見ても短すぎます。そこで業界も、これが食品をムダに廃棄するひとつの原因となっていることに気づき、見直し始めました。

--その効果は期待できますか?

安井  業界では「2分の1ルール」を試行するなど、廃棄食品削減への取り組みが始まっています。しかし各施策がどういう効果があるのか、どのくらい食べ残しを削減するのか、そのデータがないために全体像は見えていません。そこで私は5月19日の参院決算委員会で、この件について石原伸晃環境大臣に質問しました。施策の寄与度がわかると重点的に取り組むべき箇所がわかりますし、定量的分析を行えば国民にとって何がムダになっているかがわかりやすくなります。石原大臣は「二酸化炭素の削減にもかかわる問題だ」と理解を示してくれましたが、まだデータができていないようです。

--大量の食品廃棄がある一方で、安価な原材料を求めて食品の輸入が増加しています。最近では中国の期限切れ鶏肉問題が大きく注目されました。

安井  まだ食べられるにもかかわらず食品を廃棄するということと、廃棄すべき食品を輸入してしまったということは、一見して正反対に見えますが、実は同根の問題なのです。どちらも食べ物に対する崇拝や感謝するなどという気持ちがありません。

 私が食の問題に関わったきっかけは、2000年の雪印乳業集団食中毒事件です。2人の息子の子育ての真っ最中ということもあって、食に対する信頼が崩れたことは大きなショックでしたね。食とは単なるビジネスではありません。健康に直結する問題なのです。私はかねがね「We are what we eat」と言っています。すなわち、私たちは食べたものから成り立っているという意味です。私たちが将来、大きなツケを払わなくてもいいように、いましっかりと食の問題を見つめたいですね。
(構成=安積明子/ジャーナリスト)

(貼り付け終わり) 

暗い近未来の日本を迎えないために、すべき事は何?

2016年03月28日 11時36分45秒 | 日記
 高齢化社会と人口減少が急速に進行している日本。

 医療保険などの社会保障費、年金支払者の増加などで財政が厳しくなるのは目に見えており、おまけに若い労働人口が減少する一方で、介護関係の職員不足も顕著になり、低賃金の労働者を充足するために、外国人労働者の受け入れが真剣に検討されている。

 口ばかり威勢の良い安倍政権で、日本の抱える大きな問題を解決できるとはとても思えないが、たとえ選挙で野党に政権が渡るにしても、現状の構造改革ができなければ、問題の解決には程遠くなるであろう。

 日本はあまりにも官僚機構が、がんじがらめの既得権益保護の姿勢を護持しているため、根本的な解決が非常に困難であるのが実態だ。

 かっての民主党政権の時代に、官僚組織に手をつけようとしたが、ものの見事に民主党政権は官僚に打ちのめされてしまう。

 そして国民に官僚と対決するような政権では、政権運営がうまくいかないという刷り込みを、しっかりされてしまった。 

 はたして本当にそうであろうか? 以下に週刊現代に掲載された、非常にクラーイ近未来の予測が出ている。

 そういう世界にならないためにも、今度の選挙では真剣に政治家を選択すべきだと筆者は思うのだ。


(現代ビジネス 賢者の知恵より貼り付け)

「2025年問題」をご存知ですか?~「人口減少」「プア・ジャパニーズ急増」…9年後この国に起こること
2016年03月27日

——人口の20%が「後期高齢者」になり、単純労働に就くのは移民と外国人。医療と介護の安心は根底から覆る


 街に人があふれ、子供たちが教室にぎゅうぎゅう詰めで授業を受けた、古き良き日本は二度と戻らない。増えてゆく空席を、言葉の通じぬ人々が埋めてゆく。カネも絆も失った私たちは、どうなるのか。

●10人に1人はボケている

 「このまま無為無策で過ごせば、日本はとんでもない事態に見舞われます。社会保障の破綻、際限のない増税といった山積みの問題が、10年足らずで一気に表面化するのです」

 こう警鐘を鳴らすのは、政策研究大学院大学名誉教授の松谷明彦氏だ。

 およそ1世紀も増え続けてきた日本の人口が、昨年ついに減り始めた。

 「これから10年間で、日本の人口は700万人減ります。15歳~64歳の生産年齢人口が7000万人まで落ち込む一方で、65歳以上の人口は3500万人を突破する。

 2025年の日本は、団塊の世代が75歳を超えて後期高齢者となり、国民の3人に1人が65歳以上、5人に1人が75歳以上という、人類が経験したことのない『超・超高齢社会』を迎える。これが『2025年問題』です」(前出・松谷氏)

 東京五輪が終わったあと、日本の姿は、今とは大きく変わっている。現在と同水準の人口を維持できるのは、東京・神奈川・千葉・埼玉の首都圏と、愛知・沖縄・滋賀のみ。青森・岩手・秋田・山形・福島の東北各県や、中四国の大半の県は、軒並み1割人口を減らす。

 働き方も、大変化に見舞われる。厚生労働省のデータによれば、'00~'10年の10年間で、事務職や工業系技術者は14%、農家や漁師は30%、また土木作業者や建設技術者は40%も減っている。一方、介護関係職員は倍以上に増加し、葬儀関係者も1・5倍に増えた。この傾向は、2025年までにますます加速する。


 「これからの日本は、地方の人口は減ってゆきますが、大都市圏では人口はあまり減らず、同時に高齢者が激増します。首都圏では、高齢者人口はおよそ1000万人にも達するでしょう。おそらく2025年を待つまでもなく、あと数年で、首都圏の介護施設は足りなくなります。『介護クライシス』と懸念されている事態です。

 誰にも介護してもらえず自宅で放置され、亡くなる人が急増する。『このまま東京にいたらまずい』と考え、地方に移住する高齢者も出るでしょう。しかし、移住できない大多数の人々は、厳しい状況に追い込まれる」

●病院がどんどん潰れる

 経団連の榊原定征会長は、ついに「移民に頼らざるを得ない。ドアを開けに行かないといけない」と明言。自民党も特命委員会を今月設置し、まさに移民受け入れの議論を始めようとしている。

 移民や大量の外国人労働者を受け入れた2025年の日本が、どんな国になるかについては後篇で詳述するが、ひとつ言えるのは、その「劇薬」をもってしても、事態は好転しないということだ。

2025年、まず医療がパンクする。

 厚生労働省の推計によれば、2025年の医療保険給付は総額54兆円と、現在より12兆円以上増える見通しだ。衰えゆく日本の国力で、とうてい賄える額ではない。 「破綻シナリオ」を回避するために、国は医者と病院を減らしにかかっている。患者は確実に増えるにもかかわらず、である。NPO法人医療制度研究会副理事長で、外科医の本田宏氏が言う。

「今、全国で病院の身売りや倒産が相次いでいます。実は日本の医師数は、先進国最低レベルです。医者がいなければ、治療できない。治療できなければ、医療費が膨らむこともない。つまり、医療費を抑えるため、医師の数を減らし、病院の数も抑えているわけです。

 13年には、埼玉県で25ヵ所の病院を36回たらいまわしにされて、患者が亡くなる事件もありました。地域の病院が減ってゆくと、こうした事件が全国で多発するでしょう」

  9年後、全国の入院患者数は138万人(1日あたり)を超えている。だが、全国の病床数は今でさえそれに足りない134万床で、今後さらに減らされる見通しだ。確実に、数万から数十万人の病人が、病気にかかっても入院できなくなる。

