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持続可能的計画経済論(連載第16回)

2018-06-12 | 〆持続可能的計画経済論

第4章 計画経済と企業形態

(2)公企業と私企業
 持続可能的計画経済の対象である環境高負荷産業分野以外の分野は、自由経済に委ねられる。もっとも、自由経済といっても、貨幣経済を前提としないため、貨幣交換経済ではなく、経済計画の規律を受けないという意味での「自由」である。
 こうした計画経済の対象外となる自由経済分野の生産活動は、私企業によって担われる。この点で、その純粋形態においては私企業の存在を容認しないソ連式の社会主義体制とは異なることが留意されなければならない。
 私企業であるということは、設立が自由であること、その活動が経済計画に拘束されず、関係法令を順守する限り自由であることを意味する。ただ、私企業といっても、もちろん株式会社ではなく、共産主義社会に特有の私企業である。
 共産主義社会特有とは、第一に株式会社のように利益配当を目的とする営利企業ではなく、非営利企業であることを意味する。第二に、株式会社のように経営と労働が分離され、経営者が労働者を指揮命令して生産活動に従事させるのではなく、生産活動に従事する労働者自身が自主的に経営に当たる労働と経営が一致した自主管理企業である。
 このような企業形態は会社というよりも組合であり、こうした共産主義的私企業の法律的な名称を「生産協同組合」としておく。名称の点ではマルクスが想定していた生産協同組合と重なるが、マルクスの生産協同組合が計画経済の運営主体と位置づけられていたのに対し、ここでの生産協同組合は計画経済の外で活動する自由な私企業である点において相違する。 
 こうして共産主義的生産様式の下での生産活動の基軸は、公企業として計画経済の主体となる生産事業機構―設立は認可制―と、自由経済分野を担う私企業としての生産協同組合―設立は登記制―の二本立てとなる。企業規模で言えば、前者は大企業、後者は中小企業である。
 ただし、私企業でありながら、その規模が大きいために自主管理を文字どおりに実行することが困難であり、社会的所有企業に準じた内部構造を持つ中間的な企業形態や、反対に組合よりも小さな零細企業に特化した協同労働形態も存在し得る。こうした修正型企業形態の法律的な名称と内部構造については後述する。

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