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朝鮮戦争終結に向けて

2018-06-13 | 時評

12日に行なわれた「歴史的な」米朝/朝米首脳会談については、その準備不足と内容希薄に見える点について批判も根強いが、何はともあれ、1948年の朝鮮民主主義人民共和国(以下、朝鮮と略す)建国以来、初めて両首脳が直接に顔を合わせたことの意義は過小評価できない。

こうしたことが可能となったのは、トランプ大統領の「ハンバーガーを食いながら朝鮮首脳と会談する」という事実上の公約に加え、イデオロギーや国情こそ異なれ、両国首脳の独裁的なトップダウン手法が奇妙に合致したことによるところが大きい。

他方で、会談の曖昧な「成果」に関する懸念にも一理以上ある。最も懸念されるのは、会談が両国間限りでの相互不可侵条約的な「成果」に終わることである。これは、第二次世界大戦前の独ソ不可侵条約のように、毛色の異なる独裁者に率いられた両大国が互いの権益を承認し合うことに終始し、結局のところ合意破棄・開戦を避けられなかった歴史を思い起こさせる。

こたびの首脳会談では、「朝鮮半島非核化」という多義的な解釈の余地を残す大雑把な枠組み合意がなされたにとどまっており、たしかに具体的な内容に乏しい。その点では初めの半歩にすぎず、さらに数回は首脳会談を重ね、その間に実務者協議を通じて、そもそもの緊張要因である朝鮮戦争の完全終結をもたらさなければならない。

冷戦終結から30年を経過してもなお冷戦の氷が固く張っている唯一の場所が朝鮮半島及び日本を含めた周辺地域である。この異常を正すには、半世紀以上も「休戦」という半端な状態が続く朝鮮戦争を終結させる必要がある。トランプ大統領がいささか性急に示唆した在韓米軍の撤退も、朝鮮戦争終結あって始めて現実性を帯びるだろう。

トランプはヒトラーに匹敵するほどの煽動政治家だが、ヒトラーとは異なり、積極的な対外侵略には消極で、得意の標語「アメリカ・ファースト」に象徴されるように、むしろ内向きの愛国主義=自国優先主義=ファースティズムのイデオロギーに基づき、世界各地からの米軍の引き上げを志向していることは、朝鮮戦争終結にとっては追い風となる。

しかし、朝鮮戦争を完全に終結させるためには、二国間協議では足りず、韓国及び朝鮮戦争の交戦当事者である国連も交えた包括的な多国間協議が必要である。ここではファースティズムの手法は妥当せず、インターナショナリズムを活性化させなければならない。

トランプをノーベル平和賞に推薦する政治的動きが見られるが、取り巻きによるお追従ではなく、真に平和賞に値するのは朝鮮戦争終結がトランプ政権下で成った場合のことである。その場合もいいとこ取りの単独受賞ではなく、南北朝鮮首脳(プラス国連)と分かち合う同時受賞が国際平和の道である。

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