 少し体調が悪いくらいで、いちいち病院に行くな。いや、行きたくても行けない—それが常識になるのだ。

 介護も同様である。介護保険制度が設けられた'00年に比べ、現在、介護関連の職につく人の数はおよそ4倍にも膨らんでいる。それでもまだまだ、人手が足りそうにない。前出の高橋氏が言う。

「これからの日本は、地方の人口は減ってゆきますが、大都市圏では人 口はあまり減らず、同時に高齢者が激増します。首都圏では、高齢者人口はおよそ1000万人にも達するでしょう。おそらく2025年を待つまでもなく、あ と数年で、首都圏の介護施設は足りなくなります。『介護クライシス』と懸念されている事態です。

 誰にも介護してもらえず自宅で放置され、亡くなる人が急増する。『このまま東京にいたらまずい』と考え、地方に移住する高齢者も出るでしょう。しかし、移住できない大多数の人々は、厳しい状況に追い込まれる」

●年金なんて出るわけない

 さらに、多くの国民が不安に思いつつ、半ば諦めているのが、年金の行く末だ。2025年にも、年金制度そのものは残っているだろう。だが、その内実が、「破綻同然」の水準にまで崩壊しきっていることは間違いない。

 長年、年金を研究してきた、社会保険労務士の大曲義典氏が分析する。

 「年金をはじめとする社会保障費は、現在の約120兆円から、2025年には総額150兆円に増えると考えられます。

 しかし、'14年に厚生労働省が行った将来予測は、『現役世代の賃金はこれから毎年上がり、10年後の保険料収入は40兆円に達する見込みだ。だから年金は破綻しない』といった、実態からかけ離れた仮定が満載で、明らかに『絵に描いた餅』でした。

 現実的な値をもとに計算すると、遅くとも2030年代前半には、年金積立金は枯渇します。『所得代替率(現役時代の給料と年金支給額の比率)50%を死守する』という政府の目標も、おそらく叶わないでしょう」

 年金破綻を防ぐには、2025年まで、経済成長と毎年1・5%ずつの賃金アップを同時に達成しなければならないという。だが日本人の平均賃金はもう20年間も連続で下がっており、しかも働き手は減る一方だ。

 「かくなるうえは、消費税増税しかない」というのが財務省の理屈だが、消費税を1%上げても2兆円しか税収は増えない。10年足らずで15%も消費税を上げるというのは、とてもじゃないが、ムチャな目標である。

 「2025年というのは、今まさに行われている、60歳から65歳への年金支給開始年齢引き上げが最終段階にさしかかっている頃です。おそらく、年金の実質的破綻は誰の目にも明らかになっているでしょうから、『70歳への支給開始年齢引き上げ』も実行に移されるはずです」(前出・大曲氏)

 ただでさえ、物価や賃金の変動に合わせて給付額を減らす「マクロ経済スライド」で、2025年には今の8割前後まで年金給付額が減っている。それに加えて、残念ながら現在の50代から下の世代は、「ようやく年金がもらえると思ったのに、まだ待たされるのか」と嘆くはめになるのだ。

 介護の人手は足りず、病院に行ってもすぐに追い返される。認知症の高齢者が、わずかな年金を握りしめて、閑散とした街中を歩き回る—後篇では、そんな「絶望の国」と化した、未来の日本で起きる悲劇を見てゆこう。

●中国人に乗っ取られる

 「中国農村部の貧しい人々の間では、日本神話は健在です。日本のコンビニなど、単純労働の職場で働けば、中国の何倍も収入が得られる。病院に行くにしても、中国のように2~3日並ばされることもありません。日本が本格的に外国人労働者を受け入れる方向に舵を切れば、移民の問題は当然出てくるでしょう」(産経新聞中国総局特派員の矢板明夫氏)

 前篇でも触れたとおり、政府や財界は、安上がりな労働力を求めて「外国人労働者受け入れ」に前のめりになっている。

 これから、元気に働ける日本人の人口は、右肩下がりに減ってゆく。それならば、過酷な単純労働にも文句を言わず、人件費も安い外国人労働者を雇えばいい—。経営者の間にはそんな風潮が広がり、すでにコンビニや飲食店の店員など、サービス業の現場はアジア系の外国人労働者が席巻している。介護の現場も、間もなくそうなる。

 「一方で、今は日本経済が中国に比べて良くないため、中国のエリート層は日本に魅力を感じなくなり、渡航する人も減っています。彼らにとっては、日本に行くよりも中国にいるほうが儲かるのです」(前出・矢板氏)

 ついこの間まで、日本人の多くは「日本人であれば、無条件に中国人よりも豊かだ」と思い込んでいた。しかし、上海の物価が東京の物価を優に上回る今、その認識は完全に時代遅れだ。

 貧しい日本人は、貧しい中国人と同じ条件で働かなければならなくなった。2025年には、そうした日本人がひとつの階層を形作り、アメリカの「プア・ホワイト(貧しい白人)」ならぬ「プア・ジャパニーズ」と呼ばれているだろう。

 '05年から'15年の10年間で、外国人労働者の総数は34万人から90万人に激増した。うち最も多いのは中国人で、32万2500人あまり。以下ベトナム人が11万人、フィリピン人が10万6500人、ブラジル人が9万6600人と続く。このペースが続けば、2025年には140万人を突破する計算だ。

 今、彼らの多くが住んでいるのは、高齢化が進んで年々空洞化している郊外の団地である。東京都区部郊外のニュータウン・高島平団地に約30年住む、ジャーナリストの浅川澄一氏が言う。

 「現在、高島平団地の高齢化率は50・2%に達しています。1万5000人あまりの住民のうち、7600人が65歳以上と、まるで日本社会の縮図です。'70年代初めの開発当時に入居した世代がそのまま年をとり、60~80代を迎えているわけです」

 日本人の夢が詰まったニュータウンは、今や「オールドタウン」と化した。2025年までには、少なからぬ住民がいなくなっているはずで、入れ替わるようにして、多国籍の外国人労働者が流れ込んでゆく。地域紙「高島平新聞」の調べによると、現在、同団地に外国人は約900人住んでおり、団地の子供の6・5人に1人は外国人だという。

 高島平団地の近隣には、日本の看護師資格をとるために来日した外国人向けの日本語学校がある。そこに通う留学生は、地域のボランティアなどにも積極的に加わり、住民の信頼を得ている。

 しかし、数ある日本語学校の中には、事実上の「寄せ場」と化しているところもあるのが実情だという。外国人労働者問題に詳しい、ジャーナリストの出井康博氏が言う。

 「急増しているアジア系の外国人労働者は、その多くが日本語学校に通う留学生です。ただ、学校には在留資格を得るために籍だけ置き、目的は出稼ぎ、という人も少なくありません。

 彼らはブローカーに『日本に来れば、簡単に月20万~30万円稼げる』と騙され、家や土地を担保に、学費など200万円近くを借金して来日する。ブローカーが日本語学校と組んで、彼らを食い物にしているのです」

●傷害・窃盗・大麻・地下銀行

 首都圏の周辺には、すでに「外国人労働者の街」と化しているエリアもある。昨年上半期、外国人の刑法犯検挙件数は6610件。刑法犯全体の4%未満と、これだけを見ると必ずしも多いとは言えないが、実はベトナム人の犯罪件数が前年同期比で36%も急増している。民家を改造して大麻を栽培する。本国への違法送金を格安で請け負う「地下銀行」を運営する……その手口は、単なる傷害や窃盗だけにとどまらない。物価の安いベトナム出身の労働者が、低賃金で過酷な労働をさせられ、耐えきれずに犯罪に手を染めるケースが増えていると考えられる。

