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持続可能的計画経済論(連載第21回)

2018-06-26 | 〆持続可能的計画経済論

第5章 計画経済と企業経営

(2)民主的企業統治
 計画経済における企業経営では、企業統治の民主化が大きく進展する。市場経済下では「民主主義は工場の門前で立ちすくむ」と言われるとおり、株式会社をはじめ、市場経済的な企業経営は代表経営者のトップダウンや少数の重役だけの合議で決定されることになりやすい。
 これは、市場経済的な企業経営にあっては収益獲得が最大目標となるため、同業他社との競争関係からも可及的迅速な意思決定が求められることによる。
 これに対し、前回述べたように公益増進を目標とする計画経済下の企業経営にあっては民主的な討議に基づく意思決定―民主的企業統治―が可能であり、また必要でもある。
 そのあり方は前章で見た種々の企業形態に応じて様々であり得るが、すべてに共通しているのは、従業員機関が基本的な議決機関となることである。その点では株式会社における株主総会制度と類似する面もあるが、株主総会はあくまでも投資者としての経営監督機関にすぎず、株式会社の従業員機関は社外組織としての労働組合が不十分に事実上これを代替し、内在化されていない。
 従業員機関を基盤とする究極の民主的企業統治は、労働者自らが直接に経営に当たる自主管理である。その点で、共産主義的な私企業に当たる自主管理企業としての生産協同組合は、民主的企業統治のモデル企業となる。
 しかしこれは計画経済の対象外にある企業であり、計画経済の対象となる公企業としての生産事業機構にあっては、企業規模からしても文字どおりの自主管理は可能でない。そこで、この場合は労使共同決定制が妥当する。
 その詳細はすでに企業形態について議論した前章で言及してあるが、繰り返せば経営委員会と労働者代表委員会との共同決定制である。特に労働条件や福利厚生に関わる事項は、労働者代表委員会の同意なしに決定することはできない。
 さらに民主的企業統治のもう一つの鍵は、経営責任機関の合議制である。いずれの企業形態にあっても、強大な権限を与えられたトップは存在しない。生産事業機構の経営委員長にせよ、生産協同組合の理事長にせよ、経営責任機関をとりまとめる議長役にすぎず、いわゆるワンマン経営の余地は全くない。こうした合議制を徹底するうえでは、あえて経営責任機関に代表職を置かない制度も一考に値する。

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