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イタリアにファースティスト政権誕生

2018-06-02 | 時評

イタリアで1日、成立の運びとなった五つ星運動と同盟(北部同盟)の連立政権は、イタリア戦後史を大きく変える陣容となった。五つ星と同盟は共に大衆迎合的なポピュリスト政党として近年急速に台頭してきた新興政党である。

従来のイタリアは長く保守政党を軸とした連立政権が続いた後、強力な万年野党・共産党の実質的な解体を受け、中道左派と中道右派の二大政党(勢力)政へ移行していたところ、両者の近接によりイデオロギー対立が解消される一方、中道的な政治の八方美人的限界を露呈していた。

そこへ、急増する移民に対する排斥策と反EU論を引っさげて現れたのが、ポピュリスト政党である。もっとも、五つ星は表面上、直接民主主義や環境主義を打ち出すなど、緑の党に似せた進歩主義を装い、左派政党的な色彩を出していたが、より右派色の強い同盟と連立を組んだことで、その正体が明らかとなった。

こうした反移民・反EU政党は、大衆迎合=ポピュリズムを手段としつつ、自国(民)優先主義=ファースティズムを共通イデオロギーとしている。ファースティズムは表面上、労働市場における自国民優先や国家主権の回復を謳うが、根底には人種/民族差別主義と強い国民国家の構築を願望する国家主義を秘めている。

人種差別と国家主義の結合は、ファシズムの特徴でもある。結局、ファースティズムとはファシズムの現代版=ネオ・ファシズムの土台となり得る政治潮流にほかならないのだ。歴史を振り返れば、戦前のオールド・ファシズム潮流の発信源も、ほぼ百年前のイタリアだった。

もっとも、今般のファースティスト連立政権には、ファシスト党の直系政党とも言える「イタリアの兄弟」は参加しておらず、旧ファシスト党とは別系統の流派である。だからと言って、この政権はファシストとは無関係と油断してはならない。二つの流れは地下でつながっているからである。

現状は毛色になお相違あるファースティスト政党同士の連立という不安定さを残しているせいか、政権トップの首相には無所属で政治経験なしの大学教授を据えるという妙策を採った。この首相は両党の仲介人にすぎず、権力は当面、両党が分有するだろう。

その点では、一般的にかつてのムッソリーニのような独裁者が指導する一元支配体制を取るファシスト体制にはまだ遠い。しかし、「歴史は繰り返す。一度目は悲劇、二度目は喜劇として」とは、マルクスの名言である。

イタリアのオールド・ファシズムは敗戦による体制崩壊と首領ムッソリーニの殺害という悲劇に終わったが、ネオ・ファシズムはどんな喜劇を見せるのであろうか。五つ星運動の共同創立者がコメディアンであることも、すでに喜劇の始まりを予感させる。

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