 「アジア系外国人労働者の中には、徹夜の肉体労働など、労働条件のよくない仕事に携わる人も多い。また、日本人の人手不足もあって、『留学生のアルバイトは週28時間以内』という法律の規定も全く形骸化しています。日本語学校の学費の支払いを逃れようと、退学して不法就労に走る者もいる」(前出・出井氏)

 東京五輪が終わり、5年の月日が流れた2025年の日本では、各地でマンションの空洞化がさらに深刻になり、空き家率も20%を超えている。

 半ば打ち捨てられた郊外のマンションや団地へ、中国の貧困層のみならず、東南アジアでも賃金が安いベトナムやカンボジア、バングラデシュなどからの外国人労働者が住むようになる—彼らに日本語は通じない。

 「日本に出稼ぎに来る外国人が、皆日本語を勉強し、社会に溶け込む努力をするとは限らない。そういう人々が集まって、外国人だけのコミュニティがあちこちにできてしまうのです。

 中国でも、北京など都市部の建物には、窃盗防止のため必ず金属の防犯ドアが付いていますが、日本にはそうした設備がないところも多い。外国人犯罪集団からすれば、日本は犯罪天国に見えるでしょう」(前出・矢板氏)

 移民という「最後の手段」に手をかけた日本。2025年の治安は、年間に東京の2・5倍の殺人事件が起き、34倍の強盗事件が起きるニューヨーク以下に悪化していてもおかしくない。

「週刊現代」2016年3月26日・4月2日合併号より

(貼り付け終わり)

安倍政権は、かっての管、野田の民主党政権より、そんなに良くなったのか?

2016年03月25日 16時29分59秒 | 日記
 英国エコノミスト誌の翻訳記事が、提携している日経ビジネス誌に載ることがあるが、日本の政治情勢を簡潔に記している。

 7月に予定されている、参院選、ないしはもう少し早まる可能性もあると予測されている衆参ダブル選挙を控えて、安倍首相が目論む憲法改正まで持っていけるか、エコノミストの記者は冷静に日本の政治情勢を、わかりやすく書いている。

 日本のメディアが、なんだか政権に対して委縮気味に表現する最近の傾向に対して、非常に簡潔で的確な指摘を行っている。

 ここ3年間、安倍政権が目指した経済成長も全くなく、消費税の10%改定もおぼつかなくなっている。

 普通であれば、安倍政権に対しての大きな批判の声も出そうであるが、国民がおとなしいのか、大手メディアの世論操縦のせいなのか、対立する野党民主党の体たらくのせいなのか、なんとも消化不良のような雰囲気で、毎日が推移しているのが、筆者などは本当にもどかしい。

 現在の世論調査では、自民党支持者が40%も存在し、民主党支持者はたったの10%であり、かっての民主党政権が自民党に勝った頃の熱気が、すっかり消え失せている。

 改めて民主党政権の後半、管、野田政権での腰砕けが、国民に与えた失望の大きさが、結果として自民党になびかせてしまったといえるのであろうが、それにしても現在の安倍政権も決して良いとは言えないと筆者には思えるのだが。

(日経ビジネスより貼り付け)

The Economist
同時選勝利を目論む安倍首相 自らが障害
2016/3/25

 安倍晋三首相が前回、総選挙に踏み切ったのは、2012年に首相に就任してからわずか2年後のことだった。即座に解散総選挙を決めた安倍首相の目は、野党陣営の混乱ぶりと、議席数を増やすチャンスをとらえていた。

 それでも安倍首相は「公約の重大な変更について国民の信を問う」という大義名分のもとにこの選挙を進めた。経済が停滞するのに鑑み、以前から決まっていた消費税引き上げを延期すると決断したからだ。選挙は自民党の圧勝に終わった。そして今、国民の信を問う必要がある重要政策が再び浮上すると思われる。

 日本経済が一向に回復の兆しを見せない中、安倍首相がまたしても消費増税を先送りする可能性があるのだ(現時点では2017年4月に8%から10%に引き上げることが予定されている)。決断のタイミングは、日本が議長国を務める5月のG7(先進国首脳会議)を終えてからになるだろう。前例に従うならば、この問題に関して解散総選挙を行わないわけにはいかない。6月か7月には参議院選挙が予定されている(参院議員の半数が改選される)。安倍首相はおそらくこれに合わせて総選挙の日程を決めるだろう。

■原発、安全保障、スキャンダル

 自民党の中にはより早い時期の総選挙を望む者もいる。安倍首相の運が尽き果てないうちに、急いで済ましてしまいたいのだ。現在、安倍政権の前には様々な困難が立ちはだかっている。最大の懸念は経済だ。個人消費の冷え込みを受け、2015年10~12月期の日本経済は年率換算で1.1%縮小した。日本銀行(日銀)は1月、マイナス金利政策を打ち出して需要の喚起を図ったが、その狙いとは裏腹に株価は下落し、円高が進んだ。

 遅かれ早かれ日本の有権者は、停滞する経済への不満を安倍首相にぶつけることになる。同首相は経済立て直しを約束していたのだから。

 国民の支持を得られていない政策は他にもある。安倍首相はそれらに対する制裁をまだ受けていない。原子力発電所の再稼働はその一つだ。5年前のこの時期に発生した福島第1原発のメルトダウンという最悪の事態を受け、日本の原発はすべて運転を停止していた。

 昨年成立した新たな安全保障関連法について、多くの専門家がこれを違憲だとしている。この法律は海外でこれまでより幅のある行動を日本に許すもので、多くの日本人が不快に感じている。

 ただでさえこうした不満が渦巻いているところに複数の与党議員が不祥事を起こした。1月には安倍首相の側近だった甘利明経済再生担当相が政治献金疑惑をめぐって辞任した。また、男性国会議員として初めて育児休暇をとると宣言して話題を集めていた議員が、妻の妊娠中に他の女性と不倫関係にあったことが発覚。それ以来、安倍政権の支持率は50%を下回っている。

■首相が進める改革は十分か

 消費税に関しては、2014年に行われた最初の増税(5%から8%)が個人消費に打撃を与えた。安倍首相の経済アドバイザーを務める本田悦朗氏は、安倍首相が経済を回復させるべく広く取り組んでいる政策について国民の信頼を失いたくないなら、今度の引き上げを延期することが不可欠だと話す。

 3年間にわたって大がかりな金融緩和を行った今でもコアインフレ率はゼロに近く、日銀が目標に掲げる2%には程遠い。労働組合の幹部たちでさえ、大幅な賃上げを要求してはいない。そして銀行が貸し出しによって得られる利ざやは相変わらず圧迫されている。こうした状況はすべて、安倍首相が約束する「賃金・消費・投資の増加による好循環」を脅かすものだ。こうした状況下で夏の選挙に臨んだ場合、有権者が安倍政権に投票するかどうかは疑問だ。

 日本経済の自由化を進めるべく安倍首相は一層努力すべきだ、と考える人は多い。例えば、労働市場を徹底的に改革する。非正規労働者は低賃金に甘んじており、個人消費の足かせとなっている。これを改善するためのもっと強力な政策を打ち出すこともできる。だがある政府官僚によると、踏み込んだ改革計画が発表される予定は当面ないという。

 一方、中道左派政党の野党・民主党は総選挙に向け候補者の擁立に奔走している。だが確固とした足掛かりは築けそうにない。世論調査によれば民主党の支持率はわずか10%にすぎず、哀れなほどの水準にとどまっている。これに対して自民党の支持率は4割にのぼる。

 民主党は消費増税の2度目の延期を取り上げ、アベノミクスの失敗がその原因であると追求する構えだ。だが普通世帯を取り巻く困難な状況を考慮し、増税の延期そのものには反対しないと思われる。

■確かな憲法を求める安倍首相

 衆参ダブル選挙を実施することの是非を考えるにあたり、安倍首相は自らの夢の実現につながる大勝利が可能かどうかを検討することになる。安倍首相の夢、それは憲法改正だ。その中心にあるのは、1940年代後半に進駐軍が策定した平和憲法を書き換えたいという思いである。

 安倍首相はこうした改正が必要となる理由について、次のように説明している。あの悲惨な戦争から70年が過ぎた今、日本はもはや、時代遅れの平和主義によってがんじがらめにされる必要はない。日本を取り巻く環境は日増しに危険度を増しているのだから――。

 日本で憲法を改正するためには、衆参両院のそれぞれで議員の3分の2以上が賛成し、国民投票で半数以上の賛成票を得る必要がある。自民党とその連立相手である公明党は、衆議院では議席の3分の2以上を確保している(475議席中325議席)が、参議院においてはかろうじて過半を超える程度である(242議席中136議席)。

 安倍首相が参議院で議席数を増やすことは可能かもしれないし、右派の小政党、おおさか維新の会の協力も期待できる。それでも憲法を改正しようとすれば、日本の平和主義を誇りに思う国民の多くが大きな警戒心を抱くだろう。つまり、選挙での勝利を願う安倍首相にとって、憲法改正の取り組みについて喜々として話すその性向が最大のリスクとなるのだ。

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(貼り付け終わり)

高市の電波停止発言問題で、著名ジャーナリストが日本外国特派員協会で抗議会見。

2016年03月24日 21時16分13秒 | 日記
 24日に、日本外国特派員協会において、日本の著名なジャーナリストによる会見が行われた。ほんの一部は今日の民放のニュース番組でも報道されたが、BLOGOSにかなり詳細な書き起こしが掲載された。

 筆者も関心があるジャーナリストの本質問題も話されている。

 少々長い文章でもあり、筆者もコメントを書くまでもないので、貼り付けましたからお読みください。

 TVメディアが明らかに委縮した報道に陥りつつあり、これは正常な日本をゆがめることになり、非常に危険性を感じています。


( BLOGOSより貼り付け)

【詳報】岸井氏、鳥越氏らが「日本のメディアの苦境」を海外メディアに訴え〜田原氏からは異論も
BLOGOS編集部
2016年03月24日 17:23


 24日、高市早苗総務大臣による"電波停止"発言を受け、日本外国特派員協会でジャーナリストによる会見が開かれた。登壇したのは大谷昭宏氏、青木理氏、岸井成格氏、田原総一朗氏、鳥越俊太郎氏の5人(予定されていた、金平茂紀氏はブリュッセルでの取材のため欠席)。

 会見では、"政権からの圧力"や、メディア側の"自主規制"、またその原因の一つとして記者クラブ問題が取り上げられるなど、幅広いテーマについて意見が交わされた。

●岸井氏「どこまでも追及していくつもり」

岸井氏: 高市総務大臣の発言は黙って聞き逃すことのできない暴言です。謝罪して撤回するのか、このまま開き直るのか、非常に重大な局面です。発言が憲法と放送法の精神に真っ向から反するということを知らなかったとすれば、担当大臣として全く失格であり、知っていて故意に曲解したのであれば言論統制への布石であり、安倍政権全体の責任であることは免れません。どこまでも追及していくつもりです。

 私の場合、どうもターゲットの一つになっていたようでありますが、「ニュース23」という番組で、安保法制が手続き的にも中身的にも問題がありすぎると40回にわたって、どちらかというと批判的に展開しました。公平公正とは何か。最も大事なことは、ジャーナリズムとして政権がおかしな方向に行ったときはそれをチェックし、ブレーキをかけるのが最終的な使命です。それが果たせなかったとすればジャーナリズムは死んだと同じことであります。その役割を果たしたことがひょっとして偏向報道だと言うのであれば、これと真っ向から対決せざるを得ないということです。


●田原氏「高市さんの安倍総理へのゴマすりじゃないか」


田原氏: 偏向報道をやっている中でならわかるけれども、何にもない。何にもないのに脅し?私には脅しとすら思えない。結局あれは、高市さんの安倍総理へのゴマすりじゃないかと思う。もっと勘ぐれば、安倍さんが高市さん以外の女性を相当信頼しているから、"私だってこんなにやってるんだぞ"というゴマすりじゃないか。それ意外理由らしものはほとんど無い。

 第一、放送法について彼女は言うが、まず日本は言論表現の自由が憲法で保障されているわけだし、時の権力、時の政権に対して、いかにそれをウォッチするか、どこが間違いがそこを厳しく追及するのがマスコミの役割だと思います。そこで偏向とか公平とかそういう言葉は馴染まない。

  例えば安倍政権はこれまでの平和国家という日本の看板を外しにかかっている。この変化について、マスコミが安倍内閣を厳しく追及するのはむしろ当然だと思う。

 別に高市発言がきっかけになったんではないけれども、この3月でそれまで非常に骨のあるキャスターと言われていた岸井さんや古舘さんやNHKの国谷さんが時期を同じくして辞める。これは高市発言が原因で辞めるんじゃないんだけれども、一種のマスコミの萎縮現象ではないかと捉えています。


●鳥越氏「私の立場としては絶対容認することはできない」


鳥越氏: ある個別の事象について、右の意見があれば左の意見もあると。その2つの意見を公平に取り上げる必要があるというのはそれは当然の事でしょうね。個々のそういうことと、政権与党を常に監視してチェックして、間違っていれば批判するということは全く次元の違う話であって、それを高市氏は混同してしまっている。

 当然政府与党の税金の使い方に国民、納税者の立場から疑問がある場合、おかしいと伝えるのはメディアの当然の権利及び義務だと思います。その次元が違う話を高市大臣が故意にか、あるいは無知のせいか混同して、テレビの電波を将来止めるかもしれないという話にしてしまいました。

 これを将来にわたって認めてしまいますと絶対に禍根を残しますので、今回きっぱりとケリをつけて、ハッキリさせておかなければならないと思います。私の立場としては絶対容認することはできない。ジャーナリズム、メディアの歴史からして、こういうことはありえない。


●大谷昭宏氏「これが日本の言論なんだというのを世界に発信していただきたい」

大谷氏: 先進国でありながら、こういうひどい状況にあることを海外に発信できることは大変ありがたい。この実情を世界に向けてみなさんに力強く発信していただくことを切に願っています。

 一昨年の11月に、特定秘密保護法について同じメンバーで行動し、今回も2月29日に同じメンバーで声明を出しました。こうしてみなさんの前に出させて頂いて、アピールさせてただけることを有り難く思いますが、残念ながらさきほどメディアの出欠を確認したところでは、NHKは来ていないと聞きました。NHKは前回も放送しておりません。いろいろ圧力があったとかなかったとかという議論はあると思いますが、公共放送、受信料で成り立っていて、海外のメディアでさえ高い関心を持っているにも関わらず、NHKが何ら見向きもしない、そういう中で私たちが声を上げているということを見ていただくだけで、日本のメディアの状況はわかって下さるんじゃないかと思います。

 大先輩である田原さんの言葉を翻すようで申し訳ないですが、高市発言について私は到底そうは思えなくて、やはり安倍総理は自分の任期中に憲法を変えたいという流れのなかで特定秘密保護法つくり、安保関連法案を通すという中で、どうしても今のメディアの報道が言うなれば"目の上のたんこぶ"なんだ、気にかかってしょうがない、これをならしておかないことには憲法改正に持っていけないという感覚が強いのではないかと思います。

 高市総務大臣は、個々の番組を見て局全体を判断すると言っている。つまり、「岸井さんを使い続けるなら、TBSを止めるかもしれないよ、古舘さんがこういうこと言うんであれば、テレビ朝日止めるかもしれないよ」ということを言っているわけです。世界広しといえども、大臣が局全体の電波を止めると言うのは、近代国家としてありえない話です。それを堂々と国会の中で口にするのは、極端な独裁国家でしか考えられないことです。

 それを高市大臣は「法律で大臣がやることになっていますから」という。であるとすれば、じゃあその大臣の立場ってのは何なんだと。高市大臣は自民党員で、電波には不偏不党を求めながら、その大臣は憲法改正を党是としている自民党員なんです。例えば夫婦別姓反対、憲法改正を掲げる日本会議に二百数十人の自民党議員が入っています。高市大臣はその議員懇談会の副会長です。そんな人が大臣の意に沿わないんであれば、一つの番組から電波を止めるいう。こんなことを言うのは近代国家としてはありえないと思います。 ここを外国特派員の皆さんにわかっていただいきたい。 これが日本の言論なんだというのを世界に発信していただきたい。


●青木理氏「言論・表現の自由の存否をかけた戦い」


青木氏:まず、金平さんのメッセージを代読します。

 金平茂紀です。記者会見に出席するはずだったのですが、ブリュッセルでテロが起きて、そのカバーのためベルギーにいて参加できません。とても残念です。実はそれまでイラクのクルド人自治区で取材をしていて23日の夜に帰国するはずだったのですが、このテロ事件が起きたために、事件現場に直行しました。これが私の仕事の性なのです。

 私はTBSというテレビ局で報道特集という番組のアンカーを5年半やっています。それ以前も含め39年にわたってTBSでテレビのニュース取材ばかりをやってきましたが、今ほどニュースルームに息苦しさが蔓延している時代はないと思います。

 それについて私たちは2月29日に日本記者クラブで会見を行いました。高市総務大臣のいわゆる停波発言に抗議するためでした。記者会見に対する反応は予想の範囲内でした。日本の新聞は比較的多くの記事を掲載していました。しかしテレビ局のいくつかは会見を全く無視してニュースでは放送していませんでした。NHKも同じく無視していました。

  多くの市民の方から激励のメッセージを頂きました。また会見の後にテレビニュースの現場で働く人々から匿名の告発も届きました。これが現実です。

 今の息苦しさの本質は、政治権力の強圧的な姿勢の結果というよりも、メディアの側が政治権力の意向を先取りして自己規制・自己検閲を強め、本来やる必要のないことをやっている結果だと私は思います。

 最後に一つだけ付け加えさせていただきますが、NHK「クローズアップ現代」のアンカーを23年間にわたって続けてこられた国谷裕子さんが最後の放送の中でおっしゃっていた、"同調圧力の強い現代日本社会の特徴"について、私自身も同じ思いを共有しています。

 ジャーナリズムを殺すのは、組織や集団に対する過剰な忠誠心が大きな部分を占めているのではないかと思います。「クローズアップ現代」の国谷さんに起きたようなことが再び繰り返されてはならないと思います。

 さて、僕自身はもう少し大きな視座で見なくてはいけないのではないかなと思っています。高市大臣の発言だけを捉えて批判するのではなく、現政権の言論・表現の自由への姿勢を見なくてはいけないのでないかと思います。

 自民党が2012年の発表した憲法改正草案では21条を「1.集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、保障する。2.前項の規定にかかわらず、公益及び公の秩序を害することを目的とした活動を行い、並びにそれを目的として結社をすることは、認められない。」としています。つまり、公益および公の秩序を前提条件としているわけです、つまり現政権とその周辺にいる人たちのメディアを巡る様々な言動の意味が辻褄が合うし、納得できる部分があるわけです。

 現行憲法が言論・表現の自由を認めているので、下手なことはできないけれども、当該テレビの幹部を呼びつけたり文書などで脅しつけたり、現行法体系でも可能だという屁理屈を持ちだして放送法による電波停止まで言及する。これを僕は恫喝と受け止めた。政権が考える、公益及び公の秩序に反するものについては制限をかけても当然だという振る舞いの背後にこの考え方が貫かれているんじゃないかと思うんですね。自民党の憲法改正草案のQ&Aには「内心の自由はどこまでも自由ですが、それを社会的に表現する段階になれば、一定の制限を受けるのは当然です。」と書いてあります。

 そう考えると、僕らにとっては考えられないような発言もある種筋が通っている。僕らが考えなければいけないのは、一つ一つのイシューに向き合うよりも、もはや日本における言論・表現の自由の存否をかけた正面の戦いで、そういう考えと対峙しなければいけないような位相に入っているのではないかと思っています。本当に危機的状況ではないかと深刻に受け止めています。

 「NHKは右から左に流しているだけ」「だから民放があるんだ」
ー危機という状況について、たとえばNHKにお金を払っているような一般市民としてどういうことが出来るのでしょうか。

岸井氏: 今日はNHKが来ていませんが、ジャーナリズムなら当たり前の批判的姿勢がNHKから感じられない。右から左に流しているだけ。でも視聴習慣で見ているせいか視聴率は圧倒的に高いのですが、あれでは本当のことは全くわからない。

 NHK会長人事についても色々噂を聞いてますけれど、それで現場が萎縮して権力の意に沿おうとしている。見ているといつも最後に政府与党の言い分をくっつけることで完結させようとしていますよね。ちょっと異常です。NHKはここに来るべきですよ。

大谷氏: NHK内部の人に話を聞くと、必ず政府側答弁で終わんないといけないと。よく見ていただかないといけないんですが、全部そうなっていますよ。これはおかしいじゃないか、お前の所の番組は何でこうなんだ、という声を上げていかないといけない。そういう見方をしようという声を広げていただけるのが大きな力になると思います。

鳥越氏: 残念ながら、今は国民の声を反映させる場がない。インターネットをチェックしていれば国民がこういう考えを持っているというのもわかりますが、それがオープンな形では外には出てきません。中にとどまっています。しかし、安保関連法案を機に、久しぶりに国会デモ、日本全国で反政府デモが行われました。これはおそらく一つの時代の始まりだと思いますけれども、国民は黙ってないで行動に出ますよ、街に出ますよ、ということが日本でもようやく起こってきました。

 僕らにとっては60年安保、70年安保を過ごしてますので街頭デモというのは国民の権利として当然ですが、絶えて久しかった。警察が完全に街をコントロールし封鎖して、国民が自由に街頭で自分の意思を表することができなくなっていた。

 それが最近、中高年も含め、特徴的なのはSEALDsや高校生の会といった若者たちが立ち上がって、デモに出てくるようになった。これは決して絶望したり諦めるのではなくて、そういう期待感、信頼感を持ちながらやってきたいと思います。

田原氏: NHKなんて、いい加減な局だからそれでいいんですよ。だから民放があるんだ。

 この前の選挙のとき、萩生田光一がテレビ局に高市早苗みたいな事を言って来た。しかも文書を手渡した。そのことを本来は在京の報道局長たちが集まって会議開いて、みんなで自民党に抗議をすべきだったと思います。なのにそういうことをしなかった、放送しなかった。当然NHKも放送しない…あんな局は国営放送だから良いんですよ。

  実は放送したのは、僕の「朝まで生テレビ!」と金平さんの「報道特集」だけ。ほとんどの局はそのとを放送もしない。放送しないで言うこと聞いてしまう。こういう流れが非常に危ないと思っています。

青木氏: メディアの責任も大きいと思うんですね。放送法の問題なんかは、もっとテレビがガンガンやればメディアの原則もわかるのに。

 僕が思い出すのは、後藤健二さんが亡くなったとき、アメリカのオバマ大統領の緊急声明には、こんな一文があったんですね。「後藤氏は報道を通じ、勇気を持ってシリアの人々の窮状を外部の世界に伝えようとした」と。つまり、後藤さんへのジャーナリズム活動への経緯が入っている。しかし安倍総理の声明には入っていない。むしろシリアに行こうとしたジャーナリストのパスポートを取り上げあげちゃう。しかもそれに対して市民からもメディアからも抗議の声が上がらない。

 確か「紛争地のジャーナリストの危険性をゼロにすることはできない。唯一の方法があるとすれば沈黙することだが、しかし沈黙してはならないんだ」ということを、政府当局者だったケリーさんもおっしゃった。こういう、メディアとジャーナリズムの原則論を掲げる国と、ごく当たり前のジャーナリズムの原則が共有されていない日本の現状を考えると、僕達の責任かなとも思う。放送法の問題なんかはどんどんいろんな形で問いかけていく。この会見がその一歩、一助になればと思う。


 「政権からの圧力」と「マスコミの堕落」
ー中国ではジャーナリスト逮捕されたりと、非常に厳しいですよね。アメリカでも国が監視したり法的に追及したり、日本よりある意味ではひどい状況だと思うんですよ。にも関わらずなぜ、日本のメディアがこれほど萎縮するのか、そのメカニズムはなんでしょうか。どういう圧力のかけ方があるのか。もう一つは、朝日新聞の吉田調書の問題が一つの転換期というか、今の萎縮問題の始まりなのか。(マーティン・ファクラー氏)

岸井氏: 私は明日で「ニュース23」のアンカーを降ります。いろんなことを言われましたが、私に対して少なくとも直接・間接の圧力は一切ありません。それを感じさせるものも私の周辺ではありません。相手もそれをやれば、私がそれを番組で批判することを察知しているからでしょう。しかしタイミングが非常に悪かった。テレビ局の人事がちょうど動き出した時に、ご存知のとおり私を批判する、飛んでもない、信じられないような気味の悪い意見広告が載った。それと時期を同じくして、古舘さんの交代や、国谷さん降板が一斉に起きて、萎縮してやっているんじゃないかという見方が出ている。

 政権側の今のやり方は非常に巧妙です。悪く言うと狡猾です。正々堂々と言ってこない。そういう意味では高市発言はやりすぎちゃったんでしょうね。でもやらざるえ得なかったんだと思います。

 また、私は今の流れは吉田調書からだとは思いません。ただ同じ時期にああいうことが起こると、ちょっと待てよ、という雰囲気が出てくる。

 それよりも日本のメディアの構造的に、なぜ一斉に反発できなかったかと言うと、まさか想像もしなかったからでしょう。あんな暴言。憲法否定でしょ?そんなことを言う大臣が出るとは想像もできなかった。だからそれに対する対応が鈍かったんだと思う。それから、どうしても新聞同士、テレビ同士はライバル意識が強く、連携しようという発想がない。しかし、そこまでやらなきゃいけないような状況というのもこれまでは幸い無かった。ですから今初めて。現在進行形です。

 また、メディアの分断があります。私が信頼する内部告発などを総合すると、個別の記者を呼んで厳しく言う。それが局内で広がって、段々上の方に行く、ということが日々やられているように思います。

鳥越氏: わかりやすい形でメディアがプレッシャーをかけられて萎縮しているということではなく、目に見えない形で、気がついたら後退していたのが現実でしょう。

 いくつか理由があると思いますけれど、一番大きいのは、安倍政権は内閣支持率をなんとか維持したい。内閣支持率を保つには、テレビに安倍批判をさせないことなんです。

  国民は新聞も読んでますけれども、テレビから情報を得ていますから、誰かのスキャンダルがあったという話がでてくると、支持率下がってくる。最近いくつかのスキャンダルが出て、一頃よりは下がっている。それをなんとか食い止めたい。だからこれ以上、安倍内閣の批判をテレビで言わせない。

 どういう風な手を使っているかというと、証拠はなかなか見つからない。文書があるとか、証言をするということでの証明は難しいんですけれども、聞いたところによると、菅官房長官が恐ろしいのはオープンな会見ではないんです。"オフ懇"、つまり大臣と記者クラブとの間のオフレコ懇談。「これはオフレコですよ、書いちゃダメですよ」といいながら話をする。その場で、例えば「昨日のニュース23の岸井キャスターのあのコメントはちょっといただけないね、あれ困るよ」みたいなことを"つぶやく"わけですね。それは表には出ませんけれども、TBSの記者はメモをして上司に上げるわけです。上司はさらに上にあげて、どんどん上がっていきます。それで、「どうも政府筋は岸井のコメントに嫌悪感を抱いているらしい」という空気感が広がっていく。そうすると現場が反応する。街頭で話を聞くときも、できるだけ穏当な話だけを聞くとか、問題の設定もできるだけ柔らかめにするとか、萎縮をしていくわけです。毅然として切り込んでいく姿勢がなくなっていく。

 そういうことがずっと前からある。それを安倍政権がさらに明確にした。それまでの政権は、そこまで個々のキャスターのコメントとか、個々のテレビ番組の放送内容について、いちいち文句を言ったりしたことはない。

 ただ一つだけあるのは、安倍さんがまだ一国会議員であるときに、NHKの従軍慰安婦の問題で番組に介入して内容を変えさせたというある事象があるわけです。これで安倍さんは味をしめたんだと思う。それで、メディアというのは政治が手を突っ込んでいけば、後ろに下がってしまうという経験を安倍さん自身がした。第一次安倍政権ではお腹の具合が悪いとかって辞めちゃいましたけれも、メディアをきっちり監視しろと。つまり、メディアが権力を監視するというのが世界の常識。しかし日本では権力がメディアを監視する。

 ひとつひとつの番組をチェックして、おかしいことは文書にして残す。これは当然言わなきゃいけないと思ったら、然るべき人に言うとか、そういうかたちで政権側の意思を伝えるということを日常的やっていると、物を言わなくなってくる。これ以上言ったら地雷を踏むという手前で止まっている。

 その一番顕著な例がNHKです。もともとはあんなんじゃなかったんです。「ニュースウォッチ9」の河野さんは、最終的に何を言ってるのか全然わからないですよね。僕は見る気がしないですもん。大越さんのときはまだ言ってましたけど。

 もう一つは世代交代があって、メディアの中の世代も若くなっています。我々ここにいるのはロートルですが、青木くんのような世代がメディアの中で、もっと自分たちが学んで来た、メディアとはどうあるべきかを発言すれば良いんだけれども、上からプレッシャーかけられて後ずさりする、ということが日常的にあっちこっちのテレビ局で起きている。その結果、NHKでも民放でも見ていたんでは本当のことは何もわからない、という状況だと思います。

田原氏: 僕は今の鳥越さんには異論ありなの。要するに、官房長官がオフレコでこう言っているというのが伝わって、それに従うと。冗談じゃないよ。僕は若い時から官房長官とも幹事長とも何回も会ってますが、そんなこと言ったら文句言いますよ。

  記者っていうのは、官房長官がくだらないことを言ったら文句を言って、違うんじゃないかと言うのが記者でしょ?そうでしょ岸井さん!岸井さんも毎日の記者の時そうだったでしょ?官房長官がこういうこと言ってますよと上に言うのは、記者の堕落でしょ?

 僕はむしろ安倍内閣がどうこうと言うよりね、マスコミが堕落しているんだと思う。それが一番の問題だと思う。

岸井氏: TBSと私の関係上、立場上、鳥越さんのお話を全部肯定するわけには行かない部分があります。そういうことでなかなか難しいんですけれどね、私に対する全面広告を見れば、全部安倍さんの応援団ですよね。そこに官邸の気分が出ていることは感じます。

 それから、先ほどからの議論の流れですが、世論に訴えていく上での壁は、安倍政権は言葉が踊っているんですよ。キラキラネームばっかりなんですよ。それにメディアは流されやすい。「一億総活躍」「女性が輝く」とか。あらゆることにそういう言葉がある。よほどメディア戦略のチームが考えているだろうなと思いますが、それを右から左にNHKが流します。

田原氏: はったりだってわかるじゃない全部。簡単にそんなものひっくり返せるよね。

岸井氏: だけどそのままそれが流れちゃう。安保法制も"平和"でしょ、法律の名前もそうだし、中身も"平和"と"安全"の羅列だけど、だけど本当に結果的に日米関係が強化されて絆が強くなって、その抑止力で日本が守られるんですよと。それは存立危機自体というはっきりしないものを作って。なにそれ?って。

 つまり今まで日本の今までの防衛、なんで自衛隊という名前か。あくまでも専守防衛だったんですよ。これも議論していると騙されやすいんですけれども、憲法解釈だって今までやってきたじゃないですか、一番大きいのは絶対「戦力はいけない」と言っときながら自衛隊を持ったじゃないですか、だから憲法解釈ってあるんですよ、集団的自衛権という憲法解釈だってありえるんですよ、っていう話がありました。

 しかしその時は、どの国だって自衛権だけはある。しかも同時に朝鮮戦争が始まってたんですよね。そういうことがあったんで、何らかのそういうものは持たなきゃいけないだろうと。しかも自衛権というのは本当に全世界共通に与えられている自然権だと。だからということで、その代わり、海外に自衛隊を出す時はあくまでも派遣なんです。武力行使はしない、紛争地・戦闘地には立たない。これがいままでの絶対に踏み越えてはいけない一線だったのに。自民党政権でもずっとそれを苦労してきた。派兵か派遣か言葉遣いのようなところがありますけれど、それを一気に派兵に変えたんですよ。日本の自衛のためじゃないんですよ。そういうところの言葉でマスコミまでがやられちゃうんですよね。私はそういう問題を番組で取り上げた、それだけだったんですけどね。そういう違いを知りましょうねと。

大谷氏: つくづくここでやっているような議論をそのまんまテレビで放映できたらそのときに日本のメディアはまともになるんだと思いますね。

田原氏: 「朝まで生テレビ!」ではやってるよ。

●「既存メディアは政治と近すぎるのではないか」
ーここは何でも聞けるということが売りですのであえて聞きにくいことを聞きたいと思います。

 先ほどの質問にありましたが、大臣が言った程度、幹事長代理から手紙が来た程度でなぜ萎縮するのか。それについて、今のところ納得行く答えを頂いていません。

 NHKは人事や予算が国会事項ですからわかりますが、民放や新聞社は本来ほっとけばいいだけだと思うんですね。そこで質問したいのは、停波ということに触れられた。政府側が放送局に対して直接持っている権限はそれだけですが、本当に停波を恐れているのか。

 この中で田原さんだけが、既存の記者クラブメディアの出身ではおられないのであえて聞きます。既存メディアは政治と近すぎる、さきほど「オフ懇」という言葉が当たり前のように出てきましたが、そういう行為自体、完全に談合に見えるわけです。

 そういうことをこれまでやってきて、ここにきて政権側がメディアに少し厳しく言ってくると、自分たちが持っている特権や持ちつ持たれつの関係があって、それで色々なことができなくなるからではないかと、多くの外国人記者は思っています。

 そこで、その圧力の源泉とは何なのか。振り返って、政治とメディアの関係には問題があったと思うかどうか。我々が、そういうことだったら圧力と感じるのはしょうがないかなと納得できるお答えを頂ける方にお願いします。(神保哲生氏)

岸井氏: その辺の線引は難しいですよ。今の段階は。確かに記者クラブ制度、オフレコ懇談会が、そういう状況を生み出しやすい、そういう伝統があるのかなと今になって思うとありますね。だけど僕らはそういうものを活用してきた。

 有名な田中角栄の言葉があるんですよね。金脈事件でメディアからテレビ新聞からバッシングを受けていた時に、「君ら、それが仕事だからな」と言った。これが日本の戦後の保守政治の本当に懐の深い大事なところ。それが今の政治は譲らない。

青木氏: 日本のメディアの問題点というのは、おっしゃるとおりだと思います。記者クラブ、最近だと軽減税率でしょうね。再販制度も。そもそも新聞社もテレビ局も、本社用地はどういう出自をもっているのか。政治との近さ。番記者、オフ懇など、世界的に見れば異常だったり、ガラパゴス的に発展してきた面がある。そういうマスメディアの昔からの構造的堕落が明らかになってきた。

  加えて、金平さんからのメッセージにもあったの自己規制、自己検閲、意向を先取りした結果だという面もあるし。同調圧力の強い日本社会の特徴だと。そこでマスコミ不信が強まっている。もちろんマスコミは批判されるべきです。ただ、朝日新聞のバッシングの時もそうだったんですけれども、基本的な原理・原則までもが根腐れしていってしまうことに危機を感じます。

  政治との距離のありようも大いに議論すべきだし、記者クラブ制度もそうだけど、いい加減に直さなくちゃちゃいけないところもあると思います。取材対象との関係のありかた、警察取材のありようも変えなくちゃいけないところに来ているというところもあるんですね。ただ、そういうマスメディアの問題を僕らが真摯に考えると同時にそれを同時に原則が根腐れしていく状況が我慢できないということは強調しておきたいと思います。

田原氏: 朝日新聞の問題は極めて簡単な問題なですよ。

 一昨年の8月5日に従軍慰安婦問題報道の総括をやろうと。その中で当然やるべきことがある。謝罪ですよ。「我々のやったことは間違いだった、申し訳ない」と、読者に謝罪すべきだった。最初の原稿にあった謝罪を途中で抜いちゃった。これは朝日新聞の悪しきエリート主義です。エリートだから謝罪ができなかった。謝罪できないから、池上さんの原稿までボツにしちゃった。そして東京電力の問題まで隠しちゃった。エリート意識の問題に尽きます。

 これは余計なことだけど、政治の圧力なんて大したことないんですよ。本当に。これは局の上の方が、むしろほとんど自己規制なんですよね。TBSも自己規制、自主規制だと思います。

 僕は総理大臣を3人失脚させたんだけど、僕のところに圧力なんて何にもないもん。そういうもんなんですよ。局の上の方の自主規制で変わっていくと。そこが一番問題なんです。僕はそれを「堕落」と言っているんです。

鳥越氏: 田原さんがおやりになった、総理をクビにした頃と、今の安倍政権は明らかに違うんですね。

 もちろん、メディア側の堕落ということで一言でくくってしまえば簡単かもしれないんですけど、いろんな問題があると思うんですね。先ほども言ったように、安倍政権がこれまでの政権の中でテレビ報道を最も神経質に気にしているし、チェックしている。彼らはテレビの監視チームを作ってチェックしている。

 それから誰も触れてませんけれども新聞の2面の片隅に、総理の一日のスケジュールが載っています。それを見ているとテレビ局の社長、会長、政治評論家が総理大臣としょっちゅう会食しているんですよ。これは単なる会食ではなく、そこでなんらか政権側の意向が上層部に伝わり、それが最終的に局の中で"空気"という形で伝わって自己規制になったり、萎縮になったりしている。

 もっと具体的に言えば、去年「報道ステーション」で古賀茂明さんが問題発言をした。あれは松原さんというテレビ朝日の女性プロデューサーが最も政権批判をするのを支えて来たプロデューサーだった。その松原さんを突如降板させて、経済部長という、形だけは栄転に見えるが栄転でもなんでもない、左遷だったんすよね。それに古賀さんが触発されてああいう発言をされた。そういうことが現実に起きるわけです。これは明らかに人事的な圧力です。これはおそらく何らかの政界からの意向を受けて、もしくは忖度して取った人事です。

 そういう風に、いくつかその原因はあるんだけれども、そう簡単に言える問題ではない。しかし僕が89年に「ザ・スクープ」を始めた当時、企画は自分たちの番組で立てて、それを番組化していた。今、テレビ朝日だけなのか知りませんが、企画を作ったら必ず編成局長に出して、その許可がないと放送できないんです。だから編成局長がノーといえば放送できない。そういうチェック体制ができる。これは昔はなかったことです。それが今はがんじがらめにしばりつけて、自由に物が言えない。"これ言ったらまずいんじゃないの"という空気がある。これはどこのテレビ局にも似たような物があるんじゃないのと思います。

岸井氏: 一言言っておきますと、総理との会食、TBSの社長と会長はやっておりません。

 この政権になって何が特徴的かと言うと、新聞・テレビの現場が悲鳴を上げている。いろんな申し入れ文句がしつこいんですよ。とにかく際限なく言って来る。そうすると音を上げちゃうんですよ。「回答せよ」とか言ってきて、その仕事に忙殺されちゃうんですよね。政権側もそれを知っててやってますね。本当に執拗。これも今まで無かったことですね。


●「記者クラブは廃止すべきだ」

ーみなさんは日本のジャーナリストの大物ですから、記者クラブ制度を廃止すべきかどうか、どのような考えを持っているのか。明確に答えていただければと思います。ここにいるおそらくすべての外国人ジャーナリストが日本で経験しているのは、差別されて取材できなかったということです。日本の実情を海外に伝えたいのですが、記者クラブに差別されて門前払いされているのです。

 また、日本の場合は電波を少数のメディアが握っているため規制を受けなければいけないと思うのですが、この放送法の枠組みをどう思うか。

岸井氏: 高市発言がなぜ問題かというと、戦後の国会で、放送法はなんのためにあるかという議論してこうなっている。憲法の精神を受け継いで、あくまでもメディア側が自主的に公平な番組を作りましょう、権力の介入を許しませんよ、という明確な主旨なんですよ。この解釈をどんどんを変えようとしている現実があります。

 それから記者クラブ制度ですが、ある意味ではこれに非常に助けられて取材をしてきた自分としては言いづらいですけれども、ここにきて非常にデメリットといいますか、弊害が目立つようになってきたことは間違いないですね。これをどうするか、現場で本当に話し合ってほしいですが、結論は廃止したほうがいいですね。自由がいいですね。私から言うと現場の人たち気の毒というか、「お前たちもクラブ制度にあぐらかいてきたじゃないか」と言われると、なんとも言えないけれども。

鳥越氏: 記者クラブ制度については、私も警察を回っているときは入ってましたけど、「警察の記者クラブに入りたい」という人はいなかったので、何も考えませんでした。ただ政治とか経済ということになってくると、いろんな人が興味を持っているわけですから、公開したほうがいいんだろうなと。閉鎖的な記者クラブは廃止すべきだと、はっきりした方がいいと思いますね。

青木氏: 僕も長く通信社の記者やってまして、だいぶあぐらをかいてきた面もあるんです。でも、フリーランスになって10年位経ちますが、ほとんどアクセスができない。とくに警察当局の発表にはアクセス出来ないというのも見てきたので、非常に問題であるなと思います。

例えば一つの方法として、公共機関の中にああいう形でクラブというメディアの拠点があるのは決して悪いことではないように思う んですね。公開性、多様な参加できるのかどうか、抜本的な改革ができるのであればもうすこし考えるべきだろうなと思うんですね。でも、この問題非常に難しくて、メディア界というのは全員一致ではないと踏み出さないので、一社でも「いや…」って言った瞬間に動かない現状があると思います。

 最近、週刊誌が元気で、新聞から特ダネがでないのは、記者クラブの弊害の一つではないかと思うんですね。これから経営が苦しくなっていく中で、記者クラブ制度や若い記者はサツ回りから始まるという有り様を考えるべきだろうなと。廃止すべきとは言わないが、抜本的に改革しないとマスコミ不信が強くなってしまうと思います。


●「取材源がさっぱりわからない」

ー外国のメディアからすると、日本のメディアは親しい関係を築いて取材する、「アクセス・ジャーナリズム」と呼ばれる手法が多く、場合によっては取材源にコントロールされてしまったり、都合よく使われてします。その辺に目を向けて取り組まないと、例えば「APECで安倍さんがこう言いました」「これは公開の会談だったの?」「オバマさんとの電話会談で安倍さんがこう言いました」「あなた盗聴してたの?」ということになってしまいます。どこから得た情報なのかをはっきりさせないと。結局政府の代弁者になってしまいます。

岸井氏: 記者クラブが本当に閉鎖的なために、私も何度か追放されたことがあります。謹慎処分を受けるんですよね。一人だけ外れた違うことをしてスクープすると追放されるということが起きたりしますね。

 それから情報源をどこまで開示するかですね、そこが曖昧になってきました。情報源がどこかさっぱりわからないことが多い。これは堕落の一つだと思いますね。

田原氏: 政治との付き合い方ですけれども、私は年寄りなので、田中角栄以降の総理には全て会っています。もちろん一対一で会ってます。だけど食事をしたことは一度もありません。どっちが金出すんだと、ややこしくなるから。それから私は政治家とオフレコは一切ありません。相手が喋ったことを全部スタッフに話します。もちろん繰り返しますけど、相手の言うことで間違っていることは間違っていると言います。

 それから重要なことがあった。小沢一郎が検察から睨まれてマスコミはほとんど検察の味方になって、小沢はここが悪いと書きました。そのとき、検察に問題があるんだということを唯一言っているたは郷原信郎さん。僕はサンデープロジェクトで何度も郷原さんを出しました。当時郷原さんを出した番組は全局どこにもありませんでした。なんで出さないかというと、郷原さんを出すと、検察が取材をさせてくれなくなるから。現に僕が郷原さんを出したために、テレビ朝日の司法クラブ記者には随分迷惑をかけたと思います。

 さらに、新聞に小沢一郎の悪口がいっぱい出てくる。全部「関係者によれば」と出てくるんですね、弁護士の関係者が言うはずがないんだから、全部検察関係者ですよね。「なんで検察関係者と書けないのか」と何人もの記者と聞きましたが、みんな「取材に応じてくれなくなるから」と言いました。岸井さんどうですか?そういう話いっぱいあると思うけど。

岸井氏: それだけ田原さんに取材力あったからだとも思うんだけど、私の経験もそうだし、現場の記者を見ていても、どっかでオフレコという関係を築かないと、少なくともどこかで政府が本当に隠している、そういうものは内部告発でないと取れない。毎日新聞は大先輩が逮捕された沖縄密約事件というのもありましたが、内部告発は、よっぽど中に入り込んで本当の声を聞かないと取れない。これは非常に線引きが難しいというように思いますね。